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毎年届く花

毎年、この時期に、ある花を贈ってくださる方がいる。地元で栽培されるその花が、この季節に旬を迎えるからだそう。

仕事を通じて知り合った方で、多分、地元では名士といわれる方なのだと思う。お年は80代。私の父と同い年だ。地元に貢献する意味もあって、お花をたくさん買って、私のほかにも、多くの方に送っているのだそうだ。

毎年とてもありがたく頂戴して、実はこっそりこの時期になると「そろそろかな」なんて、楽しみにしている。

その方もお年を召して、以前ほど外に出てていかなくなられたと知り、いかがお過ごしかと心配していたが、今年も花は届いた。御礼の電話をかけると、いつもと変わらず元気なご様子で安心した。

毎年同じお花を贈るのは、とても粋な計らいだなと思う。
その花を見たら、必ずその方を思い出すから。
多分、いつか、その方がいなくなっても、次に私が死ぬまで、この季節にその花を見れば、必ずその方を思い出すだろう。
花には思い出を引き出す力がある。

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