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2024年4月の記事一覧

【読書ノート】『レキシントンの幽霊』

【読書ノート】『レキシントンの幽霊』

『レキシントンの幽霊』
村上春樹著

なかなか、主題が、掴みにくい物語。

ケイシーはピアノ調律師のジェレミーと一緒にレキシントンの屋敷に住んでいる。ある時、『僕』はケイシーに家の留守番を頼まれる。留守番の初日の夜、『僕』は深夜に大勢がパーティをしているような物音で目を覚ます。『僕』は、あのパーティは、幽霊の集まりだったのだろうと納得する。

キーワードを挙げてみる。

①アッシャー家
エドガー・

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【読書ノート】『コイビト』(『授乳』より)

【読書ノート】『コイビト』(『授乳』より)

『コイビト』(『授乳』より)
村田沙耶香著

ホシオと名付けたハムスターのぬいぐるみを恋人と思う「あたし」は、同じようにムータというオオカミのぬいぐるみを愛する少女、美佐子と出会う。

かなり、村田沙耶香ワールド全快のシュールな物語。

オオカミのぬいぐるみ
自然界の野生や野性を象徴する。オオカミは強さや勇気、自立心、そして集団や家族の結束を表現する。また、オオカミはしばしば知恵や洞察力を持つ存在

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【読書ノート】『笑いのある世界に生まれたということ』

【読書ノート】『笑いのある世界に生まれたということ』

『笑いのある世界に生まれたということ』
中野信子・兼近大樹著

笑いというものは何なのか?
中野信子と兼近大樹が、様々なエピソードを展開する。

印象に残ったこと。

①世界幸福度ランキングの上位の国は、抗うつ剤消費国ランキングとかなり一致しているらしい。

幸せに生きていくためには、薬が必要ということになる。

②好感度って、人に好きになってもらうことではなくて、人を好きになる感度かなと思う。

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【読書ノート】『チェルカッシ』(『26人の男と一人の女』より)

【読書ノート】『チェルカッシ』(『26人の男と一人の女』より)

『チェルカッシ』(『26人の男と一人の女』より)
ゴーリキー著

チェルカッシは、小舟に乗って高級魚の密猟を計画していた、当てにしていた助手が、体調不調で、この冒険に同行できなかったので、代わりに、ガタイのよいカヴァリーラに声をかけた。

死ぬ思いをして、チェルカッシは大金を手に入れた。

ひとの幸せは何か?
ガヴアリーラは、自由が欲しいといっていた。

チェルカッシは、一匹狼、自由気ままな人生を

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【読書ノート】『モグラハウスの扉』(『父と私の桜尾通り商店街』より)

【読書ノート】『モグラハウスの扉』(『父と私の桜尾通り商店街』より)

『モグラハウスの扉』(『父と私の桜尾通り商店街』より)
今村夏子千代

学童のみつこ先生が、工事現場のモグラに恋をする物語。

モグラ
しばしば地下で暮らすことから、努力や地道な作業の象徴と見なされる。哲学的な意味では、モグラは忍耐やコツコツとした努力が成功につながるという教訓を象徴する。

工事現場
変化や進歩の象徴。工事現場は常に進化し、改善されるプロセスを通じて、人間の努力や創造力が物事を変

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【読書ノート】『絵里のエイプリル』(『我が家の問題』より)

【読書ノート】『絵里のエイプリル』(『我が家の問題』より)

『絵里のエイプリル』(『我が家の問題』より)
奥田英朗著

絵里は、高校3年生。
弟の修平は高校1年生で、
専業主婦の母親と銀行員の父親博士の家族4人、平和に暮らしている。と思っていた矢先、母方の祖母から電話を受けた。

祖母は、電話口の絵里を自分の娘と勘違いして、博士との関係性について、早まるなと注意する。
電話口にいるのは、絵里であることを伝えると、祖母は、バツの悪そうな態度で、電話を切る。

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【読書ノート】『君本家の誘拐』(『鍵のない夢を見る』)

【読書ノート】『君本家の誘拐』(『鍵のない夢を見る』)

『君本家の誘拐』(『鍵のない夢を見る』)
辻村深月著

「ふと横を見るとベビーカーはなかった」という言葉で始まる子育てママ良江の物語。

話の途中で、先が見えてしまったのだけどね。

子供が生まれて、しばらくの間の生活の激変を思い出す。

夜泣きもあったなあ。永遠にこの夜泣きは終わらないのではないか?とか思っていたことが、懐かしい。

子供が一緒の時間は、20年程度なのにね、過程生活の大部分は子供

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【読書ノート】『夜明けのはて』(『ぎょらん』より)

【読書ノート】『夜明けのはて』(『ぎょらん』より)

『夜明けのはて』(『ぎょらん』より)
町田そのこ著

主人公(私:喜代)は、結婚して4年目で、夫(喬史)を亡くして、お通夜が、執り行われようとしているところで、物語は始まる。

喬史との出会いから結婚に至る出来事の数々を走馬灯のように物語る。

二人の出逢いは高校時代。とは、いえ、高校の頃はほとんどやり取りはなかった。

法律で裁かれない形ではあるのだけど、児童を死なせてしまったという罪の意識で、

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【読書ノート】『花束みたいな恋をした』

【読書ノート】『花束みたいな恋をした』

『花束みたいな恋をした』
坂元裕二著

イラストレーターになりたい大学生の麦とこだわり強いオタクの大学生の絹が、ふとしたきっかけで、恋に落ちるという物語。

花束
美や一時的な存在の儚さ、自然の豊かさや喜び、生と死のサイクルなどを表現することがある。「花束みたいな恋」というと、美しい瞬間や喜びを楽しむことができるが、それは一時的で儚いものであるということ。花束は美しく華やかだが、時間が経つと花はし

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【読書ノート】『散歩同盟会長への手紙』(『不時着する流星たち』より)

【読書ノート】『散歩同盟会長への手紙』(『不時着する流星たち』より)

『散歩同盟会長への手紙』(『不時着する流星たち』より)
小川洋子著

これも、なかなか、よくわからない物語ですが、ローベルト・ヴァルザーというスイスのドイツ語作家をモチーフにした物語。

散歩をすることで、こころを整えて、ことばを探すのだという。

①ローベルト・ヴァルザーとは?
散歩は、重要なテーマの一つだった。彼は、散歩を通じて、自然や人々とのつながりを深め、自分自身を再発見することができた.

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【読書ノート】『ゼロで割る』(『あなたの人生の物語』より)

【読書ノート】『ゼロで割る』(『あなたの人生の物語』より)

『ゼロで割る』(『あなたの人生の物語』より)
テッド・チャン著

何だかよくわからない物語ですがね。

「ゼロで割る」とは?
人生の問題や困難を象徴する。数学の限界や真理の追求に関連している。

個人的な経験や感情は言葉や論理では完全に捉えることはできない。やはり、直接的な接触や対話が重要だということになろう。これは数学と人生、知識と経験、論理と感情の関係を考える上で重要な要素であり、公平な社会を

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【読書ノート】『三月の毛糸』(「愛の夢とか』より)

【読書ノート】『三月の毛糸』(「愛の夢とか』より)

『三月の毛糸』(「愛の夢とか』より)
川上未映子著

妊娠8か月の主人公が、夫と京都を訪れた際に、毛糸でできた世界を夢見るところから始まる。3月までが毛糸でできていて、ほどけていくという。

キーワードを挙げてみる。

①「毛糸」
毛糸の特性であるほどけやすさは、時間の経過や破壊のプロセスを象徴する。「毛糸」は人生の喜びや苦難、不確実性、そして変化の本質を表す。また、毛糸のほどける様子は、楽しい時

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