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【連作ショートショート】「ツ・チノコ 4」
前回のお話はこちらから。↓
麻莉亜(まりあ)は
週末になるとおじいちゃんちへ行くことにしている。
おじいちゃんは古い平屋で一人暮らし。
おばあちゃんは10年前に亡くなった。
一人で家のことは何でもできるおじいちゃん。
だが、先日、具合が悪くなり検査入院をしたところ、
末期の癌であることが判明。
余命半年。
最近は寝ていることも多い。
そこで家事を手伝うために通うことにしたのだ。
実はそれまで、
麻莉亜はあまりおじいちゃんちへ行ったことがなかった。
麻莉亜は高校を卒業後、アルバイトをしている。
いわゆるフリーターだ。
勉強も嫌いだし、何かやりたいこともない。
家にいると両親の小言がうるさく、
アルバイトがない時は一人でフラフラと
ゲーセンへ遊びに行くという生活。
そんな中、おじいちゃんの末期癌宣告。
さすがに麻莉亜も何かしてあげたくなった。
そこで、両親の許可を得て月~金はアルバイトに精を出し、
土日はおじいちゃんちに泊まって家事をする。
そんな生活にシフトチェンジすることになった。
この生活もおじいちゃんが死ぬまでの半年程度だ。
最期くらいはおじいちゃん孝行をしよう。
麻莉亜がそう思い、おじいちゃんちにやって来た初日。
おじいちゃんちには不思議な生物が居た。
「ツ・チノコだよ」
おじいちゃんがその生物を紹介してくれた。
「ツチノコぉ~!?」
ツチノコ、聞いたことはあるが見たことはない。
だってそれは未知の生物だから…。
たしかに見たことのない形をしていて、なぜか
「ツ・チノコ!」
と喋る。
麻莉亜が「ツチノコ」と言う度に
「ツ・チノコ!」
と、訂正してくる不思議な生物だ。
おじいちゃんの話によると、
数年前、家の庭の草むらでツ・チノコを見つけたという。
おばあちゃんが亡くなって一人寂しかったおじいちゃんは、
すぐに飼うことにしたそうだ。
手間もかからず、餌代も特にかからない。
病気で高齢のおじいちゃんでも難なく飼えるという…。
喋るツチノコだなんて明らかにおかしい…。
いや、世間に知れたら大騒ぎになるだろう。
麻莉亜はみんなに言いたくてたまらなかったが、
おじいちゃんにきつく口止めされてしまった。
余命半年のおじいちゃんを悲しませたら罰が当たる…。
そう思った麻莉亜は、おじいちゃんが死ぬまで、
このままツ・チノコのことは両親にも言わず、
せっせとおじいちゃんちに通い続けた。
おじいちゃんは死ぬまで
ツ・チノコとその家で静かに穏やかな時を過ごした。
医者の言うとおり、きっちり半年後に亡くなった。
共働きの両親は忙しく、
アルバイト生活の麻莉亜が
遺品整理を担当することになったのは
必然だったかもしれない。
というよりも、麻莉亜は立候補した。
なんたって、おじいちゃんちにはみんなに内緒の
ツ・チノコが居るのだから…。
遺品整理のついでに、麻莉亜はツ・チノコの写真を撮った。
そして、マスコミに電話をした。
たちまち
『新種発見!』
の情報が世間を駆け巡る。
世間は大騒ぎになり、麻莉亜はマスコミに追いかけられた。
一躍有名人になり、
麻莉亜は出演料もたんまり貰えてアルバイト生活から脱却した。
ツ・チノコ様々。
これはお金になるぞ!!
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