第6話:ダンジョン1層
懐かしいという感情が自分に植え付けられた。なぜなのか?なんでだろうね?
俺の周りからは鳥の鳴く音が聞こえ、下を向くと浅めの川があった。
しかし、この中は地下で、国にあるダンジョンのうちの一つだった。
俺とアリシアは、実践形式で魔物を倒す練習をするためにその国にあるダンジョンのうち一つの1層に来ていた。
「スライム可愛い〜」
「だね〜。持ち帰りた〜い!」
過酷なダンジョン探索...ではなく、まるでピクニックのような雰囲気で俺とアリシアは世間で最弱と言われているスライムを捕まえていた。
スライムは触られすぎて、今にも疲れて倒れそうな状態になっている。
だから、俺達はスライムを開放してあげた。
「元気でね〜」
俺がスライムに別れの挨拶をすると、スライムは一目散に逃げていった。
そんなに撫でられるの嫌いなのかよ...悲し...
アリシアはそんなスライム見て、ちょっと複雑そうな顔になっていた。
「ちょっと可愛そうだったね。次からはもう少し優しくしてあげないとだね」
「だね。気をつけよ...魔物かな?危険な魔物だったら倒しちゃおうか」
俺は、綺麗な手であの木の裏を指差す。さっきからずっと音がしたため、その魔物かもしれないものに全神経で警戒する。
アリシアも俺に続いて気づき、剣をもつ。
木の裏からコボルトがひょこっと出てきた。犬の顔で全身毛が生えていて尻尾がある亜人のような魔物で、右手にはナイフを持っている。コボルトは俺達に気づくと、ナイフで突き刺しに襲いかかる。
「フレアダート」
俺がそう詠唱すると同時にコボルトの腹には炎の矢のようなものが突き刺さる。
この魔法も好きだったキャラクターの使っていた技だ。そういえば大体知っている魔法を何故この世界でも使えるんだ?
そんな呑気に考えていると、コボルトが倒れた。別に今は素材を集めるのが目的ではないのでスルーする。別に対して銅貨4枚くらいのお金にしかならないし。
あ、そうだ。日本円にすると銅貨1枚は100円くらいの価値だ。
「ナイスだよ!リオっ。本当に強いね」
「ありがとう。でも、これくらいの敵なら余裕だね。1層の守護者をちゃちゃっと倒して2層に行ってみる?」
「行っちゃお〜」
俺とアリシアは本当にピクニックに行くように1層の深層へ進んでいく。
アリシアと話す間、深層から出てくる自分たちとは逆の方へ歩く冒険者達がいた。腕には緑色チョーカーがついていた。冒険者のDランクということころか。
俺は、その人達の会話が気になった。
「あいつまじでやばすぎるだろ」
「1層の守護者を瞬殺ってだいぶすげえよな」
1層の守護者を瞬殺...多分Cランク以上の冒険者なのだろうと思った。一瞬すごいなーと思いながらアリシアとの楽しい会話に戻った。
「ファイアーボルト」
「衝破」
先程までは全くいなかったコボルトが一気に3体押しかけてくる。だが、火の玉によって燃やしたり、剣から飛び出す衝撃波によってコボルトたちは一掃されてしまう。
「ここを右に曲がったら守護者の部屋だよね?」
「地図にはこう書いてるね」
俺は、地図をアリシアに渡す。このダンジョンの1層から6層までは、地図が公式によって作られている。だが、このダンジョンの7層から最下層の10層は上位のBランク以上の冒険者しか入れないので、誰にでもあげることはできないらしい。
「あったあった。ここだね」
俺は、それらしき扉を見つける。大きめの扉だ。
俺はアリシアにアイコンタクトをする。アリシアはニコって笑って了承を得る。
いざ勝負だ!!!
「...あれぇ??」
俺は素っ頓狂な声が出た。
「あそこにいるのって倒された1層の守護者じゃね...」
1層の守護者であるゴーレムマンがなんと粉々に粉砕されていた。
そして、そのゴーレムマンの素材をうっすらと見覚えの男が回収していた。
「お、やあ。ちょっと素材回収手伝ってくんねえか?」
その男は、俺の前世でやっていたゲームキャラクターに似ている。
俺が前世でやっていたVRMMOのゲームである『ルナティックファンタジー』は、プレイ者累計150万人を突破した超大作ゲームだ。
簡単に言おう。そのゲームにいたキャラクターが、そこにいるのだ。
「なんだよっ、人の顔をジロジロ見やがって。惚れちまっちゃったのか?」
「リオ?大丈夫?」
アリシアが心配してくれている。別に大丈夫だよ。それよりも
「初対面だが、聞いてもいいかな?」
「うん?なんだよ」
俺は、少し緊張しながら口を開ける。いや、少し違うな。楽しみさもあったな。
「君って...イヴォって名前か?」
俺は、確信した。
俺は...前世にプレイしていたゲーム、ルナティックファンタジーの世界に...
転生してしまったようだ。
良いと思ってくれたら、ハートをよろしくお願いします。
あと、一番早く出すのはカクヨムです。