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小説 万テチョライフでレベルアップ~よりそう Season2 ~ 23
外に行くぞと言う部長の鶴の一声で、自分達はお洒落な15階の素敵な応接室を出た。自席に戻り、荷物をカバンにしまい、今日はこのまま直帰すると隣の先輩に伝えて会社を出る。
「さて、気合い入れないで歩くぞー」
楽しそうな部長。いれないのかーーい。各自が突っ込んだはず。
「まずは2人ペアで歩くか。俺とは東郷。赤杉と雲川な。まずは仲良くなりなることをイメージして、10億あったら欲しいものを話し合ってみてくれ。雑談の込みで15分くらいだ。」
なんかよくわからず、応じるメンバー。もちろん自分を含めて。赤杉先輩と一緒に歩きだす。少しの間しーーんとした時間が流れる。
この空気にたまらず
「赤杉先輩って10億あったら何したいですか? 」とりあえず額面通りに聞いてみる。
「なんで10億なんだろうな。」 真面目に考え込んでいる赤杉先輩。
そこ? それを考えて無口だったのか。これがデータアナリストなのか。
「現実感ないギリギリくらいなのでは?」なんとなく思いついたことを言ってみる。
「なるほど。いい視点かもな。5億とか7億くらいだと、宝くじとかできいたりするもんな。なんとなくこんなことしようとか考えるか。」
適当にいってたのだが、それなりに納得感を得てくれたようだ。でも10億か。あったらどうするかな。きっともう稼ぐこと考えなくてもいいよなぁ。会社やめて、、、好きなことをする?
好きなことって何だろう。今なら、コーヒー農園とか言ってコーヒー豆ができるところから見てみたい気持ちはあるかも。なんて考えていたら、
「・・・ 川君、 雲川君」 赤杉先輩によばれていた。
「あ、すいません。妄想してました。」
「いや、いいよ。自分もよくやるから。で、何考えてたの。」
「そうですねぇ。自分は、今、カフェで見習いみたいなこともやらせてもらっているんで、会社やめてコーヒー園とか見て回りたいなと思っていました。」
方という感じのリアクションを取ってくれる先輩。
「あ、あの会社近くのだっけ。すごいよな。会社の人に見られそうな場所で副業するって。」話しやすい雰囲気を作ってくれる。
「副業って感じじゃなくて、コーヒーの入れ方とかカフェの運営とかを体験というか、インターンさせてもらっている感じです。カフェのマスターの気配りとか声をかけるタイミングとかがすごすぎて、自分もそうなりたいと思ったのがきっかけなんですけど。」
「なるほどねぇ。で、その目的とは違うけど、コーヒー園を見て回りたいと思ったのはなんで?」
「確かにそうですね。自分でカフェやるとかも考えてもよかったのかもしれないですけど、コーヒー豆ってほんとに産地とかによって全然味や香りが違うので、その差が生まれる理由を見てみたいと思ったんですよねぇ」
「確かに面白いな、それ。産地によって値段とかも違うもんな。」
そう言って少し頭を下げ、地面を見つめるように歩きながら考えこんでいる先輩だったが、気づいたように顔を上げた。
おっ、何かひらめいたのかもと思ったが、
「これ以上話するとずれすぎるな。まとめると、今興味ある事の源流を知りたいみたいなことなんかな、雲川君がやりたいことって。」
「そうかもしれません。言語化してもらうとわかりやすいですね。」