コミュニケーション論 課題1
本レポートでは現代社会で問題となっている家庭や職場におけるコミュニケーションの歪みで生じる「ハラスメント」についてなぜその現象が起こり、問題になるのかを分析し、省察する。
コミュニケーションとは、多くの人にとって最もなじみ深いものではないだろうか。「コミュニケーション」は個人と個人との間で行われる「情報の伝達」や「意思の疎通」として捉えるものである。ヒューマニズムに基づくコミュニケーションでは、人と人との間に働く力、人々の間で不均等に作用する力に目を向けている。不均等な力というのは「強者」と「弱者」の関係において生じるような力を指す。この「ハラスメント」はこの不均等な力によって発生し、どのような問題があるのだろうか。
「ハラスメント」とは、相手に不快感を与える嫌がらせやいじめ全般を指す言葉である。職場における「ハラスメント」はかつて一般に「嫌がらせ」や「いじめ」と表現されてきた。現在では職場だけではなく日常生活のさまざまな場面で行われている。それらは個人的な問題とされた従来の「いじめ」から職場の構造的な問題である「ハラスメント」という考え方に移っている。職場や家庭におけるハラスメントは、近年とくに問題視されている。厚生労働省がまとめている「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば民事上の個別労働紛争相談件数のうち最多は「いじめ・嫌がらせ」であり、9年連続で最も多くなっていて、件数も増加傾向である。代表的なハラスメントとして「セクシャルハラスメント」や「パワーハラスメント」があげられるが、それ以外にもハラスメントとなるものが多くある。本人たちがそのつもりがなくても、相手が不快に感じ、不利益や脅威を与える言動であれば、ハラスメントが発生することになる。では、ハラスメントはなぜ発生するのだろうか。
まず考えられる原因としては、コミュニケーションの不足だと考える。ハラスメントという現象は、コミュニケーションが持つ本質的な危険性を端的な形で表現する。上司と部下や同僚同士が仲良く仕事をしようとするとコミュニケーションを円滑にする努力が必要である。そういった姿勢を悪用して、相手も同じ考えや行動をすることが当たり前という雰囲気を作り出す中で、精神的にだんだんと疲れさせて相手の考えや行動を支配することがハラスメントだとされている。コミュニケーション不全の問題が起こる背景には、労働市場の状況が大きく変化してきており、その労働力の構成が多様化していることが考えられる。近年では女性が働くことも多くなり、高齢層の雇用延長、非正規従業員の増加などといった現象がみられる。そういった働き方の多様化により意識や価値観の変化に加えて離転職も多くなり、勤続年数が短くなることによって、職場の人との繋がりが希薄になっていると考えられる。また、長時間労働での時間的な拘束が強まることによりコミュニケーションの時間的余裕も少なくなってしまう可能性も高くなる。実際に社内コミュニケーションを不十分と感じている人は多い。こうした中で同じ考えや行動を取るのが当たり前という雰囲気が強くなってくると、どちらかが「加害者」か「被害者」になってしまうような関係が生まれやすくなることが原因になる。そこで重要になるのは、個人を尊重する中でお互いの信頼関係を築くという姿勢を持つことであると考える。それは家庭でも起こる「モラル・ハラスメント(以下モラハラ)」もコミュニケーション不足で生じるものだと考えられる。これらに関してもどちらかが「加害者」になり「被害者」になる。個人の性格的な問題だけではなく幼少期に親のモラハラを目にしていたり、自分が受けていることも原因といえる。家庭内の家族のコミュニケーション不全によって繰り返されてしまうのである。もちろん、コミュニケーションの不足だけが原因ではない。彼らを取り巻く環境の中で虐待や、機能不全家族、過保護でありすぎた家族の歪んだ愛情などが負の連鎖をおこしているのであって、一概に個人が悪だとは言えない。
「ハラスメント」について対策を実施するうえでも個々のコミュニケーションでやり取りしている行為を観察しても、その行為がハラスメントであるかどうかを判定することはできない事実がある。それらが愛情であったり、信頼関係の上に形成されているのであればハラスメントにはならない。これらの根源がコミュニケーションそのものの本質と関わっている以上はそれを根絶することは不可能であると考える。私たちは言葉を使って意思疎通をはかっている。いつか自分も「加害者」になるかもしれないという意識をもち、自分の中にもこのような悪意のありうることを自覚し、コミュニケーションの方法を学ぶことも重要であり、私たちの今後の課題となるだろう。
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