SSSSSPANK!

 ぱちん、と振られた手のひらはまぬけな音を出して、福富の尻に着地する。
「や、嫌だ、金城! ほんき、なのか……」
次は、もう少しまともな音を、ばしん!
 嫌だ、ダメだ、と一回言うごとに、一回叩くから。それが今日のお約束。
こんなふうに、お互いの部屋でからだを重ねる関係になったと言うのに、福富はいつも嫌だ、ダメだ、やめてくれ、そうくりかえす。もちろんオレにはわかっている、福富のいやよいやよも好きのうち。しかし、それだってあんまりに言い募られるとこちらがひどいことをしているような気になるじゃないか。
ゆびきりげんまん、嫌って言わない、ダメって言わない、嘘ついたら平手打ちの計!
ガキの遊びみたいな話だが、福富のちいさな黒目の奥が、欲の熱でうるむ。
 首を不自然によじらせてこちらを見た福富に、
「ほら、ちゃんと、前見て、手、つく」
うながすと、たまらないと言うようにぶるっとからだを震わせて、古い彼自身の学習机に向きなおった。
細かいしわを、わけ入るようにゆびでひらいて、空いた方のゆびを、差し入れる。ローションでさんざん慣らしたそこは、しっとりと湿って、難なくゆびをのみこんだ。入りぐちに、関節を引っかけて、輪郭をなぞるように動かすと、もうぬるぬるになった性器をびくりとふるわせながら、福富が呻く。
「ッ! それッ、や、やだ、きんじょお……」
オレはため息をついて、そこを広げていたゆびをずるりと抜くと、そのたくましい尻をばしんと張る。
それは、おねだりなのか、耳もとでささやいたら見る間に首すじを赤く染め上げて、机上についた腕のあいまに顔をうずめた。どんな顔してるか、見えなくてももうわかる。
もうほころんだそこにペニスをこすりつけると、誘うようにうごめいていた。
つぷん、と音をたてて先端だけ入れる、そのまま太い部分を出したり入れたり。
「だ、それ、変に、や、だ…!」
もう必死で、ことばを選ぶ余裕もなく、福富が腰を揺らす。
すこしは、強くしても平気だろうか、パン、おおきな音をたてて落ちた手のひらに、皮膚ははにかむように血の色を滲ませた。応えるように、あながきゅうきゅうと窄まる。
たまらないと奥までつきたてて、中を穿った。
や、まだ、だめ…。ばちん! もう、たのむ。は、そこやだ、いやだ。ぱん、ぱしん!
手を振り下ろすたびに、福富の性器はびくびくと震え、悦びにたえないとばかりに、とろとろと先走りをこぼした。動きを早めると、福富の足のゆびがこわばって、かかとが宙に浮く。
ひときわ強く、奥の、福富の好きな場所をこすりながら、ぱん! と尻を張ると、福富は背をそらせて、吠える。古い、机の天板に、白い粘液が飛ぶ。
つーるど、ゆうしょう! 天板におさなく刻まれた文字をよごす。
水にインクをこぼすように、出した精液に福富のなみだが落ちるのと、オレが薄いゴムの中に射精するのはほぼ同時だった。
 くっきりと筋のかたちを浮かせ、谷を、稜線を形づくる白い尻はほんのりと赤くなっている。
ワセリンあったろ、塗ってやろうか、湿って、小束を作った髪を梳きながらささやくと、オレのわき腹に置いた福富のゆびがぎゅっと、竦んだ。
「嫌だ、そんなことをしたら、」
また……たくなってしまう、とうつむいた福富のうなじが赤い。
ほら、また。ほんとうに、無自覚なのか、誘っているのか、お前はもう。
最後に一回、ぺしん!

2015年1月4日

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