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【短編小説】わたしの禁果

注意:この小説はソフトえっちな要素があります🍎

思春期のある3日間を通して、自分自身の内面を探求する少女のお話です。私自身も青春期に男子との関わりや初めての経験に戸惑ったことがあり、その経験が作品の元になっています。読んでもらえるとうれしいです。





Day 1:


朝、目が覚めると窓から柔らかい光が差し込んでいた。

カーテンの隙間から覗く青空は、まるで絵に描いたように澄んでいる。布団の中で小さく伸びをすると、体が少しだけだるい。夢の名残りが体にまとわりついていて、少し汗ばんでいるみたいだ。

「ああ、学校か…」

ベッドの中で、わたしは一瞬だけそのまま目を閉じたくなる衝動に駆られた。

でも、母の足音が廊下を歩いてくるのが聞こえて、結局起き上がった。制服に着替え、鏡に映る自分をじっと見つめる。制服の襟元を直しながら、ふと胸元に視線が向かう。

…少しは大きくなっただろうか。

そんなことを考える自分に恥ずかしさを感じつつも、視線は自然と胸に戻る。

友達と話していると、みんなが「彼氏」や「恋愛」の話をする。あの子たちは、本当にもう…そういう経験をしているんだろうか。自分だけ、遅れている気がして、不安が胸の奥で微かに疼く。

「あんた、遅刻するよ!」

母の声に現実へと引き戻される。髪を慌てて整え、リビングに向かう。朝食を口に運びながらも、なんとなく心は別の場所にあった。クラスメイトのこと、男子のこと、そして自分のこと。何かが足りないような、でも何かが始まりそうな不安定な感覚が、わたしの心を占めていた。



学校では、いつものように授業が続く。

先生の声はどこか遠くに感じられて、黒板に書かれた文字もすぐに頭に入ってこない。隣の席の由香が、ノートに何かを書き込んでいる。私も、それを見てノートを開くけれど、ペンはほとんど動かない。

休み時間になると、周りの女の子たちはスマホを手にしておしゃべりを始める。

私はその輪に入らず、ぼんやりと窓の外を眺めていた。秋の空が高く、風が校庭の木々を揺らしている。その風が、自分の心の中にも吹き込んでいるような気がして、少しだけ寒く感じる。

「ねえ、最近誰かいい人いないの?」

突然、由香がわたしに話しかけてきた。わたしは驚いて振り返る。

「え、どういうこと?」

「だって、あんたってなんかさ、色々考え込んでる風じゃん。好きな人とか、気になってる人とかいないの?」

由香は楽しそうに私をからかうような口調で言う。でも私は、うまく言葉が出ない。そんな人がいるのかどうか、自分でもよく分からないから。



放課後、帰り道は夕焼けで染まっている。

オレンジ色の光がわたしの足元を照らし、影を長く引っ張っていく。道端で誰かとすれ違うたびに、その影が交わって、またすぐに離れていく。

家に帰ると、母が夕食の準備をしている。私は「ただいま」と言って、すぐに自分の部屋に閉じこもった。制服を脱いで、パジャマに着替える。ベッドに倒れ込むようにして横になると、今日一日がどっと押し寄せてくる。

ふと、スマホを手に取り、SNSを開く。友達が投稿している写真、笑顔、カフェのランチ、カップルの手を繋いだ写真…。一つひとつが私を取り残しているような気がして、胸がざわつく。

本当は、わたしも…こんな風に誰かと…。

でも、そんなことを考えるたびに、何かが邪魔をする。まだ、早いんじゃないかって。何も分かっていないんじゃないかって。だけど、その一方で、知りたい。あの子たちが話している「恋愛」って何なんだろう。彼らはどうしてそんなに自然にできるんだろう。

そんなことを考えているうちに、眠気がわたしを包み込む。目を閉じると、今日の出来事がまぶたの裏で再生される。由香の笑顔、男子たちの笑い声、そして自分の影。

明日も、同じような一日が待っているんだろうか。



Day 2:


次の日も、同じように朝がやってきた。

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