WE ALL MAD HERE【気になるところで終わるショート小説】
私はただ床に突っ伏していた。
他にできることが何一つなかったのだ。
そして、誰もが私をくだらない人間だと思うのだろうという思考が浮かんではきたが、それでさえ、私を今の状況から逃してはくれなかった。
眠いわけではない。むしろ頭は冴えわたっていた。
目は見開いたままであったし、今まで聞こえなかった音でさえ今は鼓膜に直接響いてくるようだった。
「おかしい」
明らかに、誰がどの角度から見ようとこの状況はおかしかった。
この状態でもう数週間が過ぎている。
そろそろ終わりにしたい。でもそれは”私”の意見でないのは分かっていた。
この体なのか、思考なのか、常識的な意識なのかもしれないが私ではなかった。
そうだ彼氏に連絡しよう。
携帯を探し出し画面に触れると暗証番号を求められた。
「1..3..1..9..8..ん?」
多分違う、けれどたぶんこれで解除できてしまうな。
そう思いながら、頭に浮かんでくるなんの脈略もない数字を入れていくとロックは無事解除された。
私はようやく状況が少し分かってきたようだった。
「ここはもう元の私が知っていた世界ではないのだな」
古い意識の中に新しい意識が芽生えはじめているのが感じて取れた。
私は元々おかしな人間だったのだから今さら気にしても仕方がない。
私たちが重力に完全に降伏しているように、この新しい感覚にも抗う必要はないのだと感じた。
携帯の画面には見慣れない配列でアプリが表示されており、しかもそのどれもが少しだけ違和感のあるデザインだった。
今彼氏に連絡を取ろうとしたところで、まったく別の人間が応答してくるのではなだろうか。そんな気がしてならない。
「もう私の知ってる彼氏はいないのだろうか。」
それは少しだけ、、いやとても受け入れがたいことだ。
それだけは許せない。確かめなければ。
いつも使い慣れているはずのアプリを開きメッセージを送ろうとしたがもはや誰が誰なのか私には分からなかった。
彼氏ならトーク履歴が一番上に来ているはずだから、これのはずだけど。
「いったい誰なんだ、これは。」
知らない。この人じゃない。
これは私の彼氏じゃない。
抗いたい。ここにきて初めてその感情が芽生えた。