手帳ミステリー SOSEIの手帳5
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手帳ミステリー SOSEIの手帳4|Rukawa.Nagamasa (note.com)
Day3:深見蒼生
「トールのラテのお願いします」
2日前、プレゼンのために早く来た時よりも30分くらい前の7時をまわったころに到着した。開店したてなのか、まだ、人はまばらだ。
早く来た理由は一つ、間違って手帳を持って行ってしまった場所に手帳を置いて待っているためだ。
そもそも、手帳の持ち主が来てくれる確信はないのだが、可能性にかけるために最善を尽くそうと思って考えた結果である。
さて、来てくれますように。ミルクの泡がやさしい液体を飲みながら、自分の手帳で手帳タイムを始める。
8時を目前とするときタイミングで人がだんだん増え始めてきた。
それから5分ほどたった後、ふいに、
「すいません。その手帳についてお話を聞きたいのですが」と知らない男に声をかけられた。
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Day 5:響直人
「先輩の締め切りまで今日を入れて後3日。手帳見つからなかったらあきらめよう」家のこじんまりとした洗面台の鏡をみて自分に声をかける。
2日前と同じスーツを着て手帳が盗まれたスタバに向かう。
駅から歩いている時間、なんで警察に連絡しなかったんだろうかと自問自答した。
別に悪いことしていないし、普通に考えれば窃盗だろう。
たぶん、引っかかっていたのは、先輩からの宿題の出し方だ。
何か良くないことだったら先輩にも迷惑をかけてしまう。先輩に限ってそんなことはないはずだが、先輩に迷惑をかけたくなかったのだ。
というのはいいわけか、失敗したことを誰かに話したくなかっただけの気もする。
いつもは信じていない神様に、一応、お願いをしてスタバに入る。周りを見返す。
確か3日前、自分が場所をとるために手帳を置いた席。なぜ、先輩に言われた大事な手帳だけをそこにおいてしまったのか、悔やんだことは数知れず。
だけど、そこに今、座っている男性。見覚えのありそうな手帳を持っている。
意を決して声をかけに行く。泥棒って声を掛けたらいろいろ気まずくなりそうなので、まずは本人確認をしたほうがいいだろう
「すいません。その手帳についてお話を聞きたいのですが」と、手帳に何かをメモしているビジネスマン、紺のスーツに身を包んだ男に声をかけた。緊張がばれないようできるだけ冷静を装った声で。
「はい?」その男はなんだという顔で答える。
「2日前にその手帳と同じものが、このスタバのこの席で盗まれたのですが、何か知りませんか?」 周りには聞こえないように、できるだけ小声で話す。
相手はびっくりしたような顔になり、うつむいてしまった。犯人はこいつだ。だが、顔を上げて、まっすぐこちらを見つめ返して言い返してきた。
「もし、あなたが意図的にぬすんだとしたら、同じ場所に再度来店して、同じ席に座りますか?」思っていたより高い声が発せられた。
確かにそうだ。盗んだとしたら、戻ってくるわけない。だが、盗み否定しなかったということは・・・ そう考えていると。
「お話があります。田中一郎さん」彼はそう続けた。
「はい?誰ですか?田中って」きょとんと返す。
「あなたは田中さんではないのですか?」紺スーツの男性はなるほどという顔でそういうと、また何かを考えこんでしまった。
「すいません。少しお話をさせてほしいのですが、コーヒーをごちそうするので、ここに座って待っていてください。」相手が、立ち上がる。
「逃げませんよね?」一応、聞いてみる。これが演技だったら本当にすごい人だろう。
「逃げるなら、来てませんよ。」フッと笑ってレジに向かう。「ホットのラテでいいですか?」と確認を取ってから。
話がよくわからず、勧められた席で待つことにした。
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Day3→Day5: 深海蒼生
「2日前にその手帳と同じものが、このスタバのこの席で盗まれたのですが、何か知りませんか?」と、小声で話しかけられた。周りに聞こえないように気を使いつつ、逃がさんぞっっていう圧を感じる。
盗んだ。いやいや、間違いなんだけど。
同じもの置いておくあんたが悪い。と言いかけそうになったが、冷静を装いつつ、気持ちを落ち着けるために下を向く。万年筆を持っている手が震えている。だが、慣れ親しんだ茶色の縞を見ていると、少し落ち着いた。
ふぅと息を吐き、ここはちゃんと会話したほうがいいと思って、
「もし、あなたが意図的にぬすんだとしたら、同じ場所に再度来店して、同じ席に座りますか?」と返す。
勝手に持って行ってしまったので、盗んだといわれると、間違ってないので、わかってくれる人だといいのだが。
相手が少し止まったので、続ける。
「お話があります。田中一郎さん」
「はい? 誰ですか?田中って」戸惑いの返答。
「あなたは田中さんではないのですか?」
彼が田中さんではなさそうだ。謎を特別の人だった。北海道で事故死した田中さんは同一人物の可能性があるのだろうか。
「すいません。少しお話をさせてほしいのですが、コーヒーをごちそうするので、ここに座っていてください。」立ち上がりながら声をかける。この人とちゃんと話して、手帳の謎の話をしたい。
「逃げませんよね?」と返答。
まだ疑っているらしい。そりゃ否定していないもんな、おれ。
「逃げるなら、来てませんよ。ホットのラテでいいですか?」と確認を取ってまずコーヒーを買いに行く。
彼は勧めた席に座ってくれた。手帳に触るわけでもなく何かを考えている。置いてあるのは俺の手帳なので、中を見ても何もわからない。
初対面の感想として、彼は基本的にいい人そうだ。田中さんを直接はめるような人ではなさそうだし。若干下っ端感はあるから油断はできないが。。
しかし、昨日といた謎のほうが気になってしまって、そこから先の危険なんて考える余裕が今の俺にはなかった。
「もう一杯、ラテお願いします。トールサイズで」
仕上がるまで、カウンターの前で待っている。さて、今日確認したいことはさっき手帳に書いておいたことを思い返す。
・田中一郎、本人か? ⇒違った。
・田中一郎との関係は?
・この手帳は何か?
・なぜ、俺の手帳と瓜二つにして、俺の前に置いたのか?
・この手帳の謎は何のため?
・ロッカーを開けるSuicaを持っているか?
・今から行けるか?
よし、ダイジョブだ。
マグカップにはきれな葉のような真っ白な泡が浮き上がっているラテのカップを持って席に戻る。
どうぞと言って手渡すと、グレーのスーツの彼は「ありがとう」といって、受け取った。自分も席に座り、半分くらいに減った自分のラテを一口のみ、
「まずは自己紹介と弁解をさせてください。」そういうと、こくりとうなずく彼。改めてじっくり見ると、あまり髪型にはこだわりがなさそうで、ひげも朝剃った感じではなさそうな、比較的緩い感じの仕事をしてそうな人に見える。
「自分は深見といいます。そして、これは俺の手帳なんですが」といって、手帳を閉じて、ベルトをかけて机の上に立たせる。厚みのあるシステム手帳はそこにしっかりと立ち上がった。
「そして」そういいながら、リュックの中からもう一冊のそっくりの手帳を取り出す。相手もびっくりしているようだ。
「これが、たぶん、あなたが言う手帳です」といって、もう一冊の手帳を最初の手帳の横に立てる。
隣で何か勉強をしている男性もびっくりしたようにこちらをちらっと見て、やばそうな雰囲気を感じたのか、道具をしまい始めた。。。
怪しい会話しているもんな。
「なんで、こんなにそっくりなんですか?」申し訳なさそうに、彼は聞いてきた。
「むしろ、それは俺のほうが聞きたいです。2日前、仕事前にここで手帳タイムをした後に、トイレから戻った時、手帳が残っていたので、急いで入れて持って行ってしまいました。だって、手帳だけではなく、ペンやペンホルダーのリフィルまで同じって普通じゃありえないので、自分のだと疑いもせずに。気づいたのはその20分後くらいに会社でだったのですが、どうしても手が離せず、夕方、あらためてこちらに来たのですが、預かってもらうことなどはできず。。すいません。」と一気に話して、頭を下げる。
そして、先ほど机に出した新しい手帳を取り出し、表面のポケットに入っている名刺を出す。そこに含まれている、5枚の田中一郎の名刺をならべ、
「失礼ですが、手帳に所有者の情報がないかと思って、確認させてもらいました。同じ名刺が5枚。きっと本人のものに違いないと思って、田中さんと声をかけたんです。」
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手帳ミステリ SOSEIの手帳6|Rukawa.Nagamasa (note.com)
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