「ここはお前の国みたく空気汚くありませんからー!!」ってマスクしてる私に叫んでたマンチェスターの君へ
ちょこっと喉がいがいがするなー、でも今日のライブは行きたいしなー。
そう思って私は久しぶりにマスクをすることにしたのだ。2017年、春先の英マンチェスターで。
日本から数枚持参していたマスクは、なかなか外でしにくいな、という感覚は確かにあった。台湾人のコースメイトが先日マスクをして登校し、興味津々のドイツ人の生徒に質問攻めされ、そんなに珍しい??と言っていたのも記憶に新しかった。期末の図書館混んでるし、マスクした方が絶対いいのにー、という彼女の感想は、日本人の私としては共感できたが、その場にいたその他の国籍の友人たちが同意する様子はなかった。
まあ、でも、風邪はひきはじめが肝心だし、ライブで人にうつしてはいけない。そう思ってマスクをして街の中心の広場を歩いた。マンチェスターには中華街もアラブストリートも、ゲイビレッジもある。だからその日も、異なる見た目の、様々な人たちが、広場を行き交っていた。ゆえに広場を挟んでこっちに向かって叫んでいるやつが、まさかマスクをしている私ひとりを狙って叫んでるとは最初思いもしなかったのだ。
「お前のお国と違ってここは空気きれいですよー!!聞いてますかー!!」
まーた頭悪いやつが頭悪いこと叫んでるんだと思った。しかし、ふと、なんのことだ??とそっちを見ると目が合った気がした。
「ハロー!!!!マンチェスターの空気はお前の出身地と違ってきれいですから、そのまま吸えますよー!!!!」
え、もしかして私に言ってるのか!?
チャイニーズウーマンいえーい!!と大量にいる中国人留学生と同じ括りで叫ばれるとか、ちょっとすれ違いざまにこずかれるとか、多少なりともヘイトにあうことはそれまでもあった。こうしたうざ絡みはイラッともヒヤッともするし、虫の居所が悪いと無意味な反論をしたくなることもある。大抵は無視だが。
しかし、これはちょっといつもと違うな、どうしたもんかな、と目線を合わせず歩きながら考えた。要はマスクをしているというのは、空気が汚いから、というのが彼の発想なのだ。ヘイトの一種には違いない。しかし、彼はもしかすると自分の街の空気を汚いと思っている、失礼な外国人として私を見ているのか??
彼は結構遠くにいて、私はライブの時間が迫っていた。仕方なく、マスクを外して、歩き続けた。ああいう輩に追いかけられるのも嫌だし、なんだかかわいそうかもしれないと思ったのだ。外したら、グーッドという声がした。ちょっとむかつくな。むかつくけど。今日のところは地域愛強い青年ってことにしておいてやらぁ。そう思って足早にその場を去った。
今、マンチェスターに向かって叫びたい。
「マスクするのは空気汚れてるからするだけじゃないんだぞーー!!人にうつさないためにも装着するんだぞーー!!感染症予防に効果的なんだぞーーー!!もう知らなかったとは言わせねえーーーー!!」
元気に生きてるかな、あいつ。海を隔てた彼にこの声が届くことはあるまい。でも、私を何人と思ったか知らないが(まあチャイナだよね)、人の出身地を馬鹿にするのやめろよ。あとマスクしてちゃんとマンチェスター守れよ。元気にしてろよ。そう願わなくもない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?