見出し画像

手帳ミステリー SOSEIの手帳6

前話はこちら
手帳ミステリー SOSEIの手帳5|Rukawa.Nagamasa (note.com)

Day5: 響直人

名刺から手帳の持ち主が田中一郎だと分かった。そんなこと自分は全く考えもしなかった。けど田中一郎ってだれだ?よくいそうな名前だけど、俺と先輩の共通の知人にそんなやつはいない。

「私は、響直人というもので、田中ではありません。もともと、この手帳は大学時代の先輩から預かったものなので、本当の持ち主のことも知らないんです」と話す。

そうすると、相手は少し驚いたような表情を見せて、こう続けた。

「この田中さんが同一人物かわかりませんが、会社の住所は北海道なんですけど、2日前、北海道の空港の近くの千歳市内でこの方と、少なくとも同姓同名の方が自動車事故でなくなっているようでして。。」さっきよりもトーンを下げて話しかけてくる

え、死亡事故。いや、そんなわけなくない?先輩マジでヤバイモノ押し付けたのかな。

「でも、この名前よくいそうな名前じゃないですか?区役所とかの例にも出てきそうですし」と、違う言い訳がましいことをいうと、

「そうなんですよ。だから、あくまで同姓同名の人がといったわけです」と答える青年。落ち着いている。自分とは大違いだ。

「ちなみに、なぜ、システム手帳みたいなプライベートがもりだくさんのものを先輩からとはいえ、預かったのですか?先輩ってどんな方なんですか?」 ちょっと先方の語気が強くなってきた。

「大学時代に良くしてくれた先輩なんです。先輩に頼まれたら断れないくらいお世話になった人で。でも、先輩がそんなやばいことをしているわけはないと思います。」 自分の声も大きくなった。ここは自信がある。ちょっと揺らいで入るが、、

隣に座っていたが学生らしき人はすでにいない。

「先輩が、1週間以内にこの手帳の中の謎を解けと。そしたら、ご褒美がもらえるからって言って、俺に渡していったんですよ」と説明をすると、

「謎?」相手が食いついてきた。そしてすぐに、

「やっぱりそうだったんですね。ちなみに1週間以内といっていましたが、今日は何日目なのですか?」と質問が飛んでくる。

「手帳が、ぬす、、なくなったのが3日目で、今日が5日目です。」と言い直して答える。

「つまり、今日を入れて後2日。明後日の土曜日までなんですね。それであなたはどこまでこの謎を解いているのですか?」と確認の質問が飛んできた。

「それが、、まったくわからず途方に暮れていたところ、手帳をなくしました。」と、またトーンが下がってしまった声で答える。

「そうだったんですね。実は、勝手に中を見せてもらって、一つ気になるものを見つけたのですが、、、その前に、この手帳に何か入っていませんでしたか?」興味津々に聞いてくる。

この手帳に何か入っていなかったか?なんだったっけ?
「あ、そうだ、Suicaのカードが入っていたんですよ。多分、新品の。珍しいですよね。今、IC不足で定期以外作れないはずなのに。」と答えると。

「ビンゴ!」 相手は、右手でピストルを作るようにこちらに向けてきた。

******************************

Day5: 深海蒼生

Suicaが入っていた。思っていた通りだ。これで先に進めそうだ。
一応、周りを見舞わす。こちらに意識を向けているような怪しそうな人はいない、たぶん。

「ちょっとこれを見てください。」 自分のものではない手帳のマンスリーを開く。そして、昨日書き込んだ自分の手帳ページを見せる。

「1~6月の各ページに①から始まる数字が入っています。この数字をアルファベットに置き換えると、

東京駅の八重洲北口のロッカーが怪しいんです。Binary以降の後半はよくわからないのですが、、行ってみる価値はありそうだと思って。ただ、駅のロッカーはSuicaがカギになるので、それを探していました。」
一気に説明する。

「へー。確かに。このSuicaがカギの可能性ありますね。」 
そう言って、財布からSuicaを取り出した。

無防備だな、この人。悪い人ではなさそうだ。間抜けなだけかもしれないが。俺が悪い奴ならそれを奪って逃げてしまうというのに。

「ちなみに、Suicaの残高は?」聞いてみると
「101円でした。電車にも乗れなくて、がっかりしたので覚えていまして。」とボソッと回答。
「4つ目のヒント。Binary、つまり2進数に見える額ですね。」

「たしかに。101ということは、5でしたっけ」と、彼が答える。
「最初の1は2の2乗。それに+1なので5ですよね。ちなみに、響さん今日はこれからお仕事ですか?」

「えー、そうです。もう行かなきゃ遅刻します」と、意外に時間を気にしていたことがわかる。こういうのは顔に出さないタイプなんだ。

「私もです。先ほど、謎に気づけなかったということなので、この謎ときを最後までやらせてもらえませんか?いや、手伝わせてもらえませんか。ご褒美というのはいらないのですが、この謎を作った人の意図を知りたくて。おそらく先輩という方も黒幕ではないと思うので。」と質問すると、
「もちろん、それは助かります。けど、念のためお聞きしますけど、最悪の場合、やばいことに巻き込まれるかもしれませんが、大丈夫ですか?」と聞いてくる。まっすぐな目で。

「今日の仕事終わりに東京駅で待ち合わせをするというのは?」そこは答えずに、先に進める。

「なるほど。それでは今日の7時半くらいでもいいでしょうか?もう仕事に遅れてしまいそうだ。」そういって彼は立ち上がる。
「ありがとうございます。連絡先だけ交換しましょう。」そう言ってお互い携帯を取り出しLINEを交換する。

「では、夜 お願いします。」 そう言って、グレースーツの青年は、足早に店を出て行った。手帳を残したまま。

こんな革のシステム手帳に興味ない人に、手帳渡すなんて、何を考えていたんだろうか。この人を俺に合わせるため?そんなことないだろう。

だけど、少なくとも、、
「いい人なんだろうな。」ぼそっとつぶやいて、冷たくなったラテを飲み干した。


つづきはこちら
手帳ミステリ SOSEIの手帳7|Rukawa.Nagamasa (note.com)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?