月は遠く

雨が降っている、と嘘をついた

声だけで話すときは

声の色を消して

届ける 震えだけを


わたしたち、何かの力を借りなければ

わたしたちでいられない

ひかる画面や音の出る穴

プラスティック

そのほか


たとえば未来にゆけば

わたしは、もっとたくさんの

わたしたちを、つくる

はぁ

なんにも終わらない


雨はまだ止まない

ずっと、止まない



(『現代詩手帖』2016年11月号掲載)

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