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変な音 心霊体験②
心霊体験というか変な話のNOTEは脳死で書けるので好きです。
前のはこちら↓
変な音
高校生の頃(だいぶ前)、首無し地蔵と呼ばれてる心霊スポットの噂を聞きつけて、暇つぶしがてら友人たちと肝試しに行った際の話。
スポットとしては、竹林の中にひっそりと地蔵群がある変な場所。窓にベニヤ板が打ち付けられてる部屋がいくつか見える寂れた団地の脇から竹林に入る小道があって、その小道からさらに横に逸れた一見気づかないような脇道の奥の、とにかく人の立ち入らなそうなひっそりとした場所にある。そこに地蔵が百体くらいあって、その中には首のない地蔵もいくつかある。なにか曰くがあったような気もするけど全然思い出せない。
深夜3時頃だったと思う。現地に着いてしばらく地蔵の付近を散策したものの、自分も含め鈍感な連中がほとんどなので首無し地蔵を見ても何も感じず、悪態をついていた。ただ一人だけまともかつ感性の鋭い友人(Mとする)がいて、他の友人が地蔵のまわりの枝とかを蹴って掃ってるのをやめたほうが良いとたしなめてた。しかし他の友人は何も感じないまま、とうとう地蔵まで蹴り始めるんじゃないかというときにMが突然「うおっ!」と叫び、帰ろうと言い始めた。その勢いに切迫さがあったのと、みんなも既に飽き始めていたらしくMの言うとおり竹林から出ることにした。Mは落ち着かない感じで、とりあえず竹林を出たら説明すると言っていた。
竹林を出て少し歩くと公園があったのでそこに腰を落ち着け、Mになにかあったのか聞いてみた。
Mが言うには、竹林に入ってからずっと誰かに見られてる感じがしていたらしく、「うおっ!」って叫んだのは耳元で変な音を聞いたせいだったらしい。なんでみんなあんなデカい音聞こえなかったの!?と言われたけど誰も聞こえてなかった。どんな音だったのか聞くとMがそれを真似て言う。
「ギュッ・・!」
活字にするとなんか抱きしめてるようで間抜けな感じがする。けど「グッ・・!」に近いような実際聞くとMの普段の声とは印象の違う、圧のある声だった。Mが言うには怒りを噛み殺して歯を食いしばったけどそれでも漏れてきた嫌な声、みたいな感じだったらしい。それが自分のすぐ近くで鳴ったと。
不思議なことで、Mが「ギュッ!」と口真似した瞬間から、樹の葉っぱが風で擦れる音や遠くの車の音が消えて公園が一気に静かになって、どこかから誰かに見られてるような変な気配を感じた。これは俺含む鈍感な友人も何人か感じたらしい。そこでも何も感じない友人もいたので強い。
まじか・・・やべえやん、という空気に一瞬なったものの音も気配も少しすると元通りになって、その後は何もなく帰路につき、当初の肝試しの目的の達成を感じ満足してその日は解散した。
すでに首無し地蔵に行ったことすら忘れかけてた数日後、Mの家に遊びに行くとMの顔色がとにかく悪い。話を聞くと、どうも首無し地蔵に行った日から霊が部屋に現れるらしい。毎回同じ霊ではないらしく、勉強机の椅子の隙間を指さして「昨日の夜はこのすき間から緑色の赤ちゃんがずっと見てきた」と言っていた。当時の自分は今よりさらにアホだったので、「Mがなんか珍しい体験してる!羨ましい!」としか考えてなく、まじか大変だねーくらいの会話で終わらせていた気がする。その後も会うたびにMはどんどん痩せこけて不健康になっていったけど、なぜかそれに慣れてしまって特に話題にしなかった(今考えると本当に薄情な人間だ)。半年くらい経つといつの間にか霊は現れなくなったらしくすぐに元気になっていったので良かったけど。
それからまた2、3年くらい経って、Mと夜中に近所を散歩しているときに、首無し地蔵の話題がでた。あんときはMが一番地蔵に気を遣ってあんまり暴れんなよみたいに他の人を止めてたのにMだけ憑りつかれちゃって理不尽だったねーみたいなことを話してたと思う。それから、俺はMが「ギュッ!」って口真似をした瞬間にまわりが静かになったときのことを思い出し、自分も会話の流れでふと「ギュッ!」と声に出した。
たまたま近所の神社のそばの林みたいなところを歩いている途中だったが、自分の口真似の瞬間にまた音が静かになって林からたくさんの目線のような気配を感じた。音はなくなったのにざわざわする。Mを見るとMもそれを感じたみたいで、すぐに散歩ルートを街の方に引き返した。
それからさらに数年後、全く関係のない会社の後輩と焼肉屋で焼肉を食べているときにこの話をした。そのときも冗談っぽく「ギュッ!」と口真似をしたところ、焼肉屋の店内が一瞬静かになって何人かのお客さんがこっちをチラ見してきた。かなり小声で真似たので音量で振り返ったわけではないと思う。ほどなくまた騒がしくなってこっちを見る人はいなくなったけど、後輩は、あ、これまじのやつですねと、ニヤニヤしていた。
終わりに
悪いことした人じゃなくて同情した人に被害が出るケースはなんかいいですよね。(超自然的な現象は人の考える善悪とは関係ないのだ・・・ニチャア)
それよりも「ギュッ」の口真似のパワーが気になる。あまり良いものではないのだろうけど。憑りつかれてもない人が言っても周りに影響力があるっぽいのすごい。ちなみに口真似をしても毎回何か起こるわけじゃなくて不発だったときもある。試行回数が少ないからなんとも言えないけど、気持ちの入り方の問題か?
しばらくこの話はしていないので、今度また夜の散歩中にでも呟いてみたい。