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【連載小説】「妄想人間」

第3章 加奈さんの彼氏!?


妄想人間。それはすぐに妄想をする人間。他人に迷惑をかけない程度なら妄想はいくらしても構いません。妄想によって幸せな気持ちになれることもあるでしょう。しかし、他人に迷惑をかけるような妄想は困ります。ミノリの職場にいる妄想人間は後者のタイプなので厄介です…。

前回のお話はこちらから。↓

ミノリは彼氏と婚約しました。結婚式や入籍日をいつにするか、婚約者と相談しながら毎日とても楽しく暮らしているところです。

今日は日曜日。婚約者と一緒に近くのショッピングモールへお出かけです。ここには大型有名家具店などいろいろなお店が入っているので、新婚生活に向けて買い揃える物の下見もかねて出かけてきたのです。

モール内をブラブラしていたところ…
「あれ?加奈さん…かも!?」
ミノリは前方に加奈さんらしき人を見かけました。
婚約者には加奈さんのことを話していますが、会ったことはありません。
「あの人?…隣にイケメンが居るね」
婚約者に言われて、ミノリは加奈さんらしき人の隣に居る男性を見てみました。
遠目で見てもイケメン度が高く、背も高い青年です。
「加奈さんより年下じゃないかな…」
ミノリはその青年の顔を見て思いました。
加奈さんより4つ下のミノリよりもさらに2~3歳は若いのではないでしょうか。
服装も清潔感があり、顔は何となく俳優のハンダタツノリ君に似ている感じです。
「ああ、昔『カイダン君』っていうドラマに出ていた子役ね!」
婚約者も頷いています。
ハンダタツノリ君は大人になった今も活躍中で、ミノリも好きな俳優の一人です。
加奈さんらしき人はとても楽しそうに見えます。
彼氏なのか何なのか!?
何となく声をかけるのもはばかられ、加奈さんらしき人に気づかれないようにミノリは婚約者とその場を離れることにしました。
それに、まだ婚約したことは会社の人には言っていません。
ここで加奈さんに見つかってしまったら…おかしなことになりそうです。
そんなわけで、ミノリは婚約者と方向転換をし、ウインドーショッピングも早々に帰宅しました。

翌日、出勤したミノリは加奈さんと給湯室で顔を合わせました。
お茶を淹れながら
「加奈さん、土日はどんなふうに過ごしていたんですか?」
と、さり気なく訊ねるミノリです。
加奈さんは
「土曜日は1日中寝ていたかなぁ…日曜日は○○ショッピングモールで弟とショッピングしたよ!」
…なんと!
あのイケメンは加奈さんの弟だったのです!!
加奈さんにあんなステキな弟が居るなんて、ミノリは驚いてしまいました。
聞けば聞くほど、今回ばかりは加奈さんの妄想ではなく、事実のようです。

次の休日に婚約者と会ったミノリは、先週のあのイケメンは加奈さんの弟だったと伝えました。
すると…
「ミノリ、なんかガッカリしてるよね?ヤキモチ?」
「え?何でヤキモチ!?」
「加奈さんにイケメンの弟さんが居て妬いているように見えるから…」
言われて気づきました。
たしかに心の中がモヤモヤしています。これは加奈さんへの嫉妬なのでしょうか…。
一人っ子のミノリは男兄弟に憧れを抱いています。
そんなところから、ステキな弟が居る加奈さんに嫉妬してしまったのかもしれません。
「なんだかんだミノリは加奈さんのことが好きだよね!」
婚約者のまたもや爆弾発言に凍りついてしまったミノリです…。
「好きだから気になるんじゃないの?」
…凍った後に今度は溶けてしまいそうです……。
婚約者の言葉がズキュンと的を射ているように思えます。
加奈さんは妄想人間で厄介な人ですが、どこか憎めないところがある。
加奈さんを目で追っていることが多いし、たしかに気になる人ではある。

ミノリは妙に納得しました。
婚約者との会話から、加奈さんへの意外な気持ちに気づいたミノリは、明日からどんなふうに加奈さんと接したらいいのか悩んでしまいました。

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るみ♪
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