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【山雅】崩壊|J3第25節【レビュー】

イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅のレビュー。



2023.9.3
J3 第25節

FC大阪
×
松本山雅FC



監督・選手のコメント↓




~スタメン~

FC大阪(青):4-4-2
山雅(白):4-2-3-1


~はじめに~

序盤戦(14節まで)はぼちぼち勝ち点を稼げていたのに、なぜ最近は全く勝てなくなってしまったのか。


サッカーにおいて、主な得点パターンはカウンター(速攻)、ビルドアップ(遅攻)、セットプレーの3種類存在する。

そのうち、山雅においては、

序盤戦:カウンター、セットプレー
最近:セットプレー

が主な得点パターンとなっていた。

つまり、カウンターという武器を失ってしまった、ということである。
だから山雅は勝てなくなってしまった。


~一向に完成しないビルドアップ~

カウンターの話の前に、まずはビルドアップについて。

今のチームは主導権を握り、ボールを繋ぎながら相手を崩すことを目指してはいるが、それだけの仕組みが伴っていない。
そもため、ボールを持ってはいるが、ただそれだけ、という状態になっている。

特に目立つ問題点としては、

  • SBの孤立

  • CBの焦り

  • ポジショニングの悪さ

が挙げられる。


-SBの孤立-

高い位置でSBがボールを持った時、近くにパスコースがないことが多すぎる。

サポートがあまりにも足りない。

そのせいで、SBが1対2の状況になってしまい、苦しんでいる様子を何度も見てきた。

そんな状況で質の良いクロスなど上げられるはずがない。
そもそもクロスを上げられなくなるし、上げるにしても、ピッチの端、ゴールの遥か遠くから、なんとか上げるだけのクロスになってしまう。

もし1対1であったとしても、ウインガーの滝や村越ではなく、下川や藤谷にドリブルでの仕掛けを求めているのは理にかなっていないと思う。


-CBの焦り-

CBがボールを持っている時、自分がフリーであるにも関わらず、さっさと味方にパスを出してしまうことが多すぎる。

当たり前だが、ピッチ上ではキーパーを除いて10人対10人の同数になっている。
その状況で、CBがフリーになっているということは、単純に考えれば、残りの9人を相手は10人で見ているということになる。

つまり、他の味方へのマークは厳しくなっているということだ。

そんな状態でCBが焦ってパスを出せば、パスを受けた味方には激しいプレスが来て、ボールを失ってしまう。

(もちろんサッカーはそんな単純ではないけれども、大雑把なイメージを説明するとこんな感じです)

このチームは「テンポ良く素早くパスを繋いでいくことこそがビルドアップである」という価値観でプレーしてしまっているような印象を受ける。

だだ、基本的にCBに求めたいのは、フリーならドリブルで運ぶことにより、相手に「ドリブルを止めなきゃ」と思わせ、CBに対して寄せてくるように仕向けることだ。

そうやって相手の選手を釣り出すことができれば、その分スペースが生まれるし、そこで味方がパスを受けることができる。


こういうプレーを、常田も野々村も橋内も、なかなかできない。


-ポジショニングの悪さ-

選手たちのポジショニングが悪いことが多すぎる。

パスを引き出せるポジショニングを取れない、あるいは取るのが遅すぎる。

特に良くないと感じるのは菊井だ。

菊井は前線にいたり、あるいは下りてきて受けようとしたり、左右のサイドに顔を出したりと、比較的自由を与えられているように見える。

ただ、ポジショニングが良くないので、チームが機能していないことが多い。

ジェームズ・マディソン(トッテナム・ホットスパー)やブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)のような、天才的なポジショニングセンスを持っている選手なら、自由を与えてもチームは機能する。

元山雅の選手で言えば、佐藤和弘もそうだ。

しかし、菊井はそこまでのポジショニングセンスを持ち合わせてはいないため、自由というよりはただの無秩序という感じになってしまっている。

一時期、「ポジショニング改善されたか?」と思っていたこともあったが、最近の試合を観ていると、どうやらそれはたまたまだったようだ。


-クロスを工夫?-

クロスを工夫したり、クロスの入り方や質などの部分はずっと今シーズン突き詰めて来たので、そこから決定機をなかなか作れなかったのは非常に悔しい思いでいっぱいです。

監督

今節の試合後に監督はこう語っているが、もっと突き詰めるべきところは他にあるのではないだろうか。


野球で例えるなら、150キロのストレートしか投げられないピッチャーに対して、「もっと球速を上げろ」と言っているようなものだ。

全く無駄というわけではないが、勝てるようになるには効率が悪い。

カーブなりフォークなり変化球を身につけて、球種でバッターと駆け引きできるようになった方が断然勝てるようになる。

ストレートしかないから打たれる。


山雅も同じだ。

攻撃手段がサイドからのクロスしかないから、相手からすれば守りやすい。

もっとサイドを崩してポケットを取るとか、あるいは中央をコンビネーションで崩してペナルティエリア内に侵入するとか、様々な攻撃手段(球種)を持たなければ、相手を揺さぶることなどできない。


~失われたカウンター~

山雅はビルドアップからの得点を見込めず、代わりにカウンターとセットプレーで得点を重ねていた。

しかし、今ではカウンターという武器も失われ、ほぼセットプレー頼みとなってしまっている。

カウンターが失われた理由としては、

  • ボランチの人選

  • SHの人選

の二つが影響していると考えている。


-ボランチの人選-

序盤戦でボランチとして主にプレーしていたのは住田とパウリーニョだが、特にパウリーニョが試合に出なくなったというのが大きい。


パウリーニョはポジショニングも足元の技術も難がある。
そのせいでビルドアップがうまくいかず、相手にボールを奪われてしまうということが度々あった。

しかし、逆に言えば、相手の攻撃の機会が増え、相手が前がかりになってくれるため、山雅からすればカウンターが狙えるということでもある。


また、パウリーニョは守備の際、相手に突っ込んで簡単にかわされてしまい、大ピンチを招いてしまう。

しかし、これも考えようによっては、相手が攻め込んできてくれるのでむしろカウンターを狙えるということでもある。


つまり、パウリーニョを起用することによって、結果的にカウンターのチャンスが増えている、ということになる。

パウリーニョがビルドアップでミスをしたり軽い守備をしてしまうことでピンチも増えてしまうのだが、それによる失点よりも、カウンターを活かせるというメリットの方がこのチームでは大きい、というわけである。

「肉を切らせて骨を断つ」ようなサッカーにより、序盤戦ではそれなりに勝ち点を稼ぐことができていた。


J1やJ2では、ピンチを招いたら普通にそのまま失点してしまうと思うが、上のリーグより質の劣るJ3ではギリギリ守り切れてしまうことも多い。

そのため、J3だからこそかろうじて成立していたサッカーだと言える。


最近ボランチとして出場しているのは米原と安永である。

この二人が出ているとボールを持てるし捌けるので、簡単なボールロストはだいぶ減ったなという印象である。

しかし、ボールを持てるようになったことで、相手を敵陣内に押し込むようになり、むしろカウンターのチャンスは減ってしまった。
(それどころか相手にカウンターのチャンスを与えてしまうことになる)

しかもビルドアップから点を取れるわけではない。

そのため、山雅の得点数も減ってしまった。


-SHの人選-

カウンターが失われた原因は、SHの人選にもある。

序盤戦は、滝や村越、菊井が主に起用されていた。

この選手たちは、カウンターの場面において1対1でドリブルを仕掛け、突破してそのまま決め切ってしまう、あるいはチャンスメイクをする力を持っている。

この選手たちの得点やアシストにより、試合運びを優位に進められるような、そんな試合は何度もあった。


一方で、最近SHで起用されているのは鈴木や國分、野澤である。

村越は出場停止や怪我で試合に出られなくなり、滝もベンチを温めるようになってしまった。

鈴木や國分には、カウンターの場面で得点やチャンスを生み出せるような突破力や、得点を奪う決定力が足りていない。
(野澤はまだよく分からないが)

だから山雅のカウンターの切れ味は大幅に落ちてしまった。


-より求められるビルドアップの質-

人選以外の面で言えば、山雅に対する相手の戦い方の変化も考えられる。

山雅がプレスをかけると、あまり無理せずロングボールを蹴り、前線でうまく起点を作って攻撃しようとするチームが多くなった。

だから山雅としては、高い位置で奪ってショートカウンターをすることができなくなった。

ショートカウンターができなくなり、低い位置からの攻撃が増えてしまう状況では、やはり相手の守備を崩すだけのビルドアップの質がより必要になってくる。

しかし山雅のビルドアップの質は高くない。

選手の質が低いわけではない。
問題は仕組みの質である。


~試合結果~

FC大阪   3
12' 木匠貴大  20' 木匠貴大  90+2' 日髙慶太
松本山雅FC 1
45+3' 野澤零温


~終わりに~

まだ25節だが、もうとっくに後がない状況だ。

しっかり守ってカウンター、かつ攻撃はロングボールを蹴ってセカンドを狙う、いわゆる堅守速攻スタイルに変更すれば、今からでもギリギリ昇格争いに絡めるはずだし、それだけの選手は揃っている。

でもそれは監督のプライドが許さないだろう。

自分が築き上げた仕組みに心から自信を持っているということはコメントから伝わってくるし、戦い方を変えるということは、その仕組みがダメだったと認めることになってしまうのだから。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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