最愛馬の息子に乗った話
サウンズオブアースに乗ってきました。
と書いても大半の方には「は?」だと思うので詳しく書きますと、競馬でかなりの成績を残したほんの一握りの馬が、種牡馬になれます。
私の最愛馬ネオユニヴァース(2021年没)はその「一握り」になれて、子どもや孫がいるわけです。
サウンズオブアースはネオの子供で、かなり頑張ったのですが惜しくもタイトルには手が届かずということで種牡馬にはなれず、しかし乗馬に転向して(それも大変幸運なことです)札幌の乗馬クラブにいることは知っていました。
今回友人と北海道へ種牡馬巡りの旅に行くにあたり、会えるものなら会いたいなあと思ったのですが、札幌の乗馬クラブかあ。わたしたちが向かう主な目的地(静内、新冠)とは新千歳空港を挟んで真反対の方向です。ちょっと難しいかなあ。ところでこの乗馬クラブ(モモセライディングファーム)ってどこにあるの?と調べたら、札幌と言ってもかなりその……中心部ではないところで(婉曲)、新千歳空港から40kmくらい。高速使えば40分くらい。あれ、これいけるんじゃね?
さらに、乗馬クラブ。もしかして……!!
緊張しながら電話。
「はい」
あああの、9月某日にサウンズオブアースの見学に伺いたいのですが。
「はい、どうぞー」
ありがとうございます。そ、それでその…サウンズオブアースに乗れたり、とかは…?
「乗馬経験者の方ですか?」
ハイ。
「わかりました。大丈夫ですよー」
ま じ で す か!
というわけで、というわけで!!
こちらの乗馬クラブは経験者だったらビジターとして乗馬可能ということで(2022年9月現在。これは乗馬クラブの規定によって異なりますのでご注意)、わたし、乗れちゃうことになりました!えーほんとこれ、夢?
当日。新千歳着後レンタカーを借りて、一路モモセライディングファームへ!わあ、高速どころか車の運転自体久しぶりだぜ。奇跡のように辿り着いて無事にサウンズオブアースと対面しました!
指導員さんが慣らしのために狭い馬場を何周か走らせていたところが、ものすごくかっこよかったです。くう、わたしが知ってる中でサウンズが一番ネオに似てると思うのよ。毛色といい星(額にある白い毛の模様)といい、シュッとしたイケメンっぷりといい、さ!いやああもう好き…っ!!
とか呑気なことを言ってる場合ではなく次はわたしの番。車も久しぶりなら馬も久しぶりだ。手綱を持ちながら鞍に手をかけて乗りました。これが…ネオゆかりの子……ッッ!!
……乗ってしまうと顔が見えない(当たり前だ)。
そうか、そういうものであったなと噛み締めながら、それまで居た慣らし用の馬場からレッスンが行われる広い馬場に向かいました。その途中、
「サウンズのファンなんですか?」
指導員さんが気を遣って話しかけてくれました。
そうですね、彼自身も好きですが、お父さんのネオユニヴァースが好きで。
「そうですかー。現役だと誰が好きなんですか?」
待って。馬産地に行くと高確率でこの質問を受けるんだけど、誰が現役だったかすぐ分からなくなるのよ。毎回答えを用意しておこうと思うんだけど忘れるトリ頭。
そりゃネオっ子みんな好きなんだけど、あまり勝っていない子だと、
「◯◯(馬名)です」
「そうですかー……(知らんなー)」
「ハハハー(デスヨネー)」
という不毛な会話になってしまうので、その時の気まずい間がね!もう!
広い馬場に着くとわたしの他に生徒さんが2人いて、わたしよりはるかにお上手でした。お2人の馬について歩くサウンズオブアース。たてがみほんと綺麗。好き。
「はい、前の人のヘルメットみてくださーい」
馬に乗っている時は、自分が乗っている馬を見てはだめなのです。視線は常に進行方向に。うう、わかってるんだけどちょっと見たいじゃないサウンズ……。
そんな甘えたことを言っている間もなく「はい、軽速歩」「手前変えますよー」「遅れさせないでー」とどんどん指示が飛んできます。ここ最近観光牧場の接待乗馬に慣れ切った身に、久々のガチレッスンはつらい。いや、弱音を吐いている場合ではない。
「……るーさん、乗馬久しぶりですか?」
指導員さんの婉曲な確認が痛い。すいません。その通りだし致命的な運動神経により元々上手ではないのです。グゥ。
「でもいいですよ、他の方についていってますよー」
なんか接待させてしまった気がする。すみません、ありがとうございます!
お世辞抜きにサウンズオブアースはすごく乗りやすい馬で、わたしが「好き…!」って思っているのは完全にバレていました。駈歩(速い走り方)出してくれなかったけど、きっとそれはなめられていたというわけではなく、万一わたしが落ちてしまって怪我したらとかそういう心配をしてくれたから!うん!
そんなこんなであっという間の45分でした。ありがとうサウンズオブアース。
馬場から引き上げ、クラブハウスの入り口へ。あっしまった、カメラもスマホもクラブハウスに置いてきてしまったから、わたしとサウンズのツーショット撮ってもらえないじゃん!
仕方ない、自分のドジです。泣く泣く諦めてサウンズから降りました。ありがとうね。うは、足がガクガクする。
クラブハウスでは友人が待っていてくれました。
「るーちゃんごめん、頑張ったんだけど遠いのと…わたしの腕がイマイチでその……これが精一杯で」
すまなそうに彼女が見せてくれたのがこの写真でした。
すごい、全員のプライバシーが完全に守られている!(前向き)
ま、のちにわたしが馬房で撮った写真もこれだったのでなんの文句もないです。
(写真へたくそ選手権を開催するつもりはなかったんですが)
とにかく楽しかったです。また行けるといいな。
(終)