小説 万テチョライフでレベルアップ~よりそう Season2 ~ 27
何気なく発した一言。キラリと光る万年筆のペンクリップと天冠を見ながら、
「物理の良いところって、なんか集中できることな気がするんですよ」
その言葉でみんなの視線が集まった。
「それかも。今の時代に必要なのは、デジタルと離れる時間。」東郷先輩がつぶやく。
「完全にシングルタスクに集中するてっことか」赤杉先輩も。
2人とも考え込み始めた。赤杉先輩は俯くように落とした視線で机の一点を見つめている。東郷先輩は後頭部に手を回し天井の照明を見つめながら。
出海部長は、微笑んでうなづいた。
「雲川のおかげで良いきっかけもらえたな。今の考えを持ったまま、そろそろまた少し歩こう。それぞれ考えたいことあると思うから各自しばらく自由に歩こうか。」そう言って伝票をもって支払いに向かう部長。
2人の先輩は支払いをしてくれている部長を待たずに、カバンを持ちそとへ歩き出している。
え、それでいいのと思いながら、カフェの外で部長を待つ俺。
お店から出てきた部長に、
「ごちそうさまでした」とお礼を述べる。これが社会人だろう。
「おう、2人は行ったか」嬉しそうに言う部長。
うれしいの?
「なかなか楽しい会だったな」と話しかけてくれる部長。
「そうですね。なんか俺変なこと言ってなかったですか?」
「なんでそう思う?」
「なんかチームがいきなりバラバラになったみたいで」
「確かに考えようによってはそう見えるかもな」ちょっとおかしそうに笑う部長。
「ま、仲良しグループじゃないから、大丈夫だ。みんな俺の思ってた以上にいい化学反応してるよ」今度は少しうれしそうな部長。部長ってこんなにわかりやすかったっけ?
「そ、そうですかね。」よくわからずに相槌を打つ。そんな俺を見て部長は、
「あの2人どう見てる?」と聞いてくれた。
「キャラは真逆ですけど、2人とも凄く優秀な先輩だと実感しています。二人とも情報の感度が高すぎるくらいで。」
「いい読みだ。あいつらは本当に優秀な2人だと俺も思っているよ。
だけどな、あいつらには火付け役が必要なんだよ。俺の見立てでは、お前のその能力はかなりすぐれているぞ。」
「えっ? 火付け役?」
「意図してるかどうかわからないが、お前の発言には何かしらのきっかけをくれるアイデアが出てくることが多い。入社前の面接の時からな。だけど最近は特にいい。その魔法の手帳と万年筆ゲットしてからか?」
そういえば、最終面接のときに部長いたかもしれない。だけど今はそれよりも。
「え、ええ.実はですね。」
そうして、文字通り魔法ともいえるこの万年筆の秘密を部長に話し始めるタイミングがやってきた。。