被写体 【#超短篇小説】
『被写体』
――――今から少し前。
お前を撮らせてくれ、と言われたときの写真が現像できたということで見せてもらった。
わざわざそんなことしなくても液晶越しでもいいのに、と言ったが聞かなかった。
いざ、ちょっと上質な用紙に現像されたものを出されると、すこし恥ずかしさのようなものが湧いてくる。
「我ながら、イイ出来だなぁ」
私が気もそぞろに写真を見つめている傍から、ひょっこりと顔を出すようにして自画自賛した。
「やっぱ、被写体がイイからだな」
「やめてよ。……キザったらしい」
ふと思い出したのは、風景写真を撮りに行くというので付いていった時に、彼がふとこぼすように言った言葉。
「でも、アンタの目からはそんな風に見えてるんだね。あたしって」
「ん? ああ、『ファインダー越しに見た景色は、写した人の心も写す』ってやつか?」
「そうそう」
「ん? もしかして、俺の愛が伝わった?」
「はいはい、言ってなさい」
「あっちゃー……、まだまだ足りないか」
「そうね。まぁ、ガンバりなさい」
極めるには道は遠いなぁ、なんてつぶやきながらも、まだいくつか現像したものを持ってくる。
ほんとは、そんなこともないんだけど。
でも、ちょっとだけ、言ってみたいことはある。
「あたしなら、もっとイイ感じに撮れると思うけどね。アンタを」
「……そりゃあ、自撮りするよりは誰かが撮った方が巧く撮れるだろー」
「……ばーか」
あとがき
肝心なところでニブチン。
お後がよろしいようで。
※どこがだ
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