私の好きなお酒の飲み方
「お酒、好きなんですか?」
飲み会の席でときどき聞かれる。
この質問のたび、答えに窮する。
世間が言う「お酒が好き」とは、どういうことなんだろう。
お酒をたくさん飲むことが好きということ?
飲んで酔うのが好きということ?
飲み会が好きってこと?
「酒が好きか」をいう質問が、そういう意味なら「お酒はそれほど好きではない」と思う。
お酒を飲むのは好きだけど、大人数のいわゆる「宴会」は余り好きではない。少人数で集まって、おいしい料理を少しと、それに合うお酒を少し、ほろ酔い程度に飲むのは好き。でも、酔っ払って周りに迷惑をかけたり、二日酔いでしんどい思いをするのは絶対に嫌。
でも、料理に合わたり、生活の楽しみに、お酒を選んで飲むのは好きだ。
今の寒い季節の料理には、温かいお酒が合う。
おでん、ふろふき大根、寄せ鍋には、日本酒の熱燗か焼酎の湯割りを。冷凍しておいたすだちをチンして絞るとほどよい酸味が食欲を刺激する。
寒い寒い晩は、食後にゆっくりホットワイン(ヴァンショー)を飲むのもいい、寝る前に、ホットミルクにカルーアコーヒーリキュールを加えてコーヒー牛乳みたいにすると、心まで温まるような気がする。
紅茶にブランデーを数滴垂らして、香りとアルコールを楽しむのも寒い季節の楽しみ。
夏。庭バーベキューをするならキンキンに冷えたビールやウイスキーのハイボール。焼きそばやたこ焼きのようなB級グルメなら、あえて発泡酒とか第三のビールを。枝豆とビールは鉄板。
夏の和食にはよく冷えた日本酒。
熱い夏の夜は、ジンにライムを搾って炭酸で割った簡単なカクテルを作って飲みたい。ミントをたっぷり使ったモヒートは想像するだけで、うっとりする。
秋になれば、11月の第三木曜に発売されるボジョレー・ヌーボーを毎年買う。
クリスマスや誕生日はスパークリングワインを。
白身魚とアサリを使ったアクアパッツァを作ったら白ワインが飲みたいし、肉汁したたるステーキを焼いたら、やっぱり赤ワインがほしい。
酒の銘柄とか産地とか、全然分からないし、買うのはいつもスーパーマーケットだけど、そうやって料理や、暮らしの一部にお酒を選んで飲むのはとても楽しくて好き。
お酒が好きかと訊ねられて、こういうことを「好き」と言っていいのなら、「私はお酒が好き」だと思う。
先日の飲み会で、隣の席の人に「お酒が好きなんですか?」とお決まりの質問を投げかけられた。
答えに窮して、私が大真面目に、本当に好きなお酒の飲み方の話をしたら、相手はたいそう驚いた顔を言った。
「へえーー、すごいですね」
やはり、多分相手が求めている回答はそういうことではなかったようだ。
「お酒が好きか?」の回答の正解はいまだに分からない。