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ツイステッド建築美術〜ガーゴイル研究会入会レポート〜
「ゴシック様式」
それは建物を通して「神秘」を見るべく発展したものであり。「ガーゴイル」はその守護者。
そう。これは「神」を暴く技術とはいわば真逆
「神」が宿る空間を創造する技術である。
※ATTENTION
こちらは「ツイステッドワンダーランド」の考察となります。よってメインストーリーやイベントのネタバレがあります。ご注意ください。
今回は「ガーゴイル研究会」の衣装が来る記念であるためマレウス様及び「グロマス」周りを軸に実在すり。建築様式の歴史を掘り下げていきます。
「ゴシック」という言葉の定義に関するややこしさはこちらにまとめましたので先じてお読み頂けたら幸いです。今回は無論グロマス側の話です。
ゴシック進化前…「ロマネスク」に至る流れ
さて、ご存知の方も多いかもしれませんが「ゴシック様式」は突然生まれたわけではありません。
あれは進化後の姿です。
進化前の形態として「ロマネスク建築」と呼ばれる様式があります。という訳でまずは「ロマネスク建築が生まれた経緯をお話出来ればとおもいます。
時を遡るほど約1000年。キリスト教があまりに絶大すぎる権力を持っていた時代。
この頃ヨーロッパではある物が盛んになっておりました。そう「十字軍遠征」です。
この「十字軍遠征」大義名分がエルサレム奪還であったため東に遠征しまくったのですが…その時あるものを見てとんでもない衝撃を受けてしまいます。
東方にある「ビザンチン建築」です。
というのも当時、古代ローマ文明が断絶して早数百年の西ヨーロッパに対し、古代ローマからある程度技術を受け継いだ東ヨーロッパやトルコ近辺はかなり発展している土地でした。
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ツイステだとこの辺りの文化影響がガッツリ入ってるのはそれこそスカラビア周りでしょう。
…正確にいうならスカラビア周りは「イスラム様式」なのですが「イスラム様式」は「ビザンチン様式」を吸収し、発展していったためかなり近い部分があるのです。
って話がそれた。
いずれにせよこの頃、十字軍遠征を皮切りにこういった東方の技術や文化に触れる機会が増えたこと、他農業発展による生活基盤の安定化等色々な理由がありヨーロッパで聖地巡礼ブームが起こり、街道整備が一気に進みだしました。
(上のサイトは十字軍ルート。実は十字軍ってかなりの比率で巡礼者もいたんだとか。)
さて、ここまで長いルートを歩むとなると当然街道沿いに宿場町が必要となります。
そこで、ある時は宗教施設、ある時は市役所、ある時は裁判所、ある時は宿泊施設、ある時は権威の象徴等…とにかく多目的な利用が出来る教会建設が施政者達の中でブームになり始めるのです。
いわば日本だと四国八十八箇所の巡礼各所に宿坊付き寺院が設けられてるのに近い感じですね。
この最初の教会建設ブームあたりに作られた建築や美術を「ロマネスク様式」というのです。
ロマネスク建築の問題
さて、このロマネスク様式はある問題を抱えておりました。
とてつもなく。暗い。
…というのも何せ舞台は文明断絶が起きて早数百年な状態の北西ヨーロッパ。建築様式の確立はおろか、石造建築の技術がようやく再確立したぞという状態。
そのため壁や柱を分厚くさせざるを得ず、窓も小さくなってしまう。結構高さは出せるようになったけれどまだまだ屋根周りが不安定等、ロマネスク建築はどうしても暗くなってしまう。という宿命を抱えていたんですね。
しかし、教会は元来神のお教えを尊び布教する場所であり通称「神の家」
神の威厳のためにもこの「暗い」という状態はどうにか解決したいものでした。
ましてやキリスト教は「神の復活」を「朝日の出」に見出していたのだから尚更です。
こうして教会建築はいかに光を礼拝堂内に取り込めるかという議題のもと技術発展していきやがてゴシック建築へ至るのですが…
神を見出す為、あるいは求心力の為だったのもあるのでしょう。
「ロマネスク建築」から「ゴシック建築」への進化はかなり力技なものとなったのです。
ゴシック建築の進化。
「神」は「光」に宿るということなのか。
「光」というものにとてつもない神秘を見出した結果、「ゴシック建築」はいかに光を取り込むかという観点で発展していくことになります。
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まず一つ目は窓の形状変化
丸いカマボコ形から尖頭アーチとなることで開口部にかかる荷重を減らせたことでより長く窓を取れるようになります。
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次に天井周りの発展。リヴ・ヴォールトという骨組みを軸に天井を作る技術が確立したことで天井の軽量化と安定度、施工性が高くなりました。
尖頭アーチの窓との合わせ技で壁で支える構造→細かい柱で支える構造となったことで壁の強度をガチガチにしなくて良くなり、建築物も高くできるようになります。
ただこの形状。とにかく窓を支える細い柱に荷重を乗っけまくる仕様だったため真面目に組むととにかく柱が太くなるのですが…こっからが力技です。
柱で支え切れないなら見せる支柱を作ってしまえばいいじゃない!
って感じで建築物を支えるための飛び梁「フライング・バッドレス」をもうけたのです。
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(上のは日本科学未来館にて現在行われているノートルダム大聖堂展にて触れる模型として出ていたミニチュアです。)
これも全ては神(光)をよりたくさん取り込み神秘的かつ魅力的な内部空間を作る為…!
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そんなかんなで開口部を取る上での制約を極限まで減らしたゴシック建築は、とにかく開口部を大きく長く、美しいステンドグラスを嵌め込んだ神秘的な空間を作れるかを軸に発展していきます。
そして、内部を支える為に必要な飛び梁や、どうしても太くなってしまう柱をなんとか美しく見せるべく壁や柱、梁。ありとあらゆる所をとにかく彫刻しまくることでゴツさを護摩化…げふんげふん。
より人々を圧倒し、神の偉大さを感じられるような佇まいになっていきます。まさに神(光)のためなら何だって厭わない合理性と力技の究極形…それがゴシック建築なのです。
ガーゴイルとは
ゴシック建築の力技は何も技術だけの話ではありませんでした。
布教のため、求心力のためと華やかになっていった装飾はやがて元来のキリスト教とは関係ない。地に根差した野花やケルト文化、ありとあらゆるものを取り入れていきます。
大衆に親しみを持ってもらおうと貪欲に、よりエンターテイメントに特化した華やかな建物を…
こういった中で生まれたものがそう
「ガーゴイル」です。
ゴシック建築以前の教会建築に雨樋はありませんでした。
しかし、神(光)を求めより高く、より壮大にと発展していったゴシック建築は屋根も急勾配。結果雨水が建物を傷つけてしまうようになります。
そこで建物に被害が及ばないよう外へ水を排出する機構としてガーゴイルが取り付けられるようになります。
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(オレンジの丸部分がガーゴイルで水色が雨水の流れです先程出てたフライング・バッドレスを利用したルートになってますね。)
まさに「神の家」が傷つかないように守っているのですね。他にも名称の由来がノートルダム大聖堂付近にあった「ガルクイユ」というドラゴンの逸話を取り込んだ上で建物の守り神として据えた…という話等含めまさにゴシック建築ならではの「魅せる構造」の代表だと感じます。
まとめ。
・ゴシック様式は光に神秘を見出した結果開口部を大きく長く取り入れるべく発展した様式である。
・そのため「フライングバッドレス」等、外付けの支えが必要となり、そういった構造物美しく魅せるべく彫刻技術が発展していった。
・ガーゴイルは高く急勾配になった屋根を伝う雨から建築物を守るべく生まれた守護神。
ゴシック建築で発展した建築、彫刻技術を象徴するような存在である。
以上です。
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こうやって見ていくとまさにガーゴイルは「神の家」を守る守護者…マレウス様はガーゴイルというものを自身を守り寄り添ってくれる存在として見てる節がありそうだなと感じます。
ちなみにディアソムニア寮ははちょうどロマネスク→ゴシックへの過渡期っぽい作りだなと感じてます。ここら辺はドイツのにあるマウルブロン修道院あたりすごく近いと感じたのでこちらに。
ちょうど内装にゴシック様式取り入れつつ外観はわりかしロマネスク寄りみたいな感じです。
所在地が「黒い森」地方なの含めて何だかロマンを感る…!
載せ切れなかった参考
こちらのサイトがヴォールトやアーチ等、ゴシック様式の具体事例が沢山出ているかつ分かりやすくて面白いです。
また今東京でやってるノートルダム大聖堂展!どうやって作られたか。どうやって修復したか色々描かれてて楽しかったので是非!
おまけ
そういやマレウス様のパソスト改めて読んでたらガーゴイル周りで面白い話しておりますね。
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「校舎の歴史に対し新しいガーゴイルが多い」
というのも、ゴシック建築の代名詞たる「ノートルダム大聖堂」フランス革命時にかなり壊された後小説「ノートルダムの鐘」が大流行→時代のゴシック復興ブームも相まって修復されたのですが…
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その修復時に雨樋の役割をしていない怪物像が沢山増えたという経緯があるのです。いわばマレウス様のいう「グロテスク」がこれにあたりますね。
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それこそディズニー版「ノートルダムの鐘」に出てくるガーゴイル達はどちらかというとこちらの19世紀に増えた石像モチーフのちため雨樋構造があるのを見る前までマレウス様が「違う」って感じてしまってたのかもしれません。
「ゴシック・リヴァイヴァル」ブームがおきてたころ取り付けられた石像が雨樋になってないってのは割りかしあるあるなのです。
にしても学校に後々、ガーゴイルを取り付けた人…何者なんですかねぇ…?(すっとぼけ)
以上。「ガーゴイル研究会入会レポート」でした。