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【山雅】大きすぎる穴|J3第18節【レビュー】
イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅のレビュー。
2023.7.16
J3 第18節
松本山雅FC
×
福島ユナイテッドFC
監督・選手のコメント↓
~スタメン~
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福島(白):5-2-3
~はじめに~
両チームの調子の悪さを象徴するような試合だった。
山雅と福島は、守備面において共通する大きな欠点を抱えていた。
~共通する欠点~
その欠点とは、守備ブロックの内側を相手に曝け出し過ぎる、ということ。
-山雅の守備-
山雅の守備ブロックは4-4-2である。
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山雅は、この守備ブロックの内側を相手に曝け出してしまうシーンが非常に多い。
例えば、20:09のシーン。
小松が急に前に出ていき、守備ブロックの内側にいるボランチ上畑へのパスコースを開けてしまう。
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そのせいで、喜山が一人で二人見なければいけない状況が急に訪れる。
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喜山は小松が上畑のことを見てくれていると直前まで思っていたため、上畑に寄せるのは当然間に合わず、パスが入ってしまう。
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一応、小松としてはCB大武に寄せることで、逆サイドに展開させないようにしたかったのだろうが、そのせいでむしろピンチを招いてしまっている。
山雅の守備は、今回のように、2トップがパスコースを切れていないシーンが多過ぎる。
愛媛や富山は、積極的にプレスをかけるわけではないが、守備ブロックの内側を使われないように、2トップがしっかりパスコースを切り続けている。
だからこそ上位にいるのだろう。
-福島の守備-
福島の守備ブロックは5-2-3である。
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福島もまた、この守備ブロックの内側を相手に曝け出してしまうシーンが非常に多い。
例えば、2:01のシーン。
山雅の左SB下川にボールが入った時、守備ブロックの内側でパスを受けようとする喜山を、CF雪江がマークできていない。
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そのせいで、ボランチ上畑・右CB堂鼻は、一人で二人見なければいけない状況になってしまっている。
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このシーンでは、上畑が喜山、堂鼻が滝のマークについたことで、菊井がフリーになり、パスが入ってしまった。
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もし雪江が喜山のマークについていたら、上畑は菊井、堂鼻は滝を見ることで、うまく守れていた可能性が高い。
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また、45:56のシーン。
雪江がCB常田へ寄せに行くが、この時、雪江はボランチ喜山へのパスコースを切れていない。
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だから、上畑が一人で二人見なければいけない状況が生まれてしまう。
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上畑が喜山へ寄せたため、菊井にパスが入ってしまう。
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雪江が喜山へのコースを切っていたら、上畑は菊井を見ることができ、うまく守ることができていたはずだ。
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5-2-3はそもそもプレスを積極的にかけるにはあまり適していないシステムである(と思っている)。
だから、5-2-3で守るなら、プレスをかけてボールを奪いにいくというよりは、ミドルゾーンでしっかりコンパクトなブロックを組み、攻めてきた相手をどっしり受け止める、という守り方をした方が安定するのではないかと思う。
ハンガリー代表が5-2-3でしっかりブロックを組む戦い方でそこそこ結果を残しているので、参考になるかもしれない。
(そんな情報誰も求めてないぞ、というツッコミは勘弁してください)
~試合結果~
松本山雅FC 1
4' 小松蓮
福島ユナイテッドFC 2
37' 塩浜遼 88' 雪江悠人
~大きすぎる穴~
ビルドアップは本来、必死に中央を閉じてくる相手に対して、逆サイドに振ったりしながらチャンスを窺い、わずかな隙を逃さず縦パスを通していくことによって、なんとか前進していく、という形になることが多い。
しかし、山雅や福島の場合、最初から縦パスのコースを相手に提供してしまっている。
その上、ボランチが一人で二人見なければいけない状況になっているので、パスを防ぎきれない。
だから、相手は左右に振って守備ブロックを揺さぶって…という作業をする必要がなくなる。
そのため、守備を攻略するのが大分楽になる。
小松が逆サイドへの展開を阻止しようとしている、という話をしたが、それに意味はほとんどなくなってしまう。
逆サイドを使うまでもなく、すでに前進できる道が用意されているからである。
前線の選手たちは「プレスをかけたらボランチの選手たちは絶対に連動してくれるだろう」と思い込んでいるように見える。
しかし、ボランチはさまざまな方向にいる相手選手を見なければいけないので、いついかなる時でも連動できるわけではない。
プレスをかけたいのなら、ボランチが連動できる状況を作り出せるような、緻密なプレスをデザインする必要がある。
それは監督やコーチの仕事のはずである。
~終わりに~
山雅や福島の守備ブロックには、あまりにも大きな穴が空いている。
それでは勝てるはずがない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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