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村上春樹に強いショックを受けた思い出
村上春樹は、私にとっては、すごい微妙な存在だ。
正直、彼の小説は苦手だ。
理由は明白で、性的要素が強いからである。
別にエロ自体が嫌いなわけではないはずだが、村上氏の文章のはそれが強すぎて、実際苦手な人は一定数いると思う。
ただ、私にとって、村上春樹は、ただの気持ち悪い小説を書く人で片付けられる存在ではなかった。
というのも、私とある程度深く関わった人に、村上春樹が好きな人がなぜか多く、そうした人達との関わりは、決して無視できない大きさの影響を与えたからだ。
村上春樹が大好きな友達の話
高校卒業後もたまに連絡をとる友達は大の村上春樹ファンで、彼が書く小説には、ところどころ村上春樹の影響が見られる。彼の小説は、面白い。
「1Q84」という小説をやたらおすすめしてくれたのだが、「ねむり」という本を読んで一種の強いショックを植え付けられた私は、読む気になれなかった。
それは当時同じ部活だった女の子のせいで、後述する。
意識高い友達の話
生徒会長をやっていた真面目な彼も、村上春樹が好きだった。
中3の時に、どこの大学目指してるのか彼に聞いたら、「まあ、旧帝大じゃね」って返ってきて、当時は「旧帝大学」という名前の大学があるのかと勘違いした。
「村上春樹は、読んだことがあるけど、あんまり得意じゃなかったんだ」って伝えると、三島由紀夫の「金閣寺」をお薦めしてくれた。面白かった。そんな私は、今京都にいる。
イギリス人の友達の話
大学に入ってから交流したイギリス人の友達に、好きな小説を聞くと、「ノルウェイの森」と返ってきた。「ノルウェイの森」は読んだことがなかったが、「あれってピンクなんでしょ?」ってきくと、「へへ、まあね」と返ってきた。
今は、江國香織の「間宮兄弟」という小説を読んでるらしく、わからない単語の読みを僕にきいてきた。暗記カードの数は1万枚以上らしい。日本語の勉強を頑張っていてすごい。
ちなみに、マンガの趣味はとても私と合っていて、彼曰く
「ひろむあらかわ先生は一番好きの漫画家かも」だ。
同じ部活の女の子の話
最後、部活が同じだった女の子に、「国語の授業でやる本紹介、何にした?」ってきくと、「村上春樹の『ねむり』にしたよ〜」って返ってきた。村上春樹を知らなかったことを伝えると、(つまり時系列的にはこの子が一番最初であり、これが村上春樹と私の出会いだった)「ええ、村上春樹知らないの?それはやばい笑」的なことを言われた。それで、そんなに言うなら読んでみるかと思って図書館で「ねむり」を借りたら、文中に夫とのセックスがどうとか書いてあってすごいモヤモヤした。中2で、同じ部活の女の子からおすすめされた小説でそういう一文があるとスルーできずにモヤモヤするのは無理もないことだったと思う。プラスでもないがマイナスでもなく、かといって0でもない、こんな感情は初めてだった。感情は、実数上に定義されるとは限らないのだと知った。
文章は、こんな感じだ。
それがセックスの誘いであることに気づいたのは、彼が立ち上がって私をベッドに誘った時だった。でも私はそんな気にはなれなかった。どうして今ここでそんなことをしなくてはいけないのか、理解できなかった。私は早く本に戻りたかった。
私は義務として買い物をし、料理を作り、掃除をし、子供の相手をした。義務として夫とセックスをした。慣れてしまえばそれは決して難しいことではなかった。むしろ簡単なことだった。頭と肉体のコネクションを切ってしまえばいいのだ。
当然、彼女が私にこの本を薦めてきたのは、「17日間寝ていない女」という独特な設定から描写される世界観が面白いという純粋な理由だったのだろうが、こういった文章が含まれる小説をお薦めするのは私にとってテロみたいなものだった。しかも、ただ恋愛シーンでセックスが出てくるわけではなく夫との義務的なセックスの話である。
「あなたはどういう気持ちでこの文章を読んでいた?なんでこれを中2の国語の授業の本紹介に選んだ?」
とりあえず出てきた感情はこんなものだったと思う。
クラスが違ったから、授業でどういう風に紹介していたかは知らない。
中高時代の私は、人から勧められた本はできるだけ読むようにする、読んだら感想を言うというのを心掛けていたが、読んだのに感想を伝えず、読まなかったことにしたのはこの一件だけだった。普段なら、たとえつまらなかったとしても、その人の前では「面白かったよ〜」って言うこともあったのに。
終わりに
結局、村上春樹に関するエピソードは色々あったが、基本的に最後の女の子とのエピソードが諸悪の根源(悪ではないと思うが)で、いろんな友達が村上春樹を話題に出す度にその記憶がrecallされる。
先日も、abemaで「恋は双子で割り切れない」というアニメを視聴したのだが、小学生の女の子が男の子に「ノルウェイの森は読んだ?結構Hだったでしょう笑」とか言っていて、また被弾した。その男の子は、自分から村上春樹が好きと言ってたので、同情の余地はないのだが。
女の子に無知を笑われて村上春樹がどういう作家かを知らずに読んだ私とは大違いだ。
なんでこのアニメを見たかというと、エンディングの「ハニーシトロン」を聴きたかったからだ。
FUWAMOCOという、バーチャル世界が産んだ奇跡の双子がカバーしていたのだから、原曲を聴きたくなるのは当然だろう。
日本人ならまだしも、まじでなんでこの曲をカバーしようと思ったの??(褒めてる)
YOASOBIの「怪物」だけど、まじでこのクオリティで日本人じゃないのバグってる。
こういう経験は、尊い双子で中和するに限る。