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小説 万テチョライフでレベルアップ~よりそう Season2 ~ 30

たまたま入ったカフェで、結城さんのおじいさんとばったり会ってしまった。勢いで隣に座ることになったのだが。


「今日はお仕事ですか?」

コーヒーを待ってる間、出してくれたお水を飲んでいる時に話しかけてくれた。

「はい。実は、新しいプロジェクトにアサインされて。」

といったところで、
「あ、新規事業のメンバーに誘ってもらいまして」
と言い直してみる。アサインとか普通の人わからないよね。メンバーって結局英語入っているけど。

ふふっと笑った白髪のオールバックのおじいさん。

「お気遣いありがとうございます。」

そういって軽く頭を下げてくれる。

「結城さんは博識だから大丈夫ですよ。舶来の珈琲を日本に広めた第一人者なんですから」薬と笑いながら、そういう女性マスター。

「もしかしてお2人はお知り合いなんですか?」不思議に思って、聞いてみる。

きょとんとした感じで結城さんと少しの間見つめあったあと、うふふと笑うマスター。

「えー。実は私も結城さんの弟子の1人なんです。新田くんの姉弟子なんです。寺田と言います。
よろしくお願いします。」

といって深くお辞儀をしてくれた。一つ一つの動作がすてきな動き。

戸惑いながら、

「あ、あ、く、雲川龍馬と申します。
自、自分は新田さんの弟子見習いのような感じもしてる、サラリーマンです。お願いします。」

ジャズが流れるおしゃれな雰囲気には相応しくない音量とテンションで自己紹介をしてしまう。
周りの人もちらりと見て、若干引いているが、結城さんとマスターの寺田さんは少しびっくりしたようなそぶりの後、先ほどのような優しい顔で受け入れてくれた。

「実はですね。ちょうど新田くんの話をしたくて、今日は寺田さんのお店に来ていたんですよ。話したいこと話せたんでそろそろ帰ろうかという時にあなたが来てくれましてね。」と説明を加えてくれる結城さん。

「彼の家族の深い問題を解決してくれた本人に会えるなんて本当にびっくりしました。本当にありがとうございました。」

なぜか、寺田さんにも感謝される。

「いえ、本当にマスター、あ、マスターがたくさんいるんだ。

・・・新田さんには自分の方がお世話になっていて、少しでもお礼がしたくて。しどろもどろに話すと。

「えー。彼もそういっていました。」

「え?マスターが結城さんのところに?」驚いて聞き返す。

「多分、息子さんと仲直りしてすぐですよ。彼がすぐ私のところに来てくれて、あなたにとっても感謝していました。お礼してもしきれないって。」

その時の光景を思い返しているのだろう。少しうつむき加減に空になったカップを除きながら、かすかに微笑みが見える。

「今の雲川さんのお話を聞いて、二人がいい関係なんだなとわかりました。本当に良かった。」

「そうなんです。本当に新田さんと結城さんのお孫さんに会えたおかげで自分の人生は好転しました。」今度は自信をもって言えた。

びっくりした顔の二人。


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