見出し画像

【考察】織重夕の過去と選曲に込められた意図『見えなかった星』

こんにちは、Rudyといいます。
映画『数分間のエールを』に朝屋彼方と共にW主人公の一人として描かれる、織重夕の過去や心情を中心に考察してみました。

織重夕の過去

ここでは織重夕が作った100曲のうち、劇中歌として登場する『未明』『ビオトープ』『ある呪文』に加え、サウンドトラックに収録されている『ナイト・アンド・ダーク』『アイデンティ』の作成時期について考察していきます。

曲が作られた時期

作中で描かれているのは大学在籍時→卒業ライブ(22歳)→現在(公式設定で24歳)であり、公開されている曲のうち『ビオトープ』以外は卒業ライブから『未明』を作るまでの1年半〜2年の間だと思われます。

未明

作中でも述べられている通り、『未明』は織重夕が作った100曲の最後の曲です。この曲は、彼女にとっての終わりの曲、一区切りの曲であり、いままでの自分や作品にかけた時間などを無駄じゃなかったと肯定する、作中で描かれている通りのものだと思います。詳しい解説は作中で十分に描かれているので省略します。

ビオトープ

他の4曲とは違い、卒業ライブで歌唱したこの曲は大学在籍時に作れらた曲です。ただ、歌詞を見てみると音楽で生活をしていくことに対しての心情が大きく描かれている気がします。
“「迷ってない」なんて嘘だ ホントは震えてるんだ 誰にも言えないでいた 弱いまま” という歌詞を見ると、音楽の道で生活をしていくことに対して家族から反対されていること、そしてそれを受け入れて悩んでいることを感じ取れます。
しかし“狡くてもいい 身勝手でいい 私という主観が全てだ”という歌詞を見ると、自分は音楽の道で生きていくという意志が見えます。

ある呪文

この曲はライブハウスで歌唱していた曲です。恐らく大学卒業後に作られた曲ですが、大学卒業後の1年半〜2年の中でかなり序盤のほうに作られた曲だと思います。
未練がましい その喧しい心が マシに見えるのに 変わりたいの?おめでたいね 女々しいのは無礼講でいこう断ったんでしょ 捨てたんでしょ 他人の値付けなんて”などという歌詞から反対意見を押し切って音楽の道に進むと決意した自分を奮い立たせているように思えます。
この頃はまだ音楽の道で生きていくという意志を強く持っていた時期なのではないかと思われるので比較的序盤に作られた曲ではないかと推測します。


アイデンティ

この曲は『ある呪文』より少し経った頃に制作された曲だと推測します。
サビで“さよなら私のアイデンティ”と何度も歌っていることから純粋に自分の作りたい曲や自分のしたいことなど、理想と現実が離れていくことに対して葛藤している様子が伺えます。
しかし、“いまさら後には引けないんだ”という歌詞がついていることから、まだ音楽の道で生きていくことを諦めるわけにはいかないという気持ちも残っているように感じられます。
音楽の道で生きていくことの厳しさをかなり感じて焦っているような心情が伺えます。

ナイト・アンド・ダーク

この曲は織重夕が作った曲の中でもかなり暗い内容となっています。
“幸せな夢を見ていたんだ 現実はゼロなんで脇に置いたままでいいよ”という歌詞から、自分の目指していた音楽の世界はとても険しい道で簡単なものではないことをかなり実感していたのだと思います。
“そのままでいいんだと君は言うんだ 本当にそうだっけ ?が浮かんで僕は悩んだ”や“慣れて無感情になってしまうほどにギリギリを歩いていた 本当に息をしていた?”という歌詞を見ると、上手く行かない現実への焦燥感でかなり憔悴している気がします。
最後に作られた『未明』より少し前の、かなり終盤の辺りで制作された曲なのではないかと推測します。

私の推測では曲の制作順の時系列は『ビオトープ』→『ある呪文』→『アイデンティ』→『ナイト・アンド・ダーク』→『未明』の順だと思います。

ライブハウスでの選曲について

朝屋彼方にちゃんと歌を聞かせたいという気持ちでライブハウスでの歌唱を決意した織重夕が選曲したのは『未明』と『ある呪文』でした。
では、何故この2曲が選ばれたのか、彼女の心境を紐解いていこうと思います。

未明

この曲は外崎大輔が朝屋彼方に説明した通り、「織重夕にとっての終わりの曲」です。
彼女がこの曲を制作した経緯を振り返ると、音楽の道を反対する家族に対して「この曲が駄目なら諦める」と言っています。つまりこの曲は彼女にとって最後の希望でした。
業界のプロデューサーなどから声をかけられたりすることはありませんでしたが、路上で歌っているときに朝屋彼方の目に留まり、MVを作らせてほしいと懇願されることになります。
この曲を選んだ理由はシンプルで、朝屋彼方にしっかりと曲を聴いてほしかったからだと思います。

ある呪文

『ある呪文』は『未明』の次に歌唱された曲です。劇中ではこの2曲が歌われているのですが、もしかしたらこの2曲を歌っているところを抜粋されているだけで他の曲も歌唱している可能性もありますが、今回の考察ではあくまでこの2曲だけを歌唱したものだとして話を進めていきます。
朝屋彼方に聞かせるための『未明』は別に考えるとして、何故『ある呪文』が選ばれたのか、それは他の曲と比べると見えてくるのではないかと思いました。
基本的に織重夕の曲は暗いものが多いですが、『ある呪文』は葛藤をメインに作られた『アイデンティ』や『ナイト・アンド・ダーク』よりも希望の部分が目立ちます。
また、音楽の道を進むことを諦めていない『ビオトープ』よりもかなり葛藤の部分が大きく描かれています。
“病名も付くはずないこんな私の憂いを 飛ばせ、今、 所詮は人生なんだよ”という歌詞から自分の葛藤を曲作りに励むことで解決しようという思いが感じられます。
朝屋彼方の作ったMVが色んな場所に発信されて、業界の目に留まれば「音楽の道で自分の人生が変わるかもしれない」という考えが浮かんだのではないかと思います。この曲は音楽の道へ戻れるかもしれないという希望と現実の厳しさの葛藤の両方が含まれているため、ライブハウスで歌唱することを決めたのではないでしょうか。

最後に

これはあくまで私個人の勝手な推測であり、実際の織重夕の心境とは大きくかけ離れている可能性があります。
彼女の心境を歌詞から読み解くと、音楽の道を続けたいが、現実は厳しいものであるという葛藤がかなり多く描かれていると思います。
最終的に音楽の道に戻る織重夕ですが、後日談を見てみると、必死に曲作りをしていたときよりもどこか楽しげに曲作りに励んでいる様子が描かれているように感じました。彼女が次にどんな曲を作るのか想像してみるのも楽しそうですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?