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"From my past" 第3話~朧気な記憶~

『私を見つけてください』
                       "あの頃の私"より

新生活が始まった僕の元に届いた手紙。

__僕の初恋が...再び始まろうとしている。

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第3話
朧気な記憶
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保乃:...にしても...ロマンチックやわぁ...

ひかる:...さっきからもう7回目。何回言うんよ。

保乃:だってひぃちゃん!運命の人やで!?幼い頃から仲良しの2人が再会して恋の炎が再び...

夏鈴:...保乃、◯◯が置いてけぼりやで。

ようやく食堂に辿り着き、テーブルで興奮収まらない保乃と、若干うんざり気味の2人。そして...

ひかる:...こっちはこっちでさっきから上の空だし...ねーぇ?それスプーンじゃなくてフォーク!

ひかるがカレーに虚しく突き刺さるフォークを抜き取り、代わりにスプーンを渡してくれる。

◯◯:...あっ!ホントだ!ボーっとしてた...ありがとう。

僕は僕で手紙のことが頭から離れない。

本当に"あの子"がこの学校にいるのか?

向こうは一目でわかったと言っていたのに何故僕は"あの子"の名前と顔すら思い出せない?

幼少期の事とは言え、もう少し覚えていても良さそうなものだけど...

あの手紙がイタズラでないことはわかっているのだが...何か...何か違和感が...

カレーを口に運びながら何度も考える。

夏鈴:...でもさ...すごいよね"その子"も。小さい時からずーっと◯◯の事忘れんと好きやったってことやろ?

保乃:そこや!尊いってこういう事なんやな...

ひかる:...保乃...顔にご飯粒付いとるよ...

保乃:...もう!ひぃちゃんは相変わらずクールなんやから!この奇跡を何とも思わへんの?

熱の収まらない保乃の言葉にひかるは少し考え、箸を置いた。

ひかる:...素敵やな、とは思うよ?でも流石に保乃は騒ぎすぎやけんね。

保乃:むむむぅー!...まぁでもウチらだけ盛り上がっててもしゃあないしな。◯◯が思い出さんことには...

◯◯:...そうなんだよね...

夏鈴:とりあえずしばらく普通に生活してみたら?記憶って思い出そうとして思い出せるものじゃないやろうし。

◯◯:...確かにその通りかもしれない。

夏鈴の言う通りだ。まずはこの生活に慣れる事から始めなければ。

頭に浮かんだ疑問を一旦保留にし、僕は残りのカレーを片付け始めた__

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食事を終えた僕らは、生徒会室へと向かった。

由依:...それにしても初日から大変だったね、春月。

僕の為に用意してくれたデスクには『春月』と書かれた札が置いてある。席に着くなり由依さんが苦笑いしながら話しかけてきた。

◯◯:えっ?

土生:...見ていたんだよ、ここの窓から。君が目の色を変えた女史達に追い回されているのをね。
あれは恐ろしかった...まるでゾンビ映画のようだったよ...ふふっ...

土生さんの言葉に窓の外を見る。確かにここからは教室棟がよく見える。

◯◯:...ええ...ちょっとだけ死ぬかと思いました...

美波:...でも男の子なんやし、女の子に囲まれてちょっと嬉しいーとかならへんのやね。

美波さんは目を細め、コロコロと笑う。

◯◯:...うーん...さっきみたいのは嬉しさよりも恐怖が...

夏鈴:...春月くん人混み苦手みたいで...

保乃:...知ってたら1人にせぇへんかったのに...ごめんな?

美波:あっ、そうなんや。わかるよー、ウチも苦手やから。

由依:...しかし、これは予想以上だね。少し困ったことになりそう。

腕を組み考え込む由依さん。

美波:...まぁでも、今まで女子だけやったしなぁ...男子に飢えてる子がいっぱいおっても不思議やないな。これは入学したての1年生も大変やで。

土生:...念の為さっき風紀委員に連絡しておいたよ。飢えたゾンビたちに可愛い1年生くんたちが襲われないように、ね。

由依:ありがとう、助かる。では全員揃ったことだし気を取り直して、会議を始めようか。

土生:では...今年度第1回目の定例会議を行います。昨年度の決算については、手元の資料を。

僕の為に用意してくれたデスクの上には、会議資料が積まれている。

手に取って熟読する。昨年度の学校行事にかかった費用が実に分かりやすく纏められた資料だと思った。

◯◯:(...これが生徒の作った資料なのか...凄いな)

由依:...うん。今回のもよく出来てる。ひかる、夏鈴、ありがとね。

夏鈴:はっ、はいっ!

ひかる:このくらい...大したことないです。

褒められて照れくさそうな2人が少し微笑ましくなった。由依さんはそんな2人に優しく微笑み、今度は僕の方を見る。

由依:さて...春月。改めて櫻花高校生徒会へようこそ。これからよろしくね。
私達生徒会の主な業務は学校行事の企画運営。
今年から我が校は共学になったから、行事も増えるし、内容も大きく変わる。正直この人数じゃ厳しいけど、みんなで頑張って行こうと思う。春月も、力を貸してね?

◯◯:...もちろんです。精一杯頑張ります!

土生:...では早速直近の行事『新入生歓迎会』について。1ヶ月後の5月6日。校内催事場にて行われます。運営は我々生徒会に一任されているのでそのつもりで。

由依:...美波。保乃と一緒に催事場の設営の準備をしてくれる?ひかると夏鈴は歓迎会に必要な経費を計算して提出。私と土生ちゃんで最終確認。分かったかな?

頷くメンバー達。

◯◯:あの...僕は...?

由依:春月は美波チーム、ひかるチームの補佐をお願い。男子の力の見せ所だよ?

由依さんがウインクする。少しドキッとした。

◯◯:ま...任せてください!

美波:...じゃあ早速ウチらの方手伝って貰おうかな。ひかるたちの方はまだ大丈夫やんな?

ひかる:...はい、必要経費の洗い出しまでは私たちだけで大丈夫です。必要なら連絡します。

美波:おっけー!じゃあとりあえず休憩にしよ!休憩!

土生:...そうだね。では休憩。

夏鈴が僕の袖を引っ張った。

夏鈴(...◯◯...お茶の用意!)

◯◯:(...あっ!そうか!ありがと!)

忘れていた...お茶汲みも僕の仕事なんだった。

給湯室に1人向かい道具を準備していると、背後に人の気配が。

◯◯:...ひかる?どうしたの?

ひかるは無言で給湯室に入ってきて、伏し目がちにこちらを見る。

ひかる:...見張り。ちゃんとやってるか。

◯◯:あっ、なるほどね...お願いします...

大きな目でこちらを見つめるひかると目を合わせる。

ひかる:...いやっ...まぁ...えっと...その...ちょっと...

突然ゴニョニョと口篭るせいでよく聞こえない。

◯◯:...えっ?なんて?

ひかる:...その...さっき倒れたから...大丈夫かな...って!べっ、別に変な意味じゃ...その...由依さんによろしくって...言われてて...

◯◯:ふふっ...あははっ...

ひかる:...何笑っとるん。

◯◯:ひかる...素直じゃないってよく言われない?本当はすごく優しいのに、って。

僕の言葉にひかるは顔を真っ赤にする。

ひかる:なっ...!そんな事...いや...お見通しってワケやね。...素直じゃないってよく言われとるよ。冷めてるとか、何にでもツンケンするなとか。

否定しようとしたが観念し、ひかるが自嘲気味に笑う。

ひかる:...いつからこうなったんか自分でもわからんけん、そのせいで周りに迷惑かけとるんは分かっとる...でも保乃みたいに明るく振る舞えんし...こんな私だから誰も仲良くしてくれんのよね。
...保乃と夏鈴だけ。

◯◯:...難しいよね、素直になるのって。僕も昔...

不意に記憶が蘇る__

『あのね、うそはよくないんだって。しょうじきにじぶんのきもちをいいなさいって、ママがいってた』

これは...いつの記憶だ?"あの子"との記憶?

ひかる:...◯◯?

◯◯:...ん、あぁ、ごめんごめん。僕が言いたいのはね、"自分の気持ちに正直な事が大切だよ"ってこと。昔誰かに教えてもらったんだ。

僕の言葉にひかるは驚いたように目を見開く。

ひかる:...!!!...そっか...そうよね。そんなに難しい事じゃないのかもしれんね...
何か...久しぶりにスッキリしたかも...こんな事誰かに話したのも初めてやし。その...ありがとう。

ひかるの表情にいつもの棘はなくなっていた。

◯◯:ふふっ...その調子だよ。よし、お茶用意出来たから運ぶよ。あっ、それとね...

給湯室を出る前に振り返り、ひかるの目をもう一度見る。

◯◯:..."保乃と夏鈴だけ"じゃないからね?

ひかる:...!!...うん...分かっとるよ。

去り際照れくさそうに俯くひかるが少し笑ったように見えたのは気のせいではないはずだ。

◯◯:お待たせしましたー!

美波:わぁい♪ありがとう♪

土生:今日はアールグレイ...良い香りだね。

由依:いいね春月、2日目にして早くも板に付いてきたじゃん。

美波:◯◯は料理とか得意?もうウチの寮一緒に住まん?

◯◯:料理は得意ですけど同居は遠慮しておきます...

美波:なんや釣れないなぁー、がっかり。

土生:美波、いきなりそんなにグイグイいってはダメだよ、ふふふ。

保乃:そうです!いくらみぃさんでもそれはダメです!

激しく抗議する保乃の後ろで何度も頷く夏鈴。

美波:あら、これは2年生ズはライバルってことでええの?

保乃:これに関しては真っ向勝負させてもらいます!

美波:あはっ♪ええやん、じゃあ勝負やね♪

◯◯:(全く...どこまで本気なんだか...)

急に始まった謎のバトルを眺めていると、いつの間にかひかるがまた背後まで迫ってきていることに気付く。

ひかる:...絶対に...渡さんけんね。

◯◯:...えっ?

またしても聴き逃してしまった。

ひかる:ううん!何でもない!ふふ...

◯◯:...!!

ひかるは優しく微笑み、自分のデスクに腰かけた。

保乃:なんやひぃちゃん、えらいご機嫌やね?

ひかる:...ま、まぁね...。

夏鈴:...ふふっ...

◯◯:(...何だ今の笑顔...すごいドキドキして...)

僕の心臓の鼓動がどんどん早くなり、それと同時にまた何かを...思い出せそうな気がした__

_____________be continued.

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