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小説「よりそう~手帳と万年筆のちょっといいはなし~」第22話
いつもの青よりもちょっと赤みの入った紫っぽい色の文字。その色がペリカン万年筆らしい色ってどういうこと?
手作り小説の第22話です。 (初めから読みたい方は、第1話をご覧ください。前回のお話はこちらから。)
「ペリカンの万年筆が、赤が混ざったようなインクで書かれたメッセージが興味深いってどういうことですか?」
ぽかんとした自分の質問に、眼鏡をかけた女性はさきほどのおどけた感じではなく、やはり文房具のプロという顔に戻って説明をしてくれた。
「そうですね。ペリカンというブランドはご存じの通りドイツの万年筆なのですが、ブランドの基盤を作り上げたギュンダー・ワグナーという人がこの天冠のペリカンの模様を使うことに決めたといわれています。
ヨーロッパというか、キリスト教ではペリカンは自分の血を子供に分け与えたという言い伝えがあり、子孫への愛情が深い動物といわれていることから、ペリカンという鳥は大事にされてきました。そのペリカンをブランドに採用して、今に伝わっています。
実は、昔はペリカンの子供の数も多かったのですが、徐々に減ってきて、今は親と子1羽ずつになっています。でも、雲川さんのペリカンは子供が2匹いますよね。それがヴィンテージ感がすごくいいんですよね」
「親と子の絆。血を分け与えるほどの愛情のある鳥がペリカン。」
って、まさか、、この赤ぽいっていうのは。
「えぇ、ちょっと赤みがかっているのが、まさに親のような愛情のあふれた色だなぁと思って、ペリカン万年筆ぽくていいなぁと思いました。」
いい話のような、血って怖くないかと思うけど、と思っていたら
「血というと確かに怖いかもしれないですが、日本語って同音意義語ってあるじゃないですか、同じ音だけど意味が違うという。
血と知。
この万年筆は、先代の知恵を雲川さんにお伝えしようとしているかもしれませんよ。」
血じゃなくて知。知識。たしかに、この2日で、自分の時間についての考え方とか、大事にしたい価値観が見えてきた気がする。
「そういえば、個の万年筆を購入するときに、伽藍堂のマダムのひとに、個の万年筆の持ち主は非常に人格の素晴らしい御仁だったのですが、息子さんに送りたいと思っていた万年筆だったといっていたような気がする。」
「素敵な話ですね。その息子さんのかわりに、雲川さんにその愛情をわけてもらえているのかもしれないですよ。」
もし本当なら、すごい話だな。思いの込められた万年筆。少なくとも自分はこの万年筆のおかげで前に進めた気がする。そしてそれは、この手帳を買いに来て、目の前の結城さんに紹介された手帳。その結城さんも伽藍堂の眼鏡で自分にピッタリのものを教えてくれた。
いろんな奇跡のような人のつながりにここまできた気がする。
なんかちょっと感動した。
「ありがとうございます。この万年筆と手帳でもう少しいろいろ学んでみたいと思います。」
「はい、長く大事にお使いください。」
パスタ屋さんのスタッフが、湯気の立つスパゲティを運んできてくれている。
ペリカンの模様のお話は、ビックコミックス きまじめ姫と文房具王子1巻(作者、藤原鳴呼子さん)のお話を参考にさせていただきました。実はこの話を読んだこともM800を購入しようと思ったきっかけにもなっています。 自分の持っているペリカンの万年筆は子供1匹の模様ですが、調整をお願いしたフルハルターでは、2匹の子供のいるインクボトルが置いてあり非常に感動しました。
23話に続く。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。すこしでも気に入っていただけたら、続編を書くモチベーションになりますので、スキをお願いします。