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ベイビー能シアター『羽衣』 観劇ルポ

正月ボケを引きずり、働きたくないよォ寒いよォと泣き言ばかりの1月の頃、
そんなしょぼくれた気分を一掃すべく(?)ベイビーシアターの観劇へ!

ベイビーシアターは大人と赤ちゃん(0歳〜2歳)が一緒に楽しむことのできる舞台芸術で、演劇の歴史の中では比較的新しいジャンルになるのですが、実は調べてみると全国各地で様々な団体が上演を行なっているんです!(と控えめに宣伝などしてみる)

ところで我が家の息子はもうすぐ3歳ということで対象年齢ギリギリ。最初に参加したのは0歳5ヶ月、『水の駅』が初めてでした。それからもう…2年?!と驚くとともに、2回目にしてこれが最後のベイビーシアターであろう、という寂しさも抱えつつ、いざ出発です!

前回の観劇感想はこちら!↓

上演時間が11時からだったので、朝ごはんを済ませてから夫も連れてみんなで移動。『水の駅』の時は午後からだったのもあり、朝寝させねば!とか色々出かけ前の準備でワタワタしていたけど、2歳後半にもなるとオムツさえ無事ならなんとかなる!、とあの頃より遥かにフッ軽になりました。子も親も成長している……はず。

前日から「明日は能を見に行くよ〜」と伝えていましたが、もちろん息子は「???」という感じ。そう、今回は何を隠そう「ベイビー能シアター」という名前の通り、ベイビーシアターで能が見られるのです!

興味はあるけど未だ生の能を見に行ったことのない私。ベイビーシアターで鑑賞できるなら息子も参加できて一石二鳥だウヒヒ、と思った部分もあります。しかも天女役で金剛流能楽師の方がキャスティングされていると知り、
そりゃ楽しみだあ!と小躍りしちゃいますね。

着いた!


いつものように会場に着くとまず事前ワークショップのためのスペースに案内されます。ここでは常駐スタッフや周辺設備の説明、お話の解説や観劇に際しての準備運動(?)などが行われます。後から痛感することですが、ここで手元の資料や口頭でお話の解説をサッと聞けるのがとってもありがたい!

普通の舞台であれば「そりゃネタバレじゃないか」ってなるのですが、いざ舞台が始まるとやっぱり良い面でもちょっと悪い面でも我が子の動きが気になっちゃうもので、最初から最後までしっかり内容を見続けられるか…というと微妙なのです。(←あくまで私の場合ですよ!)

ただそのためにスタッフさんたちがいるし、そもそもベイビーシアターは泣いても走ってもなんでもオッケー!、とオープンな場であることは大前提ですよ!

しかしながら私の豆腐メンタルがやはり邪魔をする…そんな時に事前に劇の流れが分かっていると、「今はこれだ」「これからこうなるぞ」と予想が付くので、やや自分が注意力散漫でも置いてけぼりにならないのです。

会場の近くにはオムツ替えスペースと授乳室があり、
上演中でも作品の雰囲気を感じつつ利用できる優しさ!


まあそんなわけで開演です!
(どんなわけだ)

ワークショップが終わると参加者全員で舞台の中へぞろぞろと移動するのですが、この瞬間はなんだかいつも新鮮で心がフワッと浮つく楽しさがあります。座席に座ってから正面の舞台の幕が上がるのもドキドキするもんですが、座席のない開かれた空間に導かれ、自ら異世界に入り込んでいくのもオツなもんです。抱っこしていた息子も「なんだろな〜」と不思議そうな表情でした。

会場に入ると、白を基調に四角で囲われた舞台が登場。実は私たち、能舞台で言う「橋掛り」を歩いてきたようです!(役者が能で出入りしてるとこです←なんと雑な説明か)恥ずかしながら公演後に気づきましたが、なんと会場全体の構造が能舞台に沿って作られていたのでした。さすがベイビー能シアター!!

というわけで舞台をぐるっと囲むように参加者で円を描いて座り、『羽衣』が始まります。三味線の音が聞こえると「おっ」と興味を持った息子でしたが、すぐに舞台装飾の布を剥がす遊びへ…。おいおい…と注意しつつも、スタッフの方も頃会いを見て危なそうな場合はやんわり止めてくれます。

ちなみにこうした行動が絶対ダメ!とならないのは、子供たちのどんな反応も含めてそれがベイビーシアター、何でも触っていいんだよベイベー(←花輪クン風に)だからなのです。

とにかく何でもいいのさ、この空間に一緒にいることがすべて!

みたいなでっかい愛みたいなものに包まれている感じで、それはそれとしてお話は進みます。

漁師役のダンサーさんが歩き回る子供たちに絶対ぶつからない妙技と、能楽師さんと踊っていても違和感がないのにしかしアクティブで現代的な感じもする動き、みたいな融合が凄かったです。(相変わらず自分に語彙がなくて口惜しい。)

セリフはほとんど能のセリフっぽい感じだったのもあり、全て分かります!とまではいかないものの、事前説明はもちろん元々有名なお話でもあるので、羽衣を拾ったり返すの渋ったり渡したり…と動きで内容がだいたい分かるので大変ありがたかったです。

家では言葉が出まくる息子、出先ではいくら語りかけても基本的に無口なのですが、途中(か最後)に演者さんが去っていく時、「戻ってったー」と小さくコメントしていました。0歳で『水の駅』に参加した時は抱っこ紐の中からじっと眺めているだけだった息子。お芝居を見てコメントができるなんて凄いなあ。こんな風に子供と一緒に思い出を刻めるのもベイビーシアターならではです。

劇中、要所要所で子供たちが「おっ」となる演出が散りばめられており、その度に自分の子や他の子たちが「なんじゃ!」と反応するのを見るのも一つの醍醐味。

特に今回の上演回では、舞台中央でも人の隙間でも所構わず移動する強者がおり、演者と演者の間にスッと立った時には、あたかも「あなたが…天人ですか?」と漁師と一緒に天女に問いかけているような風格を醸し出しており、とっても微笑ましかったです。

クライマックスでは全員でとある演出を行う場面があるのですが、息子もそれっぽく参加していて、会場全体が「なんか良かったねーー!」みたいな素敵な空気に包まれ、舞台は無事に終了しました。

終演後は記念撮影もOKで、なんと劇中で演奏されていた三味線も触らせてもらいました!(感謝です!)日頃から100均のギターのオモチャで遊んでいたおかげか、弦をベベン!と上手いこと弾いてちょっと得意気な息子でした。

ということで息子にとっては最後のベイビーシアターになりますが、むしろ大きくなったらまた観客として訪れてもいいよな、ていうかまず私も大人だけで見に行ってもいいよな(←大人単体の観劇も可!)、と今後も新しい作品を楽しみにしつつ、ベイビーシアターがより多くの人たちに届くといいな〜と様々な余韻を引きずりつつまた日常へと帰るのでした。

ベイビー能シアター『羽衣』、素敵な体験をありがとうございました!

終演後は帰るのが名残惜しい。。


そういえば天女の羽衣をファサ〜っと靡かせた時、お香のような良い匂いがしていたのが印象的。まさに五感で感じるってやつですね!ではまた!!



【公演概要】
BEBERICA theatre company
あかちゃんとおとなのためのベイビー能シアター『羽衣』
期間:2025年1月10日(金)〜1月12日(日)
会場:ロームシアター京都 ノースホール
詳細:https://www.beberica.com/show/index.html

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