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オタメシカノジョseasonⅡ『和ぐ空の向こうに』第4話

稲津:...井上さん...まずいです。次の講義まで後5分...この調子だと間に合わないかも...


和:ごめんって!!今は走るしかない!!


◯◯:...それにしても和が居眠りするなんて珍しいね。


美空:ふふっ...もうどうせ間に合わんし4人でサボっちゃう?


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第4話

"サイネン"
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稲津くんの目測通り、あと一歩のところで間に合わなかった私たちは潔く今日最後の講義をサボり、駅前のカフェに行くことに。


和:...本当にごめん。私のせいでこんな事に...


講義の合間の自由時間に私が居眠りをしてしまったせいで皆に迷惑をかけてしまった。


稲津:...良いじゃないですか。一度やってみたかったんですよ、こういうの。ワクワクしますね!


美空:...ほら、"愛しの彼"もそう言っとることやし、気にせずダブルデートって事で!


和:ちょ...ちょっと...!!いいい愛しの...とか...べっ...別にそんなんじゃ...ないから...


美空:またまたそんな事言ってー!最初あんなに怖い顔して『ピンと来ないし...』とか言いよった癖に急に最近仲良くなって...私の目は誤魔化せんよ?顔真っ赤やけんね?


和:ほ...ホントにそんなんじゃ...ないから...


彼がいるのにズケズケと言われ、しかし不思議と不快じゃない。


確かにあのペアで行われた講義から、稲津くんとの距離が一気に縮まった。


夜な夜な彼の事で頭がいっぱいなせいで最近寝不足なのはもう誤魔化せるレベルじゃない。


心のどこかでこれが本当にダブルデートなら...と思ってる自分すらいる。


浮かれているのだ。この状況に。



稲津:...一ノ瀬さん、あまり井上さんをからかわないであげてください。...僕らはあくまで友人ですから。


少し困ったような表情で私を庇う彼の言葉に少しだけ心が痛む。


そう、彼の言葉通り私たちは"ただの友達"なんだから。


美空:むむむ...咄嗟に庇うのも怪しい...さては本当に...


◯◯:...美空。本人たちがこう言ってるんだしその辺にしておいてあげなよ。こうして仲良くなれたんだから僕はそれだけでも嬉しいよ。


稲津:...ええ、本当に。山下さんも一ノ瀬さんも本当に良い方で嬉しいです。


美空:...もう!前も言ったやんね?"◯◯と美空"でいいって。いつまでも敬語やし...そんな他人行儀にせんでもいいんよ?


頬を膨らます美空にまた困ったように彼は笑う。



稲津:...ごめんなさい。これは幼い頃からの癖と言いますか...そう教えられてきたもので。


和:...稲津くんが謝ることじゃないし、無理に私たちに合わせる必要もないの。わかったらアンタたちはいつも通りイチャイチャしてなさい。


美空:もう...素直じゃないんやから...◯◯!あっちの初心者カップルはほっといてメニュー見よ?...あっこれ美味しそう♡半分こせん?


"初心者"とはまた辛辣な...


◯◯:へー...『カップルの為のパンケーキ』か...いいね。


美空:でしょ?ほら見てここ!『仲良しカップルにオススメ』やって!ウチらにピッタリやんね♡


言ったら言ったで本当にイチャイチャするし...それに何そのバカみたいな名前のパンケーキ...注文してる人の顔見てみたいわ...あっ、目の前にいるのか。

稲津:ふふふ...お2人は本当に仲良しですね...


和:...バカップルはほっとこ...稲津くんは何にする?


隣に座る彼の方へメニューを見せる。少し身体を傾けてメニューを覗かなければいけないので、自然と距離が近くなってしまう。


心臓さん。今だけはお願い。静かにしてて。


稲津:...色々あって迷ってしまいますね...井上さんはどうします?


和:...ここのパンケーキめちゃくちゃ美味しいんだけど...ちょっと量多くていつも残しちゃうんだよね...飲み物だけにしようかな...


甘いものは好きだけど、どうしても沢山食べられない。


まぁ目の前のバカップルが私の分まで存分に食べてくれることだろう。


そんな私の顔をしばらく眺め、意を決したように彼が指差したのは




美空たちが頼もうとしている"バカみたいな名前のパンケーキ"だった。



稲津:...井上さん。僕はこれが食べたいです。


和:............え!?




冗談抜きで息が止まった。言葉が出てこない。


だってそれは...カップル専用の...


しどろもどろな私に彼は優しく微笑む。



稲津:...食べたいんですよね?パンケーキ。これなら2人で分けて食べられそうですし、男女のペアであればカップルでなくとも注文出来るようですよ?


........今のこの気持ちを何と表現すべきだろう。



少し期待した自分が恥ずかしい。



彼は私に気を遣ってくれたんだ。他意などあるはずもない。


ダメだ。どうしても意識しちゃう...


和:えっ...えっと...それは流石に....


美空:...和?素直が1番やけんね?


和:...いや...これはその...まぁ...そうだよね。ありがとう稲津くん。そ...その...私とで申し訳無いけど...は...ははは半分こしてください...


稲津:...もちろんです。ご心配なさらずとも、甘い物は得意中の得意ですから、井上さんは食べられる量だけで大丈夫ですからね?


満面の笑みをくれているであろう稲津くんの顔を見ることが出来ない。何なら顔から火が出そうなくらい熱い。


美空:...全く...どっちが"バカップル"よ...


そんなこんなで届いた2皿の大きなパンケーキは、あろうことかハートの形をしており、真ん中には『Love』とチョコレートで描かれていた。


美空:すごい...めちゃくちゃ可愛い...◯◯、写真撮ろ?手出して?


パンケーキをバックにお互いのピースサインを映した写真を撮る目の前のバカップル...どこまでも幸せそうで何よりだ。


稲津:...これはすごい...僕も写真...いいですか?


和:...え?あ...うん。どうぞ。


稲津:...あの...井上さん。


さっきまでの落ち着いた表情から一変。少し緊張した面持ちで彼は言った。


稲津:...僕たちも...やってみませんか?お2人のように..."抜け出した記念"という事で。



和:.........!!!



またしても息が止まる。


ちょっと心臓さん。そんなに早く動いたら爆発しちゃう...お願い...静かにして。


和:そっ...そうだね...


もうこの状況に抗う意味も感じなくなってしまった私は、彼に習いパンケーキの前に手を出した。


僅かに触れ合う彼の人差し指と私の中指。


冗談抜きで手が震えているのが分かる。



__なにこれ。こんなの少女漫画とかでしか見ないやつじゃん...




こんなに恥ずかしくて、くすぐったくて






__じんわりあったかいんだ。



私の胸の奥に降り注いだ一筋の稲妻。



それは消えかけていた私の心を再び激しく燃え上がらせる__


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美空:...ねぇ◯◯...和が真っ赤になっとる。可愛い。


◯◯:...ふふふ...あの2人、お似合いじゃない。


美空:...もうウチらの声も聞こえとらんみたいやし...でも和幸せそう。良かった。


◯◯:...美空?あんまり急かさないようにね?


美空:...もう!そのくらい分かっとるけん!それにしてもあの顔...こっちが恥ずかしくなるわぁ...



____________be continued.

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