手帳ミステリー SOSEIの手帳7
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手帳ミステリ SOSEIの手帳6|Rukawa.Nagamasa (note.com)
Day5夜:深海蒼生
通勤通学の人だけでなく、出張終わりのビジネスマン、時間を有効に使おうと夜に移動を考えている旅行者など人が多く行きかっている金曜夜の東京駅。
7時半を回ったが、響さんはまだ現れない。どころか、何の連絡もない。抜け駆けするようなタイプではないと思ったのだが、、
待ち合わせしていた駅内のコンビニの前でスマホをいじっていると、
「すいません。」と額に汗を浮かべたグレーのスーツの青年が立っていた。息が上がっているところを見ると走ってきたようだ。
「遅くなりましたー」と言いながら、呼吸を整えている。
「職場はこの近くなんですか?」と聞くと、
「なぜ、わかるんですか?」とびっくりしたように聞き返しきた。
「あ、いや、近くなければ電車乗って、改札からでてきますよね。地下鉄かもしれませんが」と、そこまでびっくりしなくてもと、俺のほうが驚きがちに返す。
「あ、たしかに。職場は日本橋のほうなので、走ってきました。」と、汗を拭きながら話す響さん。
「お疲れのところ、恐縮ですが、早速、行ってみましょうか。Suicaありますよね?」と聞くと、
「はい、ちゃんとここに」と言って、スーツの内ポケットからSuicaを取り出す。
手帳のマンスリーの数字をアルファベットに置き換えたら、この結果。
1月= TOKYOS
2月= YNORTH
3月= LOCKER
4月= BINARY
5月= FKPXD
6月= FOURTH
1月から3月までの結果から考えると、TOKYOStationのYaes NORTHのLOCKERと読める。
早速北口のほうに向かう。
バスターミナルの手前のところに小さなロッカーが対面になって設置されている。大きく2台。
「Suicaをタッチしてみてください」と俺が言うと、
響直人はピッと読み込みリーダーにSuicaを近づけた。
機械的な声で「ロッカー番号を押してください」と返してくる。
え? という顔で、今Suicaでロッカーとタッチした人間と顔を向き合わせる。
ちょっと待ってと手で合図をして、ロッカーの番号を眺める。1台目は501番~524まで。
もう一台のほうは551番から575番までだ。どちらも500番台。
4つ目のヒントはBinary(2進数)。5から始まっている時点で、2進数にならない。
周りを見渡す。不安そうな青年が立っている。助けられ向きな性格なんだろう。彼が持っていたSuicaに目が行く。
「101円でした。電車にも乗れなくて、がっかりしたので覚えていまして。」そう言っていたことを思い出す。
残高は101円で2進数だなと思ったんだった。2進数の101は5か。
「505だと思います。」 ぼそっと、思い付きを口出す。
こくりとうなずく、響さん。まったく疑いなどないらしい。
もう一度Suicaを接地面につけ、機械の合図で505と打ち込む。
「4桁の暗証番号を入力してください」機械の声は終わらなかった。
暗証番号?
また二人で、さっきよりも大きく目を見開きながら、顔を合わせる。なるほど、そこまであるのか。
「ちょっと時間をください。」そういって、俺は自分の手帳を取り出す。
順番から行けば、
5月= FKPXD がキーのはずだ。暗証番号ってことは、数字か。
「何桁って言ってましたっけ」
「4桁って言っていたような。」自信なさそうに、答えてくれる。
確かに4桁って言っていた気がする。この5文字を四桁の数字に変える?
数字といえば、Kか。
Kはキロ。FK Four Kiro=4000?だとすると次のPは?
なんか違うな。数字を意味するというと、PXD。P×Dにもなるか。
うん?
あー、数字とワードが混じっているとすると、数字に関係なさそうな3文字を数字に直す。
6K16×4→6K(6,000)と16×4(64)だから6,064。
4桁の数字になった。これか?
なんか今までパターンから考えて、なんか意味のある数字にしそうな気がするんだけど、ここから何か足したり、引くのか?
6つめがFourth。4番目・・。4番目を引く?違う気がするな
ロッカー番号は505か、505引くと、、手帳にひっ算する。5559。
いや、101か、101引くと、これも手帳に書く。5963。。
間違いない。
「5963でダイジョブだと思います。」
「え、5963ですか?」といって、パネルに数字を入れ始めた。
響が最後、決定ボタンを押す。
かちゃと音を立て、505番のロッカーが開いた。
ビンゴ
初めて、うれしい顔で二人で顔を突き合わせる。
二人でロッカーを覗き込んだ。
そこには銀色のPCが一台。あとは電源ケーブル。
それだけ。
響が、PCとケーブルを取り出す。それ以外に何かないか確認しているが特に無いようだ。
1つ目の謎はとけたみたいだ。あとはこのPCを確認すれば解決かな。
「どこかWifi拾えるカフェでPCの中身見てみます?」と声をかけると、
「そうですね、行きましょう」
二人で東京駅の北口のほうから外に出る。
ビジネスマンが時間あるときに仕事用によく使うカフェに向かった。
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Day5夜: 響直人
八重洲のビル街のほうに向かう。
一緒に歩いている紺のスーツの男。この人は本当にすごいな。
自分が全く分からなかったものを、あっという間にその場で解決してしまった。
この人にあの手帳が渡って本当によかった。でもなんで、あの暗証番号になったんだろう。聞いてもいいかな。
聞くか、やめておくか、もぞもぞしていると、
「何か聞きたいことあります?」と深見さんが聞いてくれた。
「あのー、暗証番号なんでわかったんですか?」
「あ、そうですよね。 一人で考えちゃってましたね。
まず5月の暗号。FKPXDって言っていたんですけど、数字との混合だったんですよ。きっかけは暗証番号の桁数が4桁ってことで9999通りだなと思ったんですけど、そうすると、2つ目のKがキロ:1000の意味かなって思って、Y2K問題ってのがったって聞いたことありません。」と説明を始めてくれた。
「なんか聞いたことありますね。2000年問題でしたっけ?コンピューターが止まっちゃうみたいな」
「特に問題はなかったらしいですけどね。2つ目のKが1000ならその前が何千の何を表すかでFなので4かなと思ったりもしたんですけど、それだとKの次のPがよくわからないなと思って。元の数字かって思ったわけです。あとは、Xが書けるの可能性もあるかと思っていたので
そうすると6kと 16×4」
ふむふむ とうなずく。本当にこの人は頭の起点が早い。
「そうすると、6000と64で6064になったんですよ。一つ目の候補ですよね。
最初これかなと思ったんですけど、なんか違う気がして。なんかこの数字も意味ある数字にしそうだなと思ったんですよね。今までの流れからして。
ここから数字を足すか、引くかするんじゃないかなと思って。。ここは、なんとなくの雰囲気です。今までの。TOKYOSが東京駅。Stationって確信できるのは、次に八重洲北口になりそうなものと組み合わせになるからみたいな。少し想像というか、ほかの月の結果を反映させてきていたからかな」
「その時、入力してくれたのって、ロッカー番号だけだったんで、入力した分引いてみました。 6064-505=5559。
なんか、よくわからない数字じゃないですか、一応、候補2。
ただ、2進数ってのが4月にあったので、もとになった101を引いてみると、6064-101=5963ですよ。」
「候補3ですね」と合わせると、
「いや、ビンゴですよ。ほかの2つはほぼ消えました。だって読み方かえたら、ゴクローサン(5963)ですよ。こんなめんどいこと考える人なら、この数字にしそうじゃないですか?。ダメだったらほかの二つを試すつもりでしたけど。」と、わかりやすく説明をしてくれた。
「あーたしかに。ご苦労さん(5963)ですね。何が何かわからず全然気づきませんでした。」途中経過はいまいちよくわからなかったが、最後の答えでしっくりきた。先輩がやりそうなネタだったからだ。
「あとはPC開いて、その中のファイルを見ると終わりですかね。今日終わらせられれば、先輩にこたえられそうですか?」と心配そうに聞いてきた。
「もしかして、手帳を持って行ってしまったことで責任感じていました?深見さんがいなかったら、まったく手も足も出ていないのでむしろこちらのほうこそありがとうございますです。」と、あたふたと答えると
好青年はニカっと笑い、「響さんって本当にいい人ですよね」と独り言のように話した。
いい人。よく言われる。
自分は、この「いい人」あまり、いい言葉じゃない気がしている。
そんな雰囲気が出ていたのか、深見さんは「もちろん、いい意味ですよ。」とフォローしてくれたが。。
「あなたは人をうまく巻き込める人なんだと思います。」とそんな分析を聞かせてくれた。
自分は、深見さんは天才なんじゃないかと思ってます。とは口には出せず、心の中で叫んで、トボトボとついていった。
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