”フットボール”でより効果的で正確なキックを蹴るには
今回は、フットボールにおけるキック(キッキング)について書いていきたい
特にサッカー、ラグビー、アメフトを中心に自らの考察を展開しますので、そうじゃないよ!とか、こんなこともあるよ!って方は、どんどん情報ください!
私が今までの経験と知見からキックというプレーの動作と効率的(確実なキック方法で)で生産性(飛距離があって、正確な)の高いキックにするための自論を展開するので、しばしお付き合いください
なぜ『キック』という動作なのか?
まずは超個人的な話になるが、中学校までサッカー小僧でいつも「キャプテン翼」のようなかっこいい強いシュートが打ちたいと思っていたので、自分流に考え、学んでいた
football(フットボール)と言われるくらいなので、基本ルールとして「足」を使用した「キック」がメインプレーとなる競技であり、キックの正確性や効力は非常に重要なファクターになるのは言うまでもない
高校からはラグビーを始め、190cm/100kgはそのままフォワード(No8)だったが、ラグビーにおけるキックはだいたいバックスが蹴るのでフォワード選手は蹴ることがなかったが、私はサッカー部時代のスキルを生かし、プレースキックやタッチキックなども担当していた
現代のラグビーにおいて「キック」は戦術的に多用されるようになり、海外ではキックだけを専門的に教えてキッキングコーチもいるほどだ
日本では、近年アジア初のキッキングコーチとなり、全国でラグビーのキックをコーチングしているJapan Elite Kicking(#JEK)の君島氏の活躍は有名だ
コーチ業になってからは高校生や大学生に「キック」を教える立場になり、理論的に、具体的に伝えられるようキックを学んだ。その中で映像を用いた動作分析も行い、キックフォームの改善も行った
また、高校生から好きで見ていたアメリカンフットボール
趣味でXリーグを観戦に行ったりもしていたが、「キック」を専門としてスペシャルチームがいるくらいで、キックの重要性が勝敗のキーを握る
だから国内にもキックを専門にしたJapan Kicking Academyなる組織があるようで国内のアメフト選手にキックを伝授しているようだ
このように私は football という競技に関わりだしてから、キックというプレーに大きな魅力を感じていたからだ
どうやったらキャプテン翼のようなシュート(キック)が蹴れるのか?
私のキックへの原点は小学校から始めたサッカーでのこの思いからだ!
どうやったらカッコよくて、強いシュートが蹴れ、点を取れるのか。
そこで街の本屋で購入した本がこれだ!
『攻撃サッカー 技術と練習法 (釜本 邦茂 著)』
釜本 邦茂 氏をご存知だろうか?
日本のサッカーを語るに外せないキーマンだ!
この著書の中に「強烈なインステップキックは腰でけれ」という頁があり、その中に「キックを蹴る上での極意」が記載されている
シュートは強烈なほど良い。強烈なシュートは足の甲であるインステップで蹴る。立ち足を蹴る方向に向け、蹴り足を鋭いバックスイングからまっすぐ膝から下を振り下ろす。
ペレ(サッカーの神様)は、初心者に「立ち足の方が、蹴り足よりも大切だ」と口癖のように伝えていた。
クラマーさん(日本サッカーの父)は、立ち足を「ボールの真横に踏み込め」と教えてくれた。
しかし、私の足は26.5cmの大きな足なので、ボールの中心を足の甲で蹴ろうとすると地面を蹴飛ばしてしまう。なので、工夫して立ち足をボールよりわずかに後方に置くことにした
引用:『攻撃サッカー 技術と練習法 (釜本 邦茂 著)』
キックにおいて、立ち足(今でいう軸足)の踏み込む位置や方向、蹴り足のバックスイングからの振り下ろしも大切なファクターだが、注目して欲しいのは、足のサイズが26.5cmだとまっすぐ足を振り下ろした際にインステップがボールの中心に当たらないということだ
現代の選手なら26.5cmなんて普通サイズで、28.0cm以上を大きいというのではないか。つまり、現代のほとんどの選手は何かしらの工夫をしないと強烈なキックが蹴れないことが伺える。(まして30cmの私は...)
アディダスのスパイクを履いていた釜本氏
サッカー選手にとってスパイクは非常に大事なツールの1つであるが、釜本氏にはあまり関係なかったとご本人もインタビューで答えている
つまり釜本氏は立ち足の位置や腰の重心など「キックをする」という動作を非常に大切にしていたようだ
実際 私自身は立ち足を少し下げ、立ち足を軸にした場合に体をグラウンドに対して少し寝かせるように斜めから入り、足の甲を斜め〜横になるような向きで足首を固定してキックをしていた
まさにそれを言語化、根拠をもって証明してくれているのが下記サイトだ
みなさんのキック方法はどうだろうか?
さらに、下記サイトではインステップで強烈なキックを蹴るための体幹の傾けや蹴り足にエネルギーを伝達させるための捻転と蹴り足側の股関節の捻転などにも触れらている
あくまでもサッカーボールを蹴る際の動作解析となるが、「キック」という動作を理解する上で非常に参考になる
実は楕円という特殊な形をしたラグビーボールを蹴る動作解析資料もあるので、気になる方はぜひご購読いただきたい
『ラグビープレースキックのバイオメカニクス』
いずれにしても「バイオメカニクス」の観点からキックの動作解析について掲載されており、特にキックを教える立場になった者には非常に学びになる
これであなたも効率的で生産性の高いキックが蹴れるキッカーになれるのではないか
そうも簡単に行かないのが人間のカラダである
上記バイオメカニクスにも掲載されている通り、キックをするには体幹や股関節などの捻転が発生し、そのエネルギーを足先まで運んで来れれば強烈なキックを蹴ることができるとなっている
しかし、その捻転をコントロールすることが難しいのである
捻転させたエネルギーにより、例えばカラダが違う方向を向いてしまったり、上体を反りすぎたり、足首を固定できずに正確なキックを蹴れなくなるのである
もちろん正確なキック動作の再現性を高くするためにトレーニングを重ね、できるようにすることはプレーヤーのすべきことではある
そこでより効率よく再現性の高いキックをするには、前記したサッカーの釜本氏のキック理論に戻る
釜本氏は、ボールに対してまっすぐ走り込み、立ち足をボールより少し後方に置き、腰を押し出すようにまっすぐ足を振り上げて蹴ることで、地を這うような強烈なシュートが打てたのだという
おわかりだろう?
カラダの捻転もほぼなく、蹴りたい方向にすべてのエネルギーをまっすぐボールに伝えることで、正確で強くて飛距離のあるキックが蹴れるのである
NFL最高のキッカー『トム・デンプシー』
実際 その理論ですばらしいキッカーになったプレーヤーがいる
それはアメリカの4大スポーツであるNFLのアメリカンフットボールプレーヤーで、43年にわたってリーグのフィールドゴール記録を保持していた『トム・デンプシー』である。
残念ながら先月4日(4/4/2020)に新型コロナウィルスに感染し、亡くなってしまった
デンプシーは、生まれつき利き足の右つま先がなく右手に障がいがあり、特別なスパイクを履いて、スペシャルチームのキッカーとしていくつもキックを成功してきた(下記画像を見ていただければわかる)
彼がなぜこのようなキッカーになれたのか?
正確で飛距離のあるキックが蹴れるすばらしいキッカーだったからだ!
そのキック方法がまさに釜本氏と同様のスタイルなのである
デンプシーは足の障がいをハンデとせず、むしろ自分の強みとして、確実に右脚をまっすぐに振り上げ、つま先のない足で確実にボールを捉え、きれいに一直線に伸びる、飛距離のあるキックを蹴れたのだ
障がいではあったが、彼の足だったからこそのキックフォームであり、それ故の記録でもある。その裏に相当なトレーニングがあったことには言うまでもない
ただし、現在もすばらしいキッカーはいるが、ほぼ足のサイズ等を考慮した斜め横からボールにコミットしていく上記バイオメカニクスに記載されている捻転を利用したキックになっている
捻転を利用して正確なキックを蹴るには
カラダや関節の捻転を利用したことで、そのエネルギーをボールに伝えることはできるが、やはりそこは人間なので、ブレることもある。ラグビーにおいても各国代表のキッカーでさえ、成功率は良くて85%前後だ
現代人のサイズでは、到底蹴り足をまっすぐに振り上げるのは困難であろう。だから捻転が発生するキックをすることは仕方のないことだ
その中でも蹴ったボールの軌道をまっすぐにするには、なるべくボールを蹴った後の蹴り足を進行方向にそのまま重心移動をさせながら運ぶことだ
以前ベースボールマガジン社が発刊した「ラグビークリニック」というラグビー雑誌でプレイスキックが取り上げられたことがあった。おそらく2008年1月号 か 2009年12月号 だと思われるが、キックを蹴る際の蹴り足の軌道について触れられていた
バックスイング〜インパクトまでの軌道は同じだが、インパクト後の蹴り足の軌道に違いが明確に出るという。その違いを下記図で示した
右図の軌道で蹴った方がブレが少なく、正確なキックが蹴れるという理論だ。もちろん左図の軌道が悪いという事ではない。ただし、蹴り足の軌道をまっすぐにしてあげるだけで、ボールと目的に対してまっすぐな力を加えることができるので正確なキックを蹴ることができる。かつ、ボールと蹴り足の接地時間が長くなることから、物理的な話になるが飛距離も少し長くなるのではないか。自分にあった蹴り方で、結果「スコア」につながれば何も問題はないが、何にするにしても初期の動作ベースを覚えるには、関節や動きに逆らわず、まずはまっすぐにやってみる事がいいのではないだろうか
足という武器
サッカーのプロプレーヤーなどがあたかもボールを手で扱うかのごとく、足でボールをコントロールする映像を見たことがあるだろう
しかし、手の感覚に勝りはしないであろう。だからこそ、キッカーである以上、足の感覚には注意を払っておきたい
怪我をせず、フィットしたスパイクを履くことが大切である
そんな中、またNFLのアメリカンフットボールプレーヤーで名キッカーだった『マイク・ランスフォード』を紹介したい
彼はプレースキックを蹴るキッカーだったが、足の感覚を大事にしたいとのことで、利き足である右脚にはスパイクを履かず、裸足なのである
Barefoot Kickerと言われ、過去に2〜3人はいたらしいが、いかにもアメフトらしい
でも 俺だけキッカーとして自分の足と感覚を大事にしていたのでしょう
人間の能力は意外と敏感でもある
自分のカラダのサイズは、意外と脳が記憶し、それを行動の一つひとつに反映しているのではないか
サッカー界では元サッカープレーヤーで、現在は事業家の「ヒデ」こと 中田英寿 は、小さい頃からスパイクを履いてサッカーボールを蹴っても足が痛いということで、ソックスを2重にして履いていたと聞く
なので、選ぶスパイクも普通のサイズよりソックス分少々大きいサイズを履いているようで、脳が把握している本来のつま先よりスパイクが大きくなっているため、芝生を蹴るようなキックミスをすることがあったという
ということで最後は余談ではあるものの
フットボールにおけるキックについて、正確なキックを蹴るヒントになれば嬉しく思う
が・・・バイメカのマスターもドクターも取得していない、ただの元アナリストによる自論なので、そこはご容赦ください