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"オタメシカノジョ"第3話

___灯台の下はいつだって暗い。自らが放つ眩しい程の光が消えた時...ようやく周りが見えるようになる。




______しかし。



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第3話

"ホンシン"
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美空:あっ!これ◯◯に似合いそう!あぁっ!あれもカワイイー♡ねぇ?全部試着してみよ?


◯◯:ちょ...ちょっと待って...1個ずつ...


いつもより数段テンションの高い美空となんやかんや楽しく服選びをした僕は、彼女と共に帰路に着いていた。


美空:...えへへ...ちょっと買いすぎちゃったね...ごめん...


両手いっぱいに紙袋を持った僕を見て少し反省した様子の美空。


◯◯:いやいや、いいんだよ。服なんか自分で買いに行かないしさ...選んでもらえて助かったよ。


以前までは姉さんと渋々買いに行っていた服も、"カノジョ"とならこんなに楽しく買えるものなのか。


美空:...私も彼氏の服選ぶの夢やったから。


急に美空の声のトーンが下がった気がして驚き、彼女の方を見ると、寂しそうな悲しそうな...いつもの彼女からは想像も出来ない表情をしていた。


◯◯:...美空?どうかした?


美空:...えっ?あっ...ううん...何でもないけん......あれ?◯◯のお家の前...誰かいる...?


すぐにいつもの笑顔に戻った彼女が指差した僕の家の前には、確かに誰かが蹲っている。あれは...


◯◯:...和?


美空:...あの子が..."ナギちゃん"...


まだ少し遠いが、蹲っているのは確かに和だ。


一瞬駆け寄ろうかと思ったが、僕の腕にしがみつく美空の力が強くなったような気がして躊躇う。


◯◯:...どうしたんだろう。あんな所で。


美空:...◯◯...今...多分チャンス...やと思う...


◯◯:...え?


美空は僕の顔を見ずに言った。


美空:..."ナギちゃん"、多分落ち込んどる。こういう時助けて寄り添ってあげれば...きっと...


◯◯:美空...


美空:...ちゃんと話聞いてあげるんよ?私は帰るけん!それじゃ、また。ファイト!


僕にでもわかる作り笑いを顔に貼り付け、美空は走り去ってしまった。


◯◯:...どうして...あんな顔...


先程の表情といい、少し気になったが、遠くに見える和がフラフラと立ち上がったのを見てそれどころではなくなった僕は彼女の方へ走った。


◯◯:...和!!!!


案の定フラついて倒れそうになった和を間一髪で抱きとめると、弱々しい呟きが聴こえてくる。


和:...◯◯...私...

そのままゆっくり目を閉じる和を抱きかかえ、何とか玄関の扉を開ける。


◯◯:姉さん!ちょっと来て!和が...和が!


美月:おかえり...って何!?どうしたの!?えっ?和!?


◯◯:...わかんない!とにかく助けて!


美月:とっ...とりあえずベッドに!


2人で和を僕の部屋のベッドへ寝かせる。


美月:...すごい熱。とりあえず冷やさないと...用意してくるからアンタ見てて。


慌ただしく部屋を出ていく姉さんの背中を見送る。


和:...はっ...はっ...◯◯...


◯◯:大丈夫。ここにいるよ。


うわ言で僕の名を呼ぶ和の手を強く握った。


一体何があったというのか。


こんなに苦しそうな和の姿を僕は今まで見たことがない。


『...こういう時助けて寄り添ってあげれば...きっと...』


美空の言葉が何度も頭を巡る。理屈は理解出来る。自分の危機的状況を救ってくれた人と恋に落ちるシチュエーションなど王道中の王道だ。


でも...


◯◯:(...それじゃ弱みに付け込むみたいじゃないか...)


そんなやり方で彼女の好意を得て果たして嬉しいだろうか。


僕の望みはそんな低俗な...






___ちがう。


__思っているのはそんな事じゃない。


◯◯:(...僕は...一体...何を考えて...)


ふと我に返ると姉さんが濡れタオルやら飲み物やらを持って入ってきた。


美月:...何ボーッとしてんの。手伝って。


◯◯:あ...う、うん...


その後姉さんの処置もあり、少し落ち着いた和は身体を起こしてベッドに腰かける。


和:...ごめんね。迷惑かけちゃって。


◯◯:...いやいや、いいんだよそんなこと。それより...一体何があったの?


和:.........実は...


問いかけに和は少し躊躇うような素振りを見せたが、1度深く深呼吸して、話し始めた__


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◯◯:...えっ!?神村先輩が...そんなこと?


信じられないと言った顔の彼。当然だ。私だってまだ信じられない。信じたくない。


でも見てしまった。聞いてしまった。

"くそ真面目だから絶対気付かないって。それに向こうが一方的に好き好き言ってきてるだけだしな。"


思い出しただけで吐き気のする言葉。所詮私は"ニセモノ"でしかなかったということだ。


◯◯:...和。


彼はそんな私の前にしゃがみこみ、私の手を取って真っ直ぐ目を見つめてきた。


◯◯:...今の和の気持ちを全部は分かって上げられない。でも...僕にできることなら何でもやるよ。僕が...僕が和のこと1番分かってる...と思うから。


決して気の利いた言葉ではなかったと思う。でも私には充分だった。


小さい頃は私がいつも守ってあげていた。


私がついてなきゃ何も出来ないと思ってた。



___変わったんだね。君がこんなにも頼もしく見えるなんて。


頬を涙が伝う。自分の中に今までずっとあった気持ちに気付いたのと同時に、それは"叶わぬ願い"だと知ってしまった。






___ホントは...ずっと...


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薄明かりの中目が覚める。朝だ。どうやら寝てしまっていたみたい。


ベッドから起き上がると、ベッドに突っ伏して私の手を握り、寝てしまっている彼の姿が。


和:...ずっと見ててくれたんだね...ありがとう。


幼い頃から変わらない彼の寝顔。頬にそっと触れ、確信する。しかし___


和:...あんたには幸せになって欲しい。


彼を起こさないようにベッドから降り、時計を見る。家に戻って支度すればまだ大学には間に合う時間だ。


和:...それじゃあね.........ん?


部屋のドアを開けると、少し開いていた窓から風が吹き、机の上から1枚の紙切れが床に落ちる。咄嗟にそれを拾い上げた私の目に信じられないものが飛び込んできた。


和:...!?なに...これ...オタ...メシ...カノジョ...?


_____________be continued.

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