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From my past 第8話~新入生歓迎会~

ただっ広い体育館にぎっちり詰まった新入生たち。



彼らは始まったばかりの新生活にさぞ心躍らせている事だろう。


それは僕も...例外ではない。


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第8話

新入生歓迎会
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◯◯:新入生の皆さーん!こちらにクラス毎に別れて座ってくださーい!


声を張り上げ、新入生達を誘導する。


これがなかなか大変な仕事だ。


拡声器を使ってはいるが、ザワつく体育館の中に僕の声は吸い込まれ、新入生達を上手く整列させられない。


『当日春月が1番のキーマンと言っても過言じゃないよ?任せたからね?』


悪戯っぽい笑みの由衣さんが頭に浮かぶ。


◯◯(...そういう事だったのか...)


しかしこれもれっきとした生徒会の仕事。手を抜くなど以ての外である。



しかしそんな僕の健気な思いと裏腹に、仲良くなったばかりの友人たちと楽しく会話が弾み、全く整列する気配のない新入生たち。


辟易としつつも、もう一度大声を出す為に大きく息を吸い込んだ時だった。


美空:新入生!!!!もう歓迎会は始まっとるよー!!!ほら!!!ボサっとしとらんと早く並ぶ!!急いで!!!


背後から大きな声。振り向くと、拡声器もなしで声を張り上げる美空の姿が目に入る。


その凛とした姿に後押しされるように、少しずつ整列していく新入生たち。


◯◯:...すごいな。


美空:こういうのは勢いが大事なんよ?分かったかな?生徒会の新人さん?


唖然とする僕の隣で小さく笑い、悪戯っぽくウインクする彼女。


◯◯:ありがとう、助かったよ。


美空:えへ、頼りになるのは"あの3人"だけやないけんね?


保乃:...何や抜け駆けの匂いがしたのは置いといて、無事に始められそうやな。美空ちゃん、ありがとう。助かったわ。


美空:いいんよ。催実もちょっとは働かんとね?


いつの間にか現れた保乃と笑い合う美空。そこにさっきの小競り合いの時の険悪さは全く感じられず、少しホッとする。


何だかんだ幼馴染で仲良しな事は本当らしい。


保乃:...さて、始まるで。2人とも持ち場についてや。歓迎会の始まりやで。


保乃の合図と共に、体育館のスピーカーからノイズが響き渡る。ステージの演説台に置かれたマイクの前に現れたのは、会長の由衣さんだ。


落ち着いたグレーのドレスに身を包んだその姿に思わず見とれてしまう。


一転して厳かな雰囲気に包まれる空間に、ザワついていた新入生たちも静かになる。


由衣:...新入生の皆さん。櫻花高校生徒会会長の小林由依です。まずはようこそ、我が櫻花高校へ。在校生、職員一同、心より歓迎致します。


落ち着いたトーンの声は威厳に満ち溢れている。


由衣:...入学したばかりで不安なこと、楽しみなこと、沢山あると思います。是非その両方を楽しんでください。私たちはそんな貴方たちを全力でサポートします。改めてようこそ!皆さんの学校生活がどうか素晴らしいものになりますように。


一礼して去って行く由衣さんに自然と沸き起こる拍手。


ひかる:...由衣さんかっこいい...


全く同意。これだけの人数を前にして全く動じない演説。流石の貫禄だった。


すると、突如在校生側から上がる黄色い悲鳴。



土生さんが壇上に現れたのだ。


真っ白なスーツを着こなしたその姿はまさに美男子。


__本当に女性なのかを疑うレベルだ。


『櫻高の生徒なら誰しも一度は土生さんに恋をする』


3人からそう聞いてはいたが、実際目の当たりにすると異様な光景だ。


アイドルのライブさながらの盛り上がりを見せる在校生。


中には手製の横断幕やグッズを携えた生徒までいる。


そんな半狂乱の生徒たちに笑顔で手を振ると、土生さんはマイクを握った。


土生:...生徒会副会長の土生瑞穂と申します。改めて新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。この後のスケジュールですが、各部活からの勧誘パフォーマンスがあります。簡単な立食をご用意致しましたので、是非ご友人と歓談しながらご覧下さい。


いつの間にか新入生側からも上がり始める黄色い歓声。たったこれだけの言葉で既に何人かの女子生徒を虜にしてしまったというのか...恐るべし。


美波:土生ちゃんは相変わらず人気やなぁ...


夏鈴:...無理もないです。かっこいいですもん。


頷く夏鈴の頬は心做しか紅く染まっている気がした。


土生:...最後にひとつ。我が櫻花高校生徒会では、私たちと共に活動してくれる生徒会役員を募集しております。興味のある方は、生徒会室までお気軽に。もちろん私に直接でも構いません。現生徒会役員一同、首を長くしてお待ちしております。それでは存分にお楽しみ下さい...あっ、そうそう...在校生諸君にもひとつだけ。入ってきたばかりの新入生男子を困らせるような事は極力しないように...ね?



在校生の方を向いて軽くウインクを投げ、災害かと思う程の悲鳴と共に、土生さんは去っていった。



美空:...あぁ...土生さぁん...素敵♡♡あーあ...こんな事なら美空も生徒会入ればよかったぁ...◯◯もおるし...今からでも大丈夫かなぁ...


ひかる:...余計話がややこしくなりそうやけん美空は今ままでいてくれん?それと土生さんか◯◯かどっちかにしてくれん?


保乃:...ホンマやで。どっちにしろ今まで通り仕事の邪魔しに来るんやろ?お目当てが土生さんから◯◯に変わるだけやん。


美空:もう!2人して意地悪ばっか言いよって...◯◯ぅ...2人がイジめるぅ...♡


保乃:だぁかぁらぁ!!!どさくさに紛れてベタベタするなぁ!


由衣:...ひかる、保乃。気持ちはわからなくもないけど今は新入生の前だよ。役員として恥ずかしいところを見せないように。美空ちゃんも、あんまりおいたが過ぎると"アイツ"に言いつけちゃうよ?


ひかる:ゆっ...由衣さん...すみません...


保乃:気をつけます...


美空:由衣さぁん...それだけは勘弁してくださいぃ...


いつの間にか壇上から戻ってきた由衣さんに嗜められ、大人しくなる3人。


美波:あははっ!相変わらず2年生ズはおもろいわぁ...


何だかんだ無事始まった歓迎会。各部活の紹介パフォーマンスが行われる中、新入生たちは用意された様々な料理を食べ、楽しそうに過ごしている。


土生:...さて、私の方もひと段落した事だし後は催実に任せて生徒会室に戻ろうか。お土産もたくさん頂いたし、お茶にしよう。春月、頼んだよ?


両手いっぱいの紙袋を持った土生さんが戻ってきた。


◯◯:...あ、はい。その紙袋は?


土生:...ファンからのプレゼント。毎回本当にありがたいことだよ。


生徒会室のやたら高級そうなお茶菓子の出処をここで知ることになるとは...


そんな訳で賑やかな体育館を後にし、僕らは生徒会室へと戻ってきた。



僕は早速給湯室へと向かい、人数分のカップをお湯で温める。


ひかる:...お疲れ様。初仕事、どうやった?


いつの間にか後ろに立っていたひかるが問いかける。


◯◯:いやぁ...不甲斐ないの一言だったよ...美空が助けてくれなかったらもっと時間掛かってたかも。


ひかる:...ふーん...


ジットリとした視線。


◯◯:いっ...いや別にそんなんじゃ...


ひかる:...なぁに?私まだ何も言っとらんよ?何か後ろめたい事でもある?


◯◯:ないないない!何も無いから!


いつの間にか隣に来ていたひかるは僕を見上げ、小さく息を吐くと僕に抱き着いてきた。


◯◯:っ!?ひっ...ひかる!?


ひかる:...美空と保乃ばっかベタベタしてズルい。私だって...私だって我慢しとるけんね。忘れんでよ?


僕から離れ、顔を真っ赤にしたまま給湯室を出るひかる。


思い出したように動き出す心臓。


__懐かしい香りがしたような気がした。

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??:...ふーん..."あの子"が例の...


??:...はい。理事長のお知り合いのご子息だそうで。


??:...あぁそうなの。それで症状は..."断片的な記憶喪失"...か。


??:...だと聞いております。


??:...なるほどね。まぁ今はしばらく様子を見ることにしましょう。何かあったらすぐ連絡してくださいね?


??:...ええ、お願い致します。


__________be continued.

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