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(エッセイ)女子ラグビーを題材にしたエンタメ作品を


 そろそろ誕生してもよいのではないだろうか。プロ野球チップスのトップリーグ版「トップリーグチップス」の話ではない。
 僕が切望しているのは、女子ラグビーを扱ったエンタメ作品の登場だ。

 テレビドラマでもいいし、映画でもいい。アニメでもいいし、小説でもいい。それでもダメなら、コボちゃん風の四コマ漫画でもいい。
 とにかく女子ラグビーを逆噴射でエンタメ界の中心まで押し出すような、魂の震える“熱い”作品を待ち望んでいる。
 
 ストーリーならすでにある。
「バスケ、陸上、柔道、ハンドボール…。さまざまな競技に打ち込んでいた個性的な少女たちが、それぞれの事情からラグビーに転向。オリンピックでのメダル獲得を目指し、凸凹チームが大奮闘。ラグビーはもちろん、恋にもオシャレにも全力の“ラガール”たちが贈る、この夏イチバンの青春ストーリー。どっちに転ぶか予測不能?! 楕円球のようなジェットコースターストーリーがついに誕生。ちょっぴり涙も出るけれど、あたしがんばるー」
 これである。

 お気づきと思うが、この筋立ては女子ラグビーの現状そのものだ。中村選手(元バスケ)など女子日本代表にも転向してきた選手は多い。女子ラグビーの現状がすでに一級品の素材であり、「ストーリーならすでにある」のである。

「さまざまな前歴を持つ個性派集団が、大義のもとに大同団結する―」
 いま女子ラグビーでノンフィクションとして進行しているこの事態は、古今東西の物語にみられる“大王道”のテーマである。
 たとえば、映画『七人の侍』は、野武士の襲撃から貧村を守るため、個性豊かな七人の侍が立ち上がる物語だ。
 中国の小説『水滸伝』は、梁山泊に集まった108人の豪傑が、官軍打倒のために結束する物語。
 そしてご存じ、アニメ『ドキドキ!プリキュア』は悪の枢軸「ジコチュー」打倒のため、我らが5人のプリキュアが奮闘する物語だった。類似の構造を持つ作品は数え切れないのだ。

 ほかの素材としては、たとえばルーツ校・慶應大学に女子ラグビー部が誕生すれば、それだけで舞台設定として秀逸だ。
 煽り立てるメディア。OB会の反発。人気に嫉妬する女子マネ。「男子部員をたぶらかしている」と怪文書を流す教育ママ…。
 物語要素ならいくらでも思いつきそうだ。物語のゴールは、女子初の大学公式戦出場、選手権優勝という目標の達成。
 そしてもちろん、恋の成就である。

 実写作品であれば、恋の相手は櫻井翔さん(正SH役)で決まりだろう。「たった一人の女子部員」を演じる主演女優は、現状では広瀬すずクン(BUBUKA風)だろうか。ポジションがフロントローなら綾瀬はるかクンが適任かもしれない。イメージにピッタリなのは井上真央クンだ。

 脇役も考えてみよう。
 監督役には文句なしで時任三郎だろう。グラウンドを見つめる謎の紳士役には要潤。ヒロインに精神攻撃を繰り返すセレブママ役には萬田久子。OB会長役には梅宮辰夫。世界を7日間で壊滅させた巨人役には和田アキ子。グラウンドに乱入する全裸男役には要潤。
 そしてヒロインの父親役には山下真司。

 我々はどこかで『第2のスクール☆ウォーズ』の幻影を追い求めているのかもしれない。監督が泣きながら愛の鉄拳をくらわし、監督と選手が熱い抱擁を交わす。しかし「1億総PTA状態」となった現代日本では、ネットを中心にロシアンフックのような反発をくらうだろう。再現は容易ではなさそうだ。

 それにリメイクが元祖の愛着に勝つことは難しい。その証拠に、別の「スクールウォーズ」(HERO/2004年)は、ごく一部のファンの間でなかったことになっている。

 そうであれば、今後は女子ラグビーという新大陸で「新たな元祖」に懸けてみるのはどうだろうか?

(僕もさっそく女子ラグビー部を舞台にしたオリジナル脚本にとりかかるつもりだ。その内容は「たった一人の男子部員」として女子ラグビー部に入ることになった男子高校生〈主人公〉が、着替え中の部室に入ってキャーと言われたりするような物語、である)
 

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