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アパレル店長物語 Epi.9:限りない思考。私のブロードウェイの舞台を書く。

時には過去の経験から制限が生まれることがあります。私たちの未来をよりよくするために、要望していきましょう。

◎前回のあらすじ

過去の自分から未来の自分に変わった瞬間、視点と行動が変わりました。渋谷店のセールで、DMの前にメルマガ読者を優先する試みを実施し、手書きメッセージを加えたインパクトあるDMを作成。1000枚のDMをスタッフと協力して書き上げ、メルマガ読者限定セールを成功させました。顧客のメールアドレスを収集し、DMのお客様をメルマガ読者に変え、VIPへと成長させる未来への戦略も実行しました。

一般向けセールに向け、スタッフと相談し、手作りTシャツをウィンドウディスプレイに使うアイデアを実施。美大出身の妹の助けを借りてタンクトップにSALEの文字を描き、スタッフに好評を得ました。ディスプレイが完成し、セール初日にはVMDスタッフもTシャツを着用。顧客からも好評で、アパレル業界での自分のアイデアが成果を生む体験ができました。

4.3 BLOG 開始

セール初日からの好調な売上が続いていました。途中でのメルマガ配信やHP更新が功を奏したのかもしれません。7月第一週の店長会議では、渋谷店の売上目標が上方修正されるほどでした。

2004年7月4日の私の手帳には「200万円売れたが、死にそうに疲れる」と記されていました。店舗勤務に加え、自宅でもHPの更新をしていたため、睡眠時間はわずか4時間という日々が続いていたのです。

そんな私の様子を見たIさんが「HPはお店で更新できないのですか?」と尋ねてきました。私は「ホームページビルダーがインストールされたパソコンでないとHPが作れないんです。あ、でもBLOGならできるかも!」と答えました。この会話がきっかけで、4月にUさんから教わったBLOGを始めてみようと考えるようになりました。

7月5日の休日を利用して、ブログの立ち上げに取り組みました。以前取得したジュゲムブログのIDは忘れてしまっていたので、新たに楽天ブログでアカウントを作成しました。楽天ブログのポテンシャルについてはまだ不確かでしたが、とりあえず始めてみることにしました。そのため、初日の投稿は単なる日記のような内容になりました。

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2004/07/05

新宿へSALE偵察へ&お買い物へ

SALEの4連勤も終わり、漸くお休みに。15時まで寝てショップ巡りがてら、新宿をうろうろする。セールに来るお客様の気持ちになってみたが、やっぱりセール対象外はいかないもの。それでも買っていただくようにするには? どうすればよいのか? 去年気に入って買ったサンダルが、売っていて同じ物だけど購入してしまった。去年物だから割り引き率が50%とかなりお買い得。セールの割引率については、某デパートに比べると当店のインポート物の方が割引率が高いです。セレクトしてあるものは同じブランドだから同じといったことは実際ないみたいです。そのあと、洋食屋のアカシヤでロールキャベツ定食を食す。夜はサンダルを磨き、あいのりをみた。いつも感動して涙。。。

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2024年の私から見ると、ツッコミどころが満載。文章力のかけらもありませんでした。次の日はどうでしょう?

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2004/07/06

製品染めワークパンツが入ってきました

製品染めワークパンツが全サイズ追加納品!です。今日もワークパンツ類は38本も売れておりました。ほんとにはきやすいパンツです。明日は神戸出張です。

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深夜、パソコンの青白い光に照らされた顔で、私は画面を見つめていました。毎日の更新は骨が折れますが、少しずつ手応えを感じ始めていました。お店のブログなので、私がお休みの日にスタッフIさんに記事を書いてくださいとお願いしてみたところ、彼女の記事を読んで、思わず唸ってしまいました。文章の流れ、言葉の選び方、どれをとっても私よりも数段上手い。「こんな風に書けばいいのか」。新たな学びを得た瞬間でした。

ところが、この熱心な取り組みにも関わらず、イメージ通りのことができないでいました。当時の楽天ブログには、なんと写真をアップロードする機能がなかったのです。文字だけじゃ、ただの掲示板です。なので、辞めたほうがいいと上司にも言われていたHPを辞めることができませんでした。

しかしある日、ふと目にしたのが写真入りのブログ記事です。好奇心に駆られ、九州地方のブロガーにメッセージを送りました。数時間後、待ちに待った返信。あるフィルムメーカーのWEB上のフォトアルバムを使っているというのです。その説明を読みながら、早速試してみると、確かにHTMLタグが発行され、ブログに写真を埋め込むことができました! 「やった!」思わず声を上げてしまいました。6週間かかりましたが、ついに私たちのブログにも写真を掲載できる日が来たのです。

これで私たちの情報発信戦略は新たな段階に突入しました。ホームページ、ブログ、メールマガジン。あらゆる手段を駆使して、渋谷店の魅力を余すことなくお客様に届けるプラットホームが始動しはじめたのです!

4.4 10万円のウインドウディスプレー

「学芸会のよう」と評されていた渋谷店のウインドウディスプレイ。夏のセールを機に、本格的に予算をかけることにしました。「もし月給が100万円の店長だったら、何をする?」という問いから、ウインドウディスプレイに投資したいという答えも生まれました。

そういえば、銀座店に来ていたお花屋さんのことを思い出しました。勇気を出してその花屋に連絡。見積もりをお願いすると、返ってきた金額は10万円。私の給料ではとても賄えません。しばらく悩んだ末、思い切って会社に稟議書を提出しました。

「通ったらラッキー。いや、5000万円売るならば、10万円の投資なんて、安いものだ」とも思いました。

そして、嬉しいことに承認の知らせが。さらに、以前購入したホームページビルダーの1万円の領収書も、何の問題もなく経費として認められたのです。 

この経験を通じて、店長としての権限が予想以上にあることを痛感しました。同じ立場でありながら、この権限を活用しようとする店長と、諦めて不満を言うだけの店長では、全く違う世界が広がっていくのだと強く実感したのでした。

真夏の熱気が立ち込める渋谷の街。そんな中、我が店のウインドウが涼しげな風景に生まれ変わりました。

「避暑地」をテーマにしたディスプレイが、通りすがりの人々の目を引きつけます。中央には、「SALE」とかかれた手作りタンクトップと、リラックス感溢れるセールの目玉商品のワークパンツ。このシンプルながら洗練されたコーディネートが、夏のバカンスを彷彿とさせます。

そして、その周りを彩るのは、プロのお花屋さんによる演出。高さ1メートルを超える大きな花瓶が2本、堂々と置かれています。透明なガラスの中には、涼しげな水が満たされ、光を受けて煌めきます。

さらに驚きなのは、本物の木の存在。まるで森の中にいるかのような錯覚を覚えるほどの存在感です。枝葉が風に揺れる様子は、まさに避暑地にいるような清々しさを感じさせます。まるで、この小さな空間だけ、都会の喧騒から切り取られた別世界のよう。炎天下の渋谷で、ほんの一瞬でも涼を感じられる。そんな魔法のようなウインドウディスプレイが完成したのです。

7月最終日は、あと80万以上売り上げれば4000万円を突破します。長かったセール期間が終わり、今、その成果が明らかになろうとしています。

思わず声が漏れました。なんと、7月のセールス実績が4000万円を突破したのです! 凄い! 私だけでなく、いろんな力が働いて成し遂げた実感がありました。確かに、今シーズンの商品ラインナップは魅力的でした。しかし、もし私たちが何もアクションを起こさなければ、おそらく3500万円程度で満足していたことでしょう。

ウインドウディスプレイの改善、ブログの立ち上げ、メールマガジンの配信...。「みんな、本当によくやった!」この瞬間、日々の努力が実を結んだことを、身をもって実感したのです。しかし、本当のカッコイイ目標までは、あと1000万! 

■編集後記

ChatGPTにイラストをしてもらったところ、かなりリアルに近づいて驚きました。しかし、最初は「マネキン」とプロンプトをだしたので、手足のあるマネキンになり、「トルソー」と言い換えたら、ようやく5回目くらいで、手足のないトルソーになりました。まさに、こんな感じのウインドウディスプレーで、学芸会からブロードウェイの舞台に大変身です。😂✨ 

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