声
中学生の頃、声が出なくなった。
何を言っても否定される環境にいたから。自分の声に対する心無い言葉を浴びたから。
それから口数は減っていったし、大きな声が出なくなった。学校では大きな声を出せと言われる機会が多いから苦しんだ。なぜかできてしまう人は、なぜかできない人の気持ちが分からない。
今でも、自分の感情がちゃんと相手に伝わっているか不安になる。貰ったやさしさを返せているのか。無愛想に見えているんじゃないか。自信がなくなって、余計に不審な人間にみえてるんだろうな。
そんな僕の話を、何も言わず待っていてくれる人がいた。嬉しかった。でもきっと違和感は感じたよね。あれは自分なりに、あなたと丁寧に向き合っている時間なんだと思ってくれたら嬉しいな。
いつからだったか、夏が近づくと、下を向いて歩くようになった。足元の虫を踏みつけないためだったと思う。ちいさな声とか聞こえない声を、なかったことにはしたくない。
普通じゃないことは生きづらいけれど、そういう苦しみが、誰かの弱さに寄り添える強さになっている。あなたが「やさしい」って言ってくれたからそう思えたよ。