"オタメシカノジョ" 第2話
___この世は決して平等じゃない。
...だが不幸だけは、誰にでも平等にやってくる__
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第2話
"ウラギリ"
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美空:...それでね、昨日本当に面白くって__
◯◯:うん...うん...
こちらを見ながら終始笑顔で話す美空。
あれから2週間。今日も僕らは屋上で"恋人同士の逢瀬"に勤しんでいた。
今日も美空は心から楽しそうで、僕まで楽しくなる。
僕はと言えば、毎朝迎えに来てくれる美空を待たせないようにと早起きするようになり、隣を歩いて恥ずかしくないように美容院で髪を切った。
講義も美空と一緒に出るのでサボることがなくなったし、放課後美空と図書館で勉強までするようになった。
美月:...彼女パワーすごいな...アンタがここまできっちりやるようになるなんて...
◯◯:...僕が1番驚いてるよ。
今朝の姉の言葉が蘇る。美空と"この関係"を始めてから毎日が充実していて楽しい。"彼女"がいるだけで人生の全てが上手くいく...そんな気さえした。
___この関係が仮初でなければ。
美空:...ねーえ?聞いとる?
不意に頬をつつかれ、我に返る。
◯◯:...っ!ごめんごめん、ちょっと考え事してた...
美空:もう!可愛い彼女をほっぽらかして何の考え事しよると?...もしかして楽しくない?
膨れっ面でこちらを見た後急にしょんぼりする美空が愛おしくて、思わず頭を撫でる。
◯◯:...そんなことない。美空に見蕩れてたんだよ。
美空:えへへ...◯◯もそんなこと言うようになったんやね。
目を細め嬉しそうに抱き着いてくる美空の頭を引き続き撫でていると、屋上のドアが開く音がした。
??:...ここにいたんだ。
美空:あっ!彩!!!
ドアから入ってきた"アヤ"と呼ばれた女の子とは知り合いらしく、美空は嬉しそうに駆け出し、思い切り抱きついた。
彩:っ!...ちょ...もう...やめて...
美空:そんなこと言って寂しくて探しに来たんやろ?♡♡んんんー♡♡今日も可愛い♡
明らかに嫌がっている様子の友人に頬擦りしてご満悦の美空。
彩:...ってか、もしかしてお邪魔だった?
美空:ううん!そんなことない!ちょうどいいし紹介するね、私の"彼氏"の山下◯◯くん。こっちは私の親友の小川彩ちゃん。
◯◯:よっ...よろしく...
彩:...彼氏?最近付き合い悪いと思ったらそういうことだったのか...初めまして、小川彩です。
少し緊張気味にお互い挨拶し合い、沈黙。
◯◯:(...こういう時何喋ったらいいかホントにわかんないんだよな...)
美空:...そういえば私の事探してたん?何か用事やった?
沈黙を破ってくれた美空に、思い出したように小川さんが立ち上がる。
彩:あ!そうそう...今度の休みね、家の用事でどうしても抜けられなくて...約束してたテーマパーク...行けなくなっちゃった...ごめん。
美空:...えぇーっ!?そうなん!?楽しみやったのに...
がっくりと項垂れる美空。確かにこれは気の毒だ。
彩:...でも彩いいこと思いついちゃった。"2人で"行ってきなよ。
美空:...ほ?
彩:チケットもう買っちゃったし、行かないの勿体ないじゃん?彩のチケット彼氏さんにあげるからさ、2人で楽しんできなよ、ね?
美空:彩ぁーっ!!何ていい子なの!もう大好き!!!
彩:やっ!もう...くっつかないでよ...
満面の笑みで小川さんに再び抱きつくも嫌そうな顔をされている美空がなんだかおかしくて笑ってしまう。しかし...
◯◯:...あ、僕チケット代払うよ。
彩:え?いいよいいよ。元は彩がドタキャンしたのがいけないんだし。気にしないで!
笑顔で鞄からテーマパークのチケットを取り出し、渡してくれる。
◯◯:えっ!?いいの!?あ...ありがとう...
美空:お土産沢山買ってくるね?次は一緒に行こうね?絶対だよ?
彩:うん。それじゃ今日は帰るね、バイバイ2人とも。
美空:うん、またねー!
手を振って帰っていく小川さんを見送り、チケットを見る。某超有名テーマパークのチケット...彼女どころか行くのも初めてだ。
美空:...えへへ、楽しみやね。今週末でいい?
◯◯:うん!
ちょうどバイト代が入って懐が暖かくて良かった。
◯◯:...何着てこう。服買わなきゃだな...
美空:え!じゃあ今から見に行こ!選んであげる!
◯◯:う、うん。ありがとう...
僕の手を取り歩き出す美空は、屈託のない笑顔で笑っている。
___この笑顔も、"オタメシ"なんだろうか。
◯◯:(...何を考えてるんだ僕は...そもそも"僕と和の為"にしてくれている事じゃないか...これじゃまるで...)
頭を過ぎった寂しさと"有り得ない感情"を振り切り、僕は少し強く彼女の手を握った。
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和:...いけないいけない...遅くなっちゃった...
部活終わり。1人残って自主練習をしていたらこんな時間。誰もいない道場の掃除を終え、着替えて帰ろうとした時だった。
和:(...男子の部室から物音がする...まだ誰かいるのかな)
もしかしたら先輩がまだ残っているかもしれない。少し期待して部室の引き戸を開けようとしたその時だった___
??:...もう、神村くんったら...♡お家まで待てないの?
神村:...良いじゃん。ここの方が興奮するって。
部室の中では先輩と、弓道部のマネージャーが抱き合っていた。
和:(...えっ!?どういう事!?)
マネ:...でも大好きな彼氏がこんな事してるなんて和ちゃんかわいそう...ふふっ...
神村:...いいんだよ。くそ真面目だから絶対気付かないって。それに向こうが一方的に好き好き言ってきてるだけだしな。
マネ:...それは流石にひどいわー。
神村:...とか言ってお前も結局俺の"身体目当て"なんだろ?
マネ:...えー?ここまでしといて彼女にはしてくれないのー?
そう言ってマネージャーはジャージを脱ぎ始めた。
そこからは先は記憶も曖昧だが、気付けば私は自分の家の前に蹲っていた。
和:(...先輩が...まさかあんなこと...)
信じられない現実を叩きつけられパニックになりつつも、裏切られた事だけははっきりとわかる。
和:...どうして...こんな...
蹲って頭を抱え、怒りと恐怖に身体が震える。
____嘘だったんだ、全部。
私に向けた笑顔も、かけてくれた言葉も。
突然襲ってきた猛烈な目眩と吐き気を必死に堪え、何とか立ち上がった私を突然誰かが抱きかかえた。
◯◯:...和!?どうした?大丈夫!?
聞き覚えのある声と、匂い。
和:...◯◯...私...
彼に全体重を預け、意識の遠のいていた私はゆっくりと目を閉じた___
_____________be continued.
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