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げんきをだして 〜「好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇集」〜

『げんきをだして』


 

  

 なんだか、今日はとくにいそがしそうに出ていった。

 お勤めはボクの方が遅いので、たいていは見送る役目。

 いってらっしゃいの声は届いただろうか。

 せめて、できる限り、今夜はゆっくりできるようにしてあげよう。

 

  

              ○

 

 

 もう真夜中。

 1日は短い。

 小さな足音。

 間違いない。

 帰ってきた。

 いつもやさしいあなたに、今日はちょっとだけサプライズをあげる。

 目の前の扉が開いた瞬間に、『おかえり』っていうんだ。

 あとは……。

 ちょっと恥ずかしいけど。


『あなたの笑顔をもっと見れたらうれしい』って、言おう。


 

 
              ○

              ○

 

 

「ただいまー……」

「にゃー」

「あれ? お出迎え?」


 いつもはこの時間なら寝ているはずなのに、どうしたんだろう。

 何かあったのかな。


「……みゃん」

「……」


 ひとなきして、そのまま、じーーーーーっ、と見つめられる。

 見つめ合う。

 なんとなく楽しくて、愛おしくなった。


「……ただいま」

「んみゃ」


 おかえり、って言ってくれたのかな。

 でも、なぜだかそれ以外にも言葉が聞こえたような気がした。


 

 

あとがき

 今日はちょっと久々に、カクヨムさんでアップしている「好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇集」から1本ご紹介。

 個人的に気に入っている1本です。

 たまには、ヒト以外が主人公でもいいじゃないの。

 ということで、ちょっとハートが暖かくなる感じのお話でした。

 
 

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御子柴 流歌
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