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【連載小説】「続・妄想人間」
第4章 母と娘
妄想人間。それはすぐに妄想をする人間。他人に迷惑をかけない程度なら妄想はいくらしても構いません。妄想によって幸せな気持ちになれることもあるでしょう。しかし、他人に迷惑をかけるような妄想は困ります。サエちゃんの職場にいる妄想人間は後者のタイプなので厄介です…。
前回の話はこちらから↓
ハンダタツノリ君からLINEが来るようになりました。食事の時、いつの間にかLINE交換をしていたようです。内容は当たり障りのないもので、今のところ、普通の友達のようにLINEのやりとりが続いています。もっと仲良くなりたいな、とサエちゃんは思っているところです。
そんなサエちゃんにいち早く気づいたのは母親。さすが母親です。サエちゃんが恋をしていることに気づきました。子どもの頃から何でも母親に話すサエちゃんはハンダタツノリ君や加奈さんのことを母親に話します。
加奈さんが妄想人間であることや、ちょっと変わっていることなども話すと…。
「きっと寂しいんでしょうね、加奈さんって人」
と母親は言いました。
「妄想話をすることで気を引きたいのかもしれないし、妄想することで寂しさを紛らわせているのかもしれないわね」
人生の先輩の考察はとてもタメになります。
そういう見方もあるのか!サエちゃんは母親の見解を念頭に置いて接してみることにしました。
そうすると、これまでとは加奈さんの見方が変わってきます。
母親の言う通り、単なる寂しがり屋なのかもしれないと思うようになったのです。
そう思えるようになると、加奈さんの妄想話はそれほど不快に感じなくなりました。
ハンダタツノリ君とも何度か二人で会うようになり、サエちゃんはだんだんと子役や俳優としての大ファンではなく、一人の男性として惹かれていくようになったのです。
3人で食事をしてから半年が経った頃、サエちゃんはハンダタツノリくんの自宅に招待されました。
そこには加奈さんとハンダタツノリ君しか居ません。
ご両親に挨拶をすることになるかも、と思っていたサエちゃんは拍子抜けです。
すると、奥の和室に仏壇があるのが見えました。
そこにはご両親らしき人の写真が…。
ハンダタツノリ君が話してくれました。
小さい時にご両親は交通事故で亡くなったそうです。
大人になるまで親戚の家に預けられていた二人。
数年前、ハンダタツノリ君が子役時代からコツコツ稼いだお金でこの中古住宅を購入したということでした。
それから姉弟二人で暮らしているそうです。
ようやく腑に落ちたサエちゃん。
こういった過去があったから、加奈さんは妄想人間になってしまったのでしょう。
ハンダタツノリ君にとって加奈さんは良いお姉さんです。
頼りになるお姉さんを演じなくてはいけない重圧やご両親を亡くした悲しみなどから、妄想をすることで自分を守り続けていたのでしょう。
このことが分かってから、ますます加奈さんへの見方が変わったサエちゃん。
だんだんと加奈さんのことも愛おしく思えるようになってきました。
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