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【読書ノート】『鰐』

『鰐』
ドストエフスキー著


イワンというロシアの役人が鰐に飲み込まれ、その腹の中で生存して、新しい思想や経済理論を説いていく。物語は『旧約聖書』のヨナ書が、モチーフになっているとも言われているらしい。

鰐はドイツ人が飼っていた。
その鰐に飲みこまれたイワンは、社会思想から建物まで、あらゆるものがヨーロッパ風に飲みこまれつつあった当時のロシアと重なる。実際に、ドイツ人のマルクスとエンゲルスが生み出した共産主義は、ロシア全土を飲みこんでしまった。しかし、飲みこまれたイワンと飲みこんだ鰐が逆転したように、ソビエト連邦はどんどんヨーロッパの国々を飲みこんでいった。

キーワードをあげてみる。

①タイトル「鰐」とは?
1. 強さと力: 鰐はその巨大な体と強力な顎から、力や勇気の象徴とされる。特に、古代エジプトではナイルワニが神聖な存在とされ、王権や守護の象徴として崇拝されていた。

2. 再生と不死性: 鰐は一部の文化において再生や不死性の象徴とされる。

3. 隠された知恵と秘密: 鰐はしばしば知恵や秘密を象徴する動物とされる。

4. 統治と支配: 鰐は支配や統治の象徴として解釈される。鰐は水と陸の領域を行き来することができるため、両方の領域を支配する力や権威を持つと考えられる。

物語の中では、監獄と流刑地シベリアを象徴して、鰐の腹の中のイワンは、シベリアへ追放された活動家たちを揶揄していると言われている。

②「進歩派インテリゲンチヤ」
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ロシア帝国において、社会的・政治的な改革を求める知識人たちのことを指す。彼らは、民主主義や社会主義、自由主義などの思想に基づいて、帝政ロシアの現状に対する批判を展開し、改革を求めた。しかし、彼らの活動は、政府による弾圧や、社会の保守的な反発によって、挫折した。

物語の主題は何か?
ヨーロッパ文明が、ロシアをどんどん侵食してくる嘆きでは、あるのだけどね。ロシア革命の歴史を見ると、帝国主義世界・資本主義世界に飲み込まれつつあったロシアは、社会主義・共産主義を唱える革命家たちによって、逆に、西ヨーロッパ文明を圧巻してくる。

ドストエフスキーも予想していなかった世界になっていくというのが、なかなか、面白い。もっとも、後に社会主義、共産主義経済は、崩壊していくのだけどね。

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