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論文のシン・参考文献・注|AI時代に対応した学術論文の記載

日本大学理工学部建築学科都市計画研究室(泉山ゼミ)では、学生たちとともに日々研究活動に取り組んでいます。その中で、学術論文の執筆における「参考文献」と「注」の在り方について新たな考え方に気づきました。この「シン・参考文献」と「シン・注」をここで整理し、論文執筆に役立てていただければと思います。


オンラインジャーナル化の進展と論文引用数の重要性

オンラインジャーナル化が論文の閲覧性を向上

近年、国内の審査付き学術論文もオンラインジャーナル化が進み、論文の閲覧性が飛躍的に向上しました。オンライン上で参考文献がリンクされ、研究者同士の引用関係が可視化されるようになり、論文の影響力が数値として分かりやすく示されるようになりました。

論文引用数が研究者や学術誌の価値を決定

この可視化により、論文引用数が評価指標として注目を集めています。特に、世界大学ランキングでは引用数が大学の評価に直結しており、研究者にとっても論文がどれだけ引用されるかが重要視されています。加えて、インパクトファクター(IF)を基準とする国際学術誌では、高引用数が学術誌の価値を高める要因となっています。


AI時代に対応した学術論文の記載

AIが自動収集するデータに最適化する必要性

Google ScholarやResearchmapなど、AIが論文情報を自動収集する仕組みが普及しつつあります。これにより、論文の記載が正確でAIに認識されやすい形式であることが求められるようになりました。こうした背景から、新しい記載の指針「シン・参考文献」と「シン・注」を提案します。


シン・参考文献:重要な文献に絞った記載

参考文献の基本は知っている人には言わずもがなですが、初学者にとってはルールが難しいので、まとめておきます。

正確に参考文献を記載するのはまずは基本になります。 参考文献の記載方法は、学術論文誌の応募要項や執筆要項、大学内であれば、そのルールに従うのが基本です。微妙にそれぞれルールが異なるのがカオスで、掲載論文によって異なる記載方法のため、間違いやすいポイントです。
一般的には、
・著者、(発行年)、「論文タイトル」、掲載誌、巻、号、pp.XX-XX になります。
・ページ数は、28ページから34ページの場合、pp.28-34と記載するのが一般的です。ここが慣れないポイントですよね。
ちなみに、何ページを引用した、という場合は、文献のみ参考文献に記載し、注に記載するのが良いです。
書籍の場合は、 著者編著、(発行年)、「タイトル」、出版社 が一般的です。 編著や著者が多い場合は、「XXほか」とすると良いです。

学術論文と書籍に限定するメリット

「シン・参考文献」では、記載対象を学術論文と書籍に限定します。このアプローチには以下の利点があります。

  1. 重要な文献が簡潔に示される
    学術論文と書籍に絞ることで、リストが簡潔になり、読者が必要な情報を素早く把握できます。

  2. AIの自動収集との親和性
    AIが自動収集する対象は主に学術論文と書籍であり、それ以外の形式を排除することで収集エラーを防ぐことができます。

  3. 論文執筆の効率化
    既往研究や書籍が序盤で主に使われるため、参考文献番号が整理しやすく、執筆作業が効率的になります。


国の政策資料やWEBサイトは注に回す

参考文献を学術論文や書籍といった重要な文献に限定するため、国の政策資料やWEBサイトなどの情報は注に記載するのが適切です。この手法には以下のメリットがあります。

参考文献の整理とAI対応

参考文献を重要な文献に集約することで、論文の質が向上するだけでなく、AIの自動収集で情報が的確に扱われます。J-STAGEや海外ジャーナルでも、収集の対象は学術論文と書籍が中心であり、それ以外の情報を参考文献に含めるとエラーが発生しやすくなるためです。

応募要項との整合性

国の政策資料やWEBサイトは、論文集によっては重要度が低い場合、注に記載するよう求められることもあります。そのため、これらの情報を注に回すことで、参考文献がより重要な情報に限定され、読者が重要な文献を見つけやすくなります。

注としての情報の位置づけ

政策資料やWEBサイトは根拠を示す重要な情報である一方で、学術論文や書籍ほどの学術的厳密性を求められないこともあります。この点を考慮し、注として記載することが望ましい示し方といえるでしょう。


シン・注:本文の補足とエビデンス提示

注の役割を再定義

「シン・注」では、以下の役割を明確化します。

  • 本文の補足説明を提供する

  • 論文の主張を支えるエビデンスを示す

  • 文献やデータの出所を明示する

短縮URLと情報の効率化

注にURLを記載する場合、短縮URLを使用することで誌面を効率化します。また、政策資料や公式ウェブサイトといった一次情報は、参考文献ではなく注に記載することで、本文の流れをよりスムーズにします。

例:
https://x.gd/dVyUn


論文執筆を変える新たな指針

「シン・参考文献」と「シン・注」を導入することで、論文はより簡潔でわかりやすくなり、執筆プロセスも効率化されます。この新しい指針を泉山ゼミで実践し、多くの研究者に共有していきたいと考えています。これが、皆さんの論文執筆をサポートする一助となれば幸いです。


以上が、「シン・参考文献」と「シン・注」の提案です。ぜひ、この新たなアプローチを取り入れてみてください!

このような論文や研究室のTipsは、以下のマガジン、「都市系研究室のTips」に束ねていますので、ご覧ください。

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