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【読書ノート】『蜂蜜パイ』(『神の子どもたちはみな踊る』より)

『蜂蜜パイ』(『神の子どもたちはみな踊る』より)
村上春樹著


純平は36歳で短編小説を書く作家。ある日、純平は、大学の頃からの友達で、一人で子育てをしている小夜子から家に呼ばれる。小夜子の家には、5歳の沙羅がいて、神戸の地震があってから毎晩、怖い夢を見て困っていた。その夢では、「地震男」というおじさんが沙羅を小さな箱に入れようとするのだという。

なかなか、よくわからないので、

いくつか、キーワードを挙げてみる。
①熊
好奇心、洞察力、癒し、そして、権威の象徴とされている。また、熊は「隠れ家」や「秘密の場所」を持っていることから、宝物や財産を守る力があるとも言われている。熊は母性や家族の絆を象徴する動物としても知られており、子熊を愛情深く育てる姿から、良好な人間関係や家族愛を暗示する存在とされている。

②シャケ
北米の先住民族にとってシャケは豊穣や生命の循環を象徴し、生命力と再生のシンボルとされている。

③蜂蜜
古代から現代に至るまで、甘さや栄養価の高さから「神々の食べ物」とされ、豊かさや健康、甘美な生活を象徴してきた。また、蜂蜜は自然の産物でありながら、蜂の努力と協働によって作られるため、協力やコミュニティの重要性を示す。

④地震
変化や不確実性の象徴として見られる。自然の力がもたらす突然かつ予測不可能な変化を通じて、人々は自然界の力と自身の脆弱性を認識する。

キーワードから見えてくるもの。人間関係の複雑さと、人生の不確実性ついて考えさせられる。純平が小夜子に抱いた恋愛感情は、彼の内面の葛藤と、グループ内の安定性を維持したいという願望の間で生じる心理的な緊張のなかで、治められる。一方で、その後の小夜子の反応は、彼女の内面の自制心と純平への配慮を表している。最終的に三人が取るべき距離感に気づいた。

物語の主題は何か?
直下型地震のメカニズムというのは、海のプレートによって圧縮されている陸のプレート内にたまったひずみが限界に達して、岩盤の弱い部分で急激なずれが起った状況をいうのだけど、平常時というのは、ひずみが、すれすれのところで、小康状態を保っているということになる。これは、人間関係の複雑な不安定な状態に、何らかの理由で、パワーバランスが、崩れかけながらも、ギリギリのところで、安定を保っているという状況に似ているのかもしれないと思ったりした。

不確実性の時代と言われて久しいのだけれど、今日の平和が明日も続いているのか、わからない状況にあって、どうやって、こころの平和を保つことができるのか?
考えさせられる。

この物語は、阪神大震災で受けたこころの傷からどのようにして、こころの平穏を保つことが、できるのか示されているように思った。時代は進んで、リーマンショック、東日本大震災、コロナ、イスラエル問題、ウクライナ問題と、多くの試練を受けているわけだけど、身近な人間関係の平和を保つことが、基本なのだろうと感じさせられた。

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