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特別公開された廃校・旧増毛小学校に行ってきた

北海道の増毛ましけ町にある旧・増毛小学校の校舎は、昭和11年の建築。
道内に現存する2階建ての木造校舎としては最古かつ最大とも言われ、「北海道遺産」に選定されています。

耐震構造の都合から常時展示にはできず、普段は立ち入り禁止になっているけど、6〜9月の日曜日のみ特別公開されています。

正面玄関側の廊下
職員室がそのままスタッフルームに使われていた
トラス構造が見事な体育館

一番の見どころは巨大な体育館。
柱のない大きな空間を支えるために、三角形を基本とした集合体で支えるトラス構造となっています。
雪の多い地域の学校は自ずと体育館が大きく作られるそうです。

吊り下げられたコラム型スピーカー
校歌がかけられた額
学校の体育館で張り出し式のステージは初めてみたかもしれない

体育館のステージは、一般的には劇場のようなプロセニアム(額縁)型だが、ここは珍しい張り出し型のステージ。
奥の壁面にあるのは、元々は御真影を飾るための奉掲所だったらしい。

今年から公開された御真影を飾っていた場所

戦後は板で埋められ、その前に黒幕を垂らして見えないようにされてあったが、昨年板を取り外し、今年から公開されている。
終戦後、ほとんどの奉掲所は取り壊され、戦後に建てられた建築物には存在しない場所。板張りされていたおかげで綺麗に保存されている。

道内で2番目に古いグランドピアノ

北海道では2番目に導入されたヤマハ製グランドピアノも現存。廃校になってから一度も調律はされていないが、見学者は自由に弾くことができる。
微妙なピッチのずれや音のかすれ具合が体育館の響きと合わさり、歴史を感じさせる独特の音色が鳴る。

白鍵は象牙、黒鍵は黒檀という最高級仕様
特徴的なバットレス構造
外壁のバットレスから伸びる支柱

外観の特徴である三角の壁は、バットレス(控壁)という建築構造で、
校舎にかかる負荷を支える役割を担っている。巨大な天井と雪の重みにも耐えるための工夫なのでしょう。

かすかに読める「Indoor Gymnasium」の文字

「運動場」と書かれた札の下にある木に、かすかに「Indoor Gymnasium」と書かれているのが見える。
これは、かつてGHQがこの場所を使用していた時代の名残だそうです。

入り口とは反対側の廊下は、天井が古い材料のまま
かつての教室もそのまま
当時の小学生が作ったであろう増毛の地図。留萌へ行く汽車はもう存在しない
理科準備室。古い実験器具が並ぶ。黄色とピンクに塗られたひきだしがかわいい
放送室には比較的新しい、が昭和の時代の機材が残る。レコードも現役で使われていた模様
肝試し大会ではクライマックスになるであろう保健室の彼

毎年夏には、この校舎を使った肝試しイベントが開催される。
貴重な校舎だけに、廃校になってからも取り壊さず、
地域振興に再利用しようとクラファンを募り、傷んだ天井や床などを補修して、なんとか限定公開できるところまでこぎつけたそうです。

保健室も比較的新しかった
昭和30年ごろのヤマハ製の足踏みオルガン
音色切り替えも豊富で、当時としてはかなり高級品だったと思われる
改装されていない方の古い教室に残るストーブ
残っていた古い机や椅子も展示されている。この教室は床も張り替えていないので古いまま
給食室と音楽室に続く廊下。校舎は中庭を囲むロの字型になっている

校舎は中庭を囲むロの字型をしており、廊下は4本伸びている。
今ではこの長い廊下を利用して「雑巾掛け選手権」が開催されています。
個人戦と、4人チームで校舎を一周する団体戦もあるらしい。

手すりを滑り降りるこども対策のガードがついている階段
階段を上がった先にある広いスペース。休み時間に子供が集まりそうな空間
倉庫でひっそりと、肝試し大会まで出番を待っている彼
多数ある黒板は、黒板アートなど、それぞれ個性的な使われ方をしていた

「群来休み」という聞きなれない言葉。
群来くき」とはニシンの大群が産卵のために押し寄せて、放出された白子の色で海が白濁する現象のこと。群来が発生すると子供も駆り出されたという、ニシン漁で栄えた増毛ならではの休講理由。

このような立派な校舎が建てられたのも、かつて増毛がニシン漁で栄えた証のひとつなのでしょう。

中庭から

見応えたっぷりで、2時間くらい校舎をぐるぐる何周もしてました。

見学できる日は限られているけど、機会があればぜひ。


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