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#01 YOASOBI ミスター|原作小説『私だけの所有者』

4名の直木賞作家さんが書き下ろした“はじめて〇〇したときに読む物語”
文学アンソロジー×小説を音楽にするユニット・YOASOBIのコラボプロジェクトの第1弾。

こんにちは!アンドロイドのように従順に生きている、るかと申します。

2月16日にリリースされたYOASOBIの新曲 「ミスター」と原作小説「私だけの所有者」についての記事になります。


|| 小説を音楽にするYOASOBIの魅力 ||

YOASOBIコンポーザーAyaseさんが作る楽曲は、考察系なんですよね。歌詞の中にギミック満載!

例えば、

ボカロPとして制作された「ラストリゾート」、これは英語圏では医学用語でもあり、「最終手段」という意味で使われます(医者から言われたらアウトなワードだよ💉)

アニメ「BEASTARS ビースターズ」が原作の「優しい彗星」
大正ロマンスが原作の「大正浪漫」
などなど。

新曲が出るたびに、今回の曲はどの部分に遊び心が盛り込まれているのだろう?と考察しながら聴くのが毎回楽しい。

原作⇒Ayaseさんが作る音楽に隠された謎解きとしても、聴き応えがあるのです。

|| 新曲:ミスター ||

私の場合は、まず先に楽曲のほうから聞かせて頂きました。

第一印象は、音が徐々に近づいてくる感覚のデジタルなイントロから、急に鮮明な曲調になり、心が躍るようなポップなコーラス展開を経て、後半切ないメロディーへと変化する、抜群の強弱をつけたストーリー展開だった。

この流れはきっと、主人公の「はじめて」の感情とリンクしているんだろうな。とすぐにピンときたが、後半のikuraさんの切ない感情を強調させた歌声を聴くと、それだけで胸が張り裂けそうで、小説を読むのが怖くなるほどだった。

悲しい結末確定

|| 原作:私だけの所有者 ||

当初、「はじめて人を好きになる」というモチーフの小説のタイトルに「所有者」という文字が入ることに、違和感を感じていた。

所有者という言葉が持つイメージ=自由に使える権利。

なぜこんなタイトルを?の答えは、小説の中にあるのだが、このタイトルは完璧な「伏線」だった。

「私だけの所有者」はサイエンスフィクション(SF)で、主人公は、未成年のアンドロイド🤖。所有者ミスターからの指示に絶対服従なアンドロイドの「はじめて」の物語だった。

小説は、アンドロイド目線で進んでいくのですが、なんといっても人間と人工知能の世界観に惹き込まれる物語。

あらかじめプログラミングされた人工知能の中に、ミスターとの共同生活の中で学習したことを、機械としてしっかりと覚えて、淡々と実行処理する、とっても従順で健気なストーリー。

そして、捻りのきいたラスト

アンドロイド目線で、淡々とストーリーが進んでいるように見せかけて、実は最初のページから伏線があり、読み進めていくたびに伏線を回収していっていたわけだ!と驚くラスト。さすが直木賞作家!

最初のページから、文字というスクリプト(言語)を通して、自分もアンドロイドのように小説に情報操作されているマリオネットだった!??

と思ってしまうほど、ストーリー展開が巧妙だった🔥🔥

そんな小説でした。

|| 小説から音楽へ ||

アンドロイドの言葉で語られる愛。
愛という感情は、生モノだと思った。
そのときは、温かみのあるものだけど、過去のものになると、プログラミング言語で淡々と語られるような冷たさを感じるストーリー

心情とはある程度距離を置いた「ロボット」としての作風により、人間との愛の温度差がより強調される。そこが、小説の狙い目だと思った。

YOASOBI

Ayaseさんが初音ミクというボーカロイドで楽曲を作り、
ikuraさんが生の声で歌う

このアンドロイドの恋愛を描いた小説は、ボーカロイドで作った曲に人間の感情を乗せるYOASOBIの制作スタイルそのものだと思った。

実際に、虚構性の強い小説を読んだあとで、YOASOBIの明るい曲調のミスターを聴くと、

小説では淡々と語られていた人工知能の「好き」という気持ち。アンドロイドでは言葉と感情で表現しきれなかった痛々しいほどの健気な心が、ikuraさんのボーカルに乗ってダイレクトに伝わってきて、思わず涙が。。。

Ayaseさんがポップに曲を仕上げてくれたおかげで、
温かみのある言葉で感情表現できる人間ってなんて素晴らしいんだろう!と、当たり前のように享受していた有難さも、音楽を通して再認識できた。

小説を音楽にする。

アンドロイド小説が生み出す空気感と、音楽が生み出す温かい雰囲気の組み合わせで、また違った解釈ができる面白さを味わった、今回の新曲。

次の新曲も、めちゃくちゃ楽しみにしております!またレビューも投稿させて頂く予定。


では、またね♪



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