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その先で、ふたりが聴く音 かつり、こつ。こつり、かつん――。 わずかにタイミングが合わないボクらの靴音が深夜の街に響いて、日付変更線を越えるよりもはるかに早く、再び落ちてくる。 だけどそれは相見えることは無くって、落ちて転がって背を向け合っていた。 終電にはまだ時間があるとはいえ、残された時間はそれほど多くない。 夏純《かすみ》は少しだけ気怠そうに闇を横目に見ていた。 隣を歩く夏純との約束を果たすためには、どの辺りで口を開けば良いのだろうか。 昔の彼女に
プロローグ: さながらUTOPIA(ただし続けるとは言ってない) 経年的な老朽化が見えながらも、整備はしっかりと行き届いている関節を、それでもギリギリと言わせながら飼い主の傍らを歩く『犬』。 そんな犬に向かって、シリコンカバーを付けてもらっている『犬』が吠えかけている。 天気も良い昼間の公園は、いつにも増して騒がしいように見える。 不思議に思ったが、よく考えればノイズキャンセリング機能が全開になっていた。 いつもの癖だった。 さすがに外でこれはマズいの
『マーガレットの悪夢』 「好き、嫌い……。好き、嫌い……。好き、嫌い……」 「……」 「好き、嫌い……。好き!! ボクのこと、好きなんでしょ!?」 「……いや。その結果が出るまで花をむしり続けるようなオトナは、ちょっと」 「そんな!」 「っていうか、ふつうマーガレットの花びらって奇数枚なんだけど。そんなに偶数のモノばっかり見つけるっていう、アンタの運の悪さもどうかと」 「それはさすがに理不尽!」 「それはアンタに毟られ続けた花のセリフだわ!」 あとがき い