人工衛星の孤独
人工衛星ってとてもいいと思う。
いや、人工衛星と言うよりも、人工衛星をテーマにした作品が好きだなあと思う。
人工衛星というのは人間に似ている気がする。
だだっ広い宇宙で、地球の引力を頼りに闇を漂う。
広い地球で、中心に向かう引力の流れに逆らわず生活をする私達と同じだ。
ときどき同類とすれ違うけれど、時間が経てばゆっくりと離れていく。
ぶつかったら壊れるけれど、人工衛星は宇宙空間から、人類は陸の上から、逃れることはできない。
自分のことばで説明するには漠然としていてまだ難しい。
村上春樹が、大好きな小説「スプートニクの恋人」で人工衛星について話している部分が最高に孤独で、泣ける。
何度読んでも泣いている。
以下、引用。(引用しながらまた泣いとる)
「どうしてみんなこれほどまで孤独にならなくてはならないのだろう、ぼくはそう思った。どうしてそんなに孤独になる必要があるのだ。これだけ多くの人々がこの世界に生きていて、それぞれに他者の中になにかを求めあっていて、なのになぜ我々はここまで孤絶しなくてはならないのだ。何のために?この惑星は人々の寂寥を滋養として回転をつづけているのか。
(中略)
ぼくは眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯ひとつの絆として天空を通過しつづけているスプートニクの末裔のことを思った。彼らは孤独な金属の塊として、さえぎるものもない宇宙の暗幕の中でふとめぐり会い、すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。かわす言葉もなく、結ぶ約束もなく。」
『スプートニクの恋人』(村上春樹)
美しすぎる一節。
おしまい。