台湾の「ダサくてカッコイイ」デザイントレンドとは?
ここ数年、台湾のデザインの中で、あるトレンドが流行っています。それは一見で少しダサいに見えるが、ポップで面白いデザインということです。そのトレンドはグラフィックからファッションや音楽までもよく見かけられます。
1.インディーズ音楽のトレンドからみると
例を挙げれば、最近若者の間に人気の集まってる台湾女性シンガー「9m88」(ジョウエムバーバー)がリリースした Podcast(ポッドキャスト)のカバーを分析してみましょう。
台湾の「O.OO」というリソグラフ孔版印刷を実験するデザイン事務所がデザインしました。真ん中の写真は9m88本人で、周りに訳わからない写真が載せてあります。タイトルの「9m88lah8lah」の背景にビビッドトーンカラーを使ったが、テキストのタイポグラフィーはかなりモダンですね。そして、メインビジュアルとしての9m88は、昭和っぽくてレトロなメイクしています。(松田聖子さんのこのスタイルと似ていると思わないですか?笑)
9m88のファンであるので、同じ昭和っぽくてカッコいいMusic Videoを二つ書き留めておきました。画質をあえて240pで観ると、もっとレトロな魅力を感じられるので、240pで観るのはおすすめします!
2.ファッションデザインからみると
古着好きでよく古着屋巡りするが、本当のファッションデザインやファッションブランドは全然詳しくないです。ファローしているファッションブランドは二つしかないです。一つ目は、「Angus Chiang」という台湾のファッションデザイナーが立ち上げたパーソナルブラディングです。ロンドンで非常に注目されている彼(Angus)は、台湾のカラフルな看板から檳榔(ビンロウ)至るまでの庶民文化を、ファッションデザインに融合して斬新なスタイルを創造しました。
▲台湾のフルーツのパッケージの編みネットをマネするベストのデザインは面白かったです。▲(▼実際はこの感じです▼)
▼檳榔(ビンロウ)というおじいさんが好きだが、若者が古臭いと思ってる食べ物のパッケージを上着にしました。初めて見たとき、驚いたほどダサいなぁと思いつつ、独特でおしゃれでかなりショックを受けました。▼
▼実物はこのような感じです。コンピューターがない時代で描かれたイラストで、今更見るとちょっと特別でかっこいいですね。▼
▼ランウエーショーで台湾ビールを持ち歩いているのも面白すぎました。意外と違和感が全くないというのは彼のすごいわざではないでしょうか。▼
二つ目は「Plateau Studio」というファッションブランドです。もし「テラスハウスTOKYO2019−2020」を見たことあるなら、初メンバーの翔平さんはよくこのブランドの服を着るのが知っているかもしれません。
▲台湾の伝統的な葬式のシーンの前で変な可愛いポーズしている翔平さん。黄色いズボンはPlateau Studioの新商品です。▲
▲「熱炒(ラーチャオ)」という台湾式の居酒屋を再現し、新商品のキャンペーン写真をとるのが一周回ってかっこいいです。▲
▲さっきのAngusと同じ檳榔(ビンロウ)をモチーフとして、怪しいイラストを載せているポシェットデザインです。▲
3.トレンドをリードするグラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーたちもこのトレンドの中で重要な役を担っています。一番認知度高いのは若者が注目されている台湾のデザイナー廖小子(シャオツー)です。彼は「草の根文化」(工場・お寺・伝統市場・屋台など)にインスピレーションをえて生き生きとしたパワフルな雰囲気を感じられる作品を創作しました。
▲昔っぽくて安っぽいチラシに似ているが、ビビッドカラーのピンク・黄色い・緑の組み合わせが新奇ですね。常識の美に外れて実験性が高いのが廖小子の特徴であります。▲
▲「LEO王」という台湾の有名なラッパーのシングク曲のカバーデザインです。これは本当にダサすぎるんですね(笑)▲
▲廖小子の作品の中で一番気に入ったのは「李英宏 a.k.a. didilong」という台湾語を歌うラッパーのアルバムデザインです。工場の壁でよく見かけられる落書とラベルをアルバムのカバーに生かし、台湾ならではのダサくてカッコ良さを見事に伝わります。▲
最近いろいろなインディーズバンドのライブポスターのデザインを手掛けたデザインブランド「吃到肉羹實業社」もすごく気に入っています。皮肉的にユーモアなイラストを書くのが特徴です。
▲大晦日のライブイベントのポスターデザインです。イメージのおじさんは台北の現任市長ですが、、、笑▲
4.日本のデザイナーとの交流
「Allright Graphics」というデザイン事務所を立ち上げ、東京造形大学准教授である高田唯さんが台湾でもすごく注目されています。特に、デザイン専攻の学生はほどんと高田さんの作品が知っています。台湾で日本の新世代グラフィックデザイナーの中で一番知名度が高いデザイナーとも言えます。なぜ彼の作品は台湾人を惹かれるのか、前述で取り上げたトレンドに繋がっています。
▲台湾の本屋さんブランド「誠品書店」が日本橋で開いた企画で、髙田さんに台湾をテーマにして作ってもらった作品です。やはり台湾と言えば、ビビッドトーンというイメージですよね。▲
▲2018年髙田さんが台中で行いました個展のメインビジュアルです。常識的に美しさといささか外れたけど、すごく気になりました。台湾でもかなり話題になって、日本デザインのイメージと遥かに異なって面白いですね。▲
5.今の世代にもたらすインパクト
そのトレンドを導いている先輩たちの姿を見てて、こういうデザインを試している学生がどんどん増えています。例えば、今年の卒展では、「伴桌體(バンゾウティー)」という辦桌(バンゾウ)台湾式の伝統宴会をモチーフとして、辦桌の雰囲気が溢れるフォントをデザインしたテーマがあります。
▲前菜・メイン・デザートのコースの流れを元に、それぞれに合わせるフォントを一つずつ作りました。▲
▲ビールグラスのグッズデザインも可愛すぎます。▲
6.特徴をまとめてみる
最後、以上のデザインを観察すれば、いくつかの特徴がまとめられます。
「ダサくてカッコイイ」デザイントレンドは:
1. 日常から精錬される庶民文化を改めて表現する。
2.ビビッドトーン(RGBの赤・青・緑)がよく使う。
3.過去のデザイン・文化をオマージュ・パロディする。
4.昔っぽいスタイルに現在のネタ・ミームを加える。
日本より、台湾のデザイナーは彩度の高い色味をよく使うという傾向があります。なぜなら、台湾の夜市のカラフルな看板の印象が心の奥に残っているので、デザイナーたちは意識せずに明るい色をつけがちということなのではないでしょうか。一方で、この「ダサくてカッコイイ」デザイントレンドはまさかそれを意識した上で、あえて自分の中での台湾っぽいデザインを何倍か強調し表します。個人的に推測しているが、近年高まった「台湾人としてのアイデンティティ」についてもいろいろ関係があると思います。そして、このトレンドをどこまで進まれるのが楽しみにしています!
ここまでご覧いただいて、ありがとうございます!
今回のデザイン分析はここで終わります。
また、次の投稿を!
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