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はるるん、インドに染まる

ハルのインド生活については、きちんと整理して文章にしよう・・・と思っていたのに、とにかく毎日のように胸がドキュンドキュンすることが起こるので、予定を変更してとりあえずのメモ書きとしてここに記録していくことにする。

パミさんのマッサージ

まずは、ハルがインドのお家でどんなふうに過ごしているかのご紹介。

我が家をサポートしてくれることになったメイドさん(パミさん)に、なるべく早くハルに慣れてもらおうと、こちらにきてすぐにハルの情報をノートに英語でまとめ、日本で理学療法士さんに作ってもらったホームエクササイズを英訳し、時間ができたら体操したりマッサージしたりしてあげてねとお願いした。

ちなみに英語を読み書きしてしかも話せるメイドさんはとてもありがたい存在だ。思っていた以上にみんなヒンディー語なのだ。基本ヒンディー語。運転手さんもネットの工事も水道の修理も牛乳の配達も、おにーさんたちみんなヒンディー語。ティケ、ティケ、アチャー。キャ?それしか聞き取れない私は、とりあえずヒンディー語に出会ったら何も言わずにメイドさんにバトンを渡します。パミさんありがとう。英語を操れるメイドさんもそんなに多くないようですが、その話はまた別の機会に。

とにかくそんなよくできたパミさんに、ハルのお世話をお願いしてみたところ、「オイルマッサージしないの?」と聞いてきた。

??別にエステじゃないからいらないんだけど・・・と思っていると、パミさん、こんんな話をしてくれた。

「私の甥っ子が脳性麻痺で、ハルみたいな感じで歩けなかったの。でも2歳くらいから毎日3回ダバラルオイルでマッサージしていたら5歳になったら歩けるようになったの。だからハルにもそのオイルでマッサージしてあげたらいいと思う。今は特別支援学校に歩いて通っているわ。言葉はうまく話せないけどコミュニケーションもできるようになったのよ。」

そして自信たっぷりに言った。

「I think she can walk(ハルは歩けるようになると思うわ。)」

パミさんは翌日さっそくダバラルオイルというベビーオイルを買ってきて、マッサージをしてみせた。アーユルベーダ由来のポピュラーなオイルらしく、ハルのような子に限らず、ベビーにはそのオイルでマッサージをするのがごく普通のことらしい。パミさんが買ってきたオイルのボトルには、骨と筋肉を強くする、と書かれていた。

パミさんは、足の付け根から指先まで、優しく、でもしっかり刺激をあたえ、お腹も、そしてハルが苦手なはずのうつ伏せもサクッとなんなくクリアして、背中も入念にマッサージしてくれていた。側で見ていると、日本で理学療法士さんに教えてもらっていた要素がたくさん詰まっているようだった。アーユルベーダがなんぞやを理解するにはまだまだ時間がかかりそうだけれど、少なくとも彼女のマッサージはとても理にかなっていて、科学に裏付けされた理学療法のやり方と親和性があるように感じた。

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「She can walk」

なによりもパミさんの力強い一言がとても心強くて、科学的にとか医学的にとか一旦忘れて、インドに来たのだからインドのやり方で、はるかを見守ってみよう、それでこそインドに来た意味があるというものだろう、という気持ちにさせてくれた。

インド料理を楽しむハル

インドにきたらハルはいじめられるのではないか、障害を拒絶されるのではないか、とビクビクしていたのが馬鹿らしくなった。パミさんは自分の子供を扱うように愛おしそうにはるかを撫で、大事に接してくれた。

そのせいなのか、日本では実の祖父母でさえはるかに食事を与えることができなかった(ハルは自分の両親以外から食べ物を食べることがなかなか難しい)し、保育園に通っていたときも先生がご飯をあげられるようになるまで3ヶ月程度かかっていたのに、なんとパミさんは3日目にしておやつを難なくあげられるようになり、10日後には私が不在の間にサクッとお昼ご飯を完食させてくれていた!incredible!! amazing!! パミさんあっぱれ。

食事といえば、インドの多くの人はベジタリアンである。同じ家族でも娘は肉を食べ、親はベジとか、本当に個人個人で様々だけれど、日本のように毎食何が何でも肉や魚がないと、という感じではないようだ。お肉を売っている場所もあまり多くない。そのかわり豆や穀類をたくさん食べる。それでもはるかにはタンパク質をしっかり食べさせたいので、できるだけ肉や豆の料理が必要であることをパミさんに話すと、

「そうね、プロテインは大事だわ。そうそう、ハルに食べさせたい食べ物があるの、今度作ってあげる」

そう言って料理してくれたのはダリアと呼ばれる穀物だった。そこらへんのどんな小さなお店にもおいてあるようなかなりポピュラーな食べ物らしい。すりおろした人参やいんげんや玉ねぎと一緒に煮込んで塩やスパイスで味をつけるのが一般的な食べ方だという。ダリアはあらびきの小麦のことで、アフリカ地方でクスクスと呼ばれるものと同じもののよう。タンパク質を多く含んでいて、インドでは健康に良いと広く知られているらしい。ダリアのパンなんかも売られていた。実際とても優しい味わいが美味しく、私も1歳半のレンチビもすっかりファンになり、よくお昼ご飯にパミさんに調理してもらっている。

インドの障害児

1日三回アーユルベーダ由来のマッサージをうけ、ダリアをたべ、カレーのお気に入りはもちろんダル、おやつにはキールとセワイをペロッと平らげる。もしかしたら我が家で最もインドに染まっているのがハルかもしれない。

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余談だが、我が家に住み込みのトライアルで来てくれていたメイドさん、ソニちゃんもこんな話をしていた。

「私の弟がお母さんのお腹にいるときに、お母さんが転んでしまい、弟は7ヶ月でとても小さく生まれて、それからしばらく寝たきりだったの。だけど、ダバラルオイルでマッサージしてたら4歳で歩けるようになって、今は超健康なの、私よりおっきいよ!」

出た出た。まじかよ!

そもそもインドってそんなに脳性麻痺の子いるのか、という驚きがあった。日本にいたときにネットでいろいろ検索したけどほとんど情報が見つからなかったから正直ほとんどいないんじゃないかと思っていた。というのも、インドでは周産期の医療や小児の医療が不十分で、出産や小児にまつわる大きな病気や怪我を救うことができず、たえばはるかのような子は助からずに亡くなってしまうことがほとんどなのではないかと勝手に想像していたのだ。インドごめん。

やっぱり来てみないとわからないことばかりである。

少なくともハルは、インドにきて、かわいがってもらえる人に出会えて幸せだ。

「massage is a power and energy!」

ソニちゃんも笑顔でいっていた。想像以上にアーユルベーダとマッサージが浸透していたインドに、ハルはどっぷりつかっていくのである。

(つづく)



 

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