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From my past 第7話~平穏の影に~

目を覚ますと、そこは自室のベッドの上だった。


どんな夢を見ていたのか思い出せないが、背中がじっとりと湿っているのを感じる。


身体を起こし、スマホを見ると午前7時。


確かひかるの部屋にいたはずだが...疑問を胸にベッドから下りると、机の上に見慣れない紙...いや便箋か。


そこには見慣れた字で


『流石に同じ部屋で寝るのは寮母さんにバレたらヤバいかもしれんけん、
2人に手伝って貰って部屋に運びました。
体調悪かったらすぐ連絡して。
もし元気やったらみんなで朝食堂行こ。

ひかる』

◯◯:...また迷惑かけちゃったな...


しかし不思議と気分は悪くなかった。


_昨日は激動の1日だったように思う。


僕と保乃たち4人の関係が明らかになり、"あの子"へのヒントも少し得ることが出来た。



◯◯:...支度しなきゃ。


今日も休日だが、新入生歓迎会の準備がある。


__そして朝食のお誘いも。


僕はひかるに昨日のお礼をメッセージで送り、汗を流す為浴室へと入った。


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第7話

~平穏の影に~
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保乃:いやぁしかし急に倒れたって聞いて行ってみたらホンマに倒れててびっくりしたわー!


ひかる:...そんなタチ悪いドッキリせんよ。それより食べカスいっぱいついとるけん。


保乃:...んっ...いつもごめんなひぃちゃん。


食堂で興奮気味の保乃と、その口を拭うひかる。そして...


夏鈴:...前も急に気ぃ失ったし...ちょっと心配...


俯く夏鈴の表情は晴れやかとは言い難い。


◯◯:...ごめんね、いつも心配かけて。


保乃:ええんよ!◯◯は細かいこと気にしすぎやで!


夏鈴:...せやで。ホンマに昔からよう眩暈して倒れとったし、無理はあかんよ?


ひかる:...


◯◯:ありがとう。3人がいてくれれば安心かな...なんて。


保乃:言うようになったやん!それでええんやで!


??:ちょっと!3人やなくて4人!


◯◯:...わわっ!?って一ノ瀬...さん?


突然後ろから抱き着かれる。振り向くまでもなく至近距離に一ノ瀬さんの顔。


ひかる:美空...近いって...


美空:だって!!寮の部屋近いからって3人ばっかズルくない?私だって◯◯とベタベタイチャイチャしたいけん!


保乃:いや...別にウチらベタベタイチャイチャしてへんけどな...


夏鈴:...まぁ...◯◯がええならウチは文句なし。不満は大あり。


ひかる:...珍しく夏鈴が怒っとる...でも私も夏鈴に同じ。


◯◯:ちょ...ちょっとみんな...


一触即発な雰囲気を他所に、すぐ横にある一ノ瀬さんのいい香りに昨日のことを思い出してドキドキしてしまう。


美空:えへへ...お咎め無しみたいやね。まぁウチらはもうただのお友達やないもんねー?◯◯?


保乃:なっ...なんやそれ...説明してもらおか◯◯くん...


◯◯:いっ!?いや...何にもないよ...一ノ瀬さんもみんなと同じ...友達だから...


言えるはずがない。キスされた、なんて。


美空:ねーえ?なんで美空だけ下の名前で呼び捨てしてくれんと?仲間はずれ寂しいけん...


耳元で囁かれ堪らず顔を背けてしまう。


◯◯:わわわっ!?わかったよ...み...美空...


保乃:...くぁー!!!!もー辛抱ならん!!美空ちゃん!!ズルいで!保乃も我慢出来ひん!!


おもむろに立ち上がり、一ノ瀬さんの反対側に回り込んだ保乃が腕に手を回してくる。


夏鈴:ちょ...保乃まで...


保乃:もうええわ。◯◯も薄々気付いとるやろ?"ウチら"の気持ち。ウチは攻める!!


ひかる:...全く...何やっとんのよ...


◯◯:あ...あの...お2人とも?


保乃:...これからは我慢せんから覚悟しぃや?


美空:えへへ...モテモテみたいやね...◯◯?


突然の事でフリーズする僕と、呆れた様子の夏鈴とひかる。そしてまだ何やら小競り合いを続ける保乃と美空。


何だか思ったより複雑な関係になりつつあるみたいだ。


__でも正直、嬉しかった。誰かに必要とされる事。


ぼんやりと頭にこびりついてたものが、消えていった気がした__


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今思うと、その時の私はどうかしていた。


でも我慢できなかった。焦っていた。


気を失ってしまった彼を3人で部屋に運び、ベッドに寝かせ解散した後、私は何故か再び彼の部屋を訪れていた。


静かに寝息を立てる彼の頬に触れると、"あの頃"の記憶が鮮明に蘇る。


___彼は...さぞ混乱している事だろう。忘れていた事が一気に押し寄せてきているんだ、無理もない。



大きくなる鼓動に任せ、私は眠る彼の頬にそっと唇で触れた。


ほんの刹那。


身体が焼けるように熱くなり、脳が痺れる。


(...ダメだ。好き...大好き...)


とめどなく襲い来る感情を我慢出来ず、とうとう私は彼に覆いかぶさり、その口に直接口をつけた。


恐ろしいまでの充足感と多幸感。


しかし流石に違和感を感じたのか、むにゃむにゃと何やら呟き寝返りを打つ彼。我に返った私は慌てて部屋を出た__


『...はぁっ...はっ...はぁっ...』


荒い息のまま、彼の部屋の前にへたり込む。


『キス...しちゃった...』


春風が不意に強く吹き、私から熱を奪っていく。しかし鼓動は収まりそうにない。


いけない。抜け駆けはなしの約束だ。


全ては彼に任せればいい。私は待っていればいい。


今は彼と過ごせることがこの上なく幸せなんだから。








__でも。


私は...いや、私たちはまだ...彼に隠していることがある。




__今はまだ、言えない。


________be continued.

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