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自分の聴く曲を選べる人たちに音楽を届けたい―SHOGO × YOSA & TAAR 対談インタビュー(後編)

 昨日公開された前編に続き、SHOGOとYOSA & TAARの対談インタビュー後編を公開。YOSA & TAARでのDJ、名古屋でのリリースパーティー、そしてSHOGOとNEISHI Bros. の繋がりが語られる。

■ 目指すDJ像

―『MODERN DISCO』のフロアは踊りやすいです。前にいても後ろにいても楽しいというか。

TAAR:いいDJって対流を起こせるDJだと思う。フロアにベタ付きにさせてもあまりよくない。それができて初めて対流を起こせるんだけどね。バーカンに飲みに行かせるタイミングを作らなきゃいけないし、バーカンの向こうにいる人を手前に引っ張ってこなきゃいけないし。最前列で待機するようなお客さんに対してもアプローチできなきゃダメだとも思う。

憧れを持って音楽を聴いてもらいたくなくて、自分の聴く曲は自分で選べる人たちに音楽を届けたいっていうのが僕のライフテーマ。だからDJだし、DJだからか音楽にもパーティーにも熱狂的になる部分と客観的に見る部分がある。あくまで生活の一部であって全てではないっていうスタンスで音楽を聴いてほしい。いろんな音楽の選択肢がある中で僕らの音楽を聴いてくれているっていうことに対して美徳を感じる。

YOSA:いくつかの選択肢の中で俺たちのイベントに来てくれたら最高だよね。でも飲みに行かせるタイミングを作ることまでは考えられなかった。VISIONみたいな箱でやっている限り、手前に引っ張ることを一番に考えちゃうね。ひとりのDJが1時間半の持ち時間で対流を起こすのは難しいかもしれないけど、パーティー全体で考えたらそうなのかも。言っていることはすごくわかる。

―DJの良し悪しを判断する基準って難しいですよね。でもDJの技術を知らなくてもなんとなくわかる気がします。

YOSA:DJは経験値と説得力だと思っていて、そういう観点で考えるとDJってベテランには絶対に勝てない。年上には勝てないって意味じゃなくて、真剣にキャリアを重ねてきた人に勝てないなってつくづく思わされることが多い。一方で年齢に関わらずミックスとか技術はあるのかもしれないけど、とにかく「浅いな」って思うDJもたくさんいる。逆に繋ぎがうまくなくても「この人の次に掛ける曲なんだろう?」ってワクワクするDJもいる。同じ曲を同じタイミングで掛けてもDJによって聞こえ方が全然違う。

SHOGO:ストーリーがありますよね。

YOSA:それは一朝一夕では絶対にできないから。俺たちが“Perfect Fire”を掛けるのと友達が掛けるのとは違うじゃん。そこには明らかに俺たちの曲だからっていうストーリーがある。そうじゃないところで違うストーリーが生まれる可能性もあるからDJは難しいけど。地元の先輩のDJはかっこよかったでしょ。規模感が違えどそれと同じなんだよね。

SHOGO:東京はストーリーを感じるものがあまりなくて、音楽のサイクルが早い。消費のイメージが強いですね。地方は数ヶ月に1回大きいイベントがあればいいほうだから。例えば『Touch & Go』は準備に3ヶ月とか半年間かけていて、お客さんの熱も一緒にじわじわとそこに向かっていくんですよ。フラストレーションみたいなものが爆発するのが地方の強みだと思う。

YOSA:東京だと「来週もあるし」って思うよね。1個のパーティーに対する思いが全然違う。

TAAR:僕らにしても、地方に呼ばれるDJは数が限られているから本当にありがたいことだし、特別な気持ちで臨んでるよね。ROC TRAXをやっているときに「うちらを呼べる地方のオーガナイザーはその地方で名だたる盟主だから、リスペクトを持ってやらないとダメだよね」って話をされた。


■ Attractionsファンに伝わったもの

YOSA:例えばYOSA & TAARが誰かのイベントに出るときとワンマンをやるときって、内容が同じでも集客が全然違うと思う。それってワンマンに対する思いみたいなものをお客さんも感じ取って来るわけじゃん。だから長文でズラズラと書くんじゃなくて、いかに自分たちがパーティーへの思いを強く持って、ストーリーを感じさせるかっていうのは結構大事かなと思う。

TAAR:アルバムの客演を選ぶときの話にも繋がっているかもしれない。『Modern Disco Tours』を出したレーベルからもう1枚アルバムを出す話になったときに「よりビッグネームな人にお願いしたいです」って言われて。 でもそれだと結局ストーリーが生まれない。もしかしたらそこからストーリーが始まるかもしれないけど。

YOSA:その始まり方のアルバムに対して俺は頑張る気ないなって。ビッグネームありきなものは俺たちじゃなくてもやる人がいると思う。「Perfect Fire」だって今はみんなが歌ってくれるけど、もともとAttractionsを知っている人は少なかったでしょ? でも聴いてくれる人が増えればそれでいいし、Attractionsファンにとっては俺たちがそう。

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―それが福岡での出演にも繋がってますよね。

YOSA:Taroたちが俺たちにフィールして福岡まで呼んでくれた。Attractionsのファンも俺たちのDJで上がってくれたのは、Attractionsが適当に俺たちを呼んだわけじゃないって何かで感じたからだろうね。そういう意味でいうと次の『MODERN DISCO』は見る人が見ればわかると思うし、名古屋勢がみんなでバスを借りて来るらしいんだけど、そういうのも狙っては起きないことかなって思う。


■ YOSAとTAARからYOSA & TAARへ

SHOGO:Purple Disco Machineを選んだのも、ただ好きだからなのが伝わりますよね。

YOSA:今ほどブレイクする前からずっとVISIONに「Purple Disco Machineは絶対に来るから、このタイミングじゃないと呼べない」って言っていたんだけどなかなか呼んでもらえなくて、呼んでもキャンセルされたり。結局Purple Disco Machineは大爆発して、煮詰まってきたところだから今のタイミングはベストといえばベストだよね。今年中に呼べたのはよかった。来年の今だったら遅かったかな。あとは俺が「Body Funk」を好きすぎる。

SHOGO:もうYOSAさんの曲みたい(笑)。

YOSA:そういうことにしてる(笑)。 「Perfect Fire」を掛けたあとは必ず「Body Funk」を掛ける。

TAAR:あの繋ぎをこの前ひとりのときにやったんだけど、YOSAはうまいなって思った。ちゃんといいタイミングで”ワンツー”って入るからさ。

YOSA:でも俺、TAARとDJするようになってからうまくなった。

TAAR:僕らのDJがよくなったのはここ半年だからね。それまではYOSAとTAARがDJしてた。Contact TokyoにDimitri From Parisが来たときのDJでやっと"YOSA & TAAR"っていうDJユニットになった気がする。

YOSA:それまでは『MODERN DISCO』の朝方にたまたまYOSAとTAARではっちゃける時間があって、それが1個のコンテンツにもなったけど、普通の時間帯にブッキングされたときに何をしたらいいかわからない。お互いに勝手なことをやっていて、DJとしては微妙だった。

TAAR:でも僕が曲を買うときに、YOSAが後ろにいるって思いながら曲を買うとね。

YOSA:DJに関してはTAARが寄せてきたね。それから俺はやりやすくなった。客がいようがいまいがいた人は絶対に踊らせるし、「完全に外した」みたいな現場も最近はないよね。人がいなくても俺たちが楽しいからいい。

TAAR:YOSAの空振り率って0.02%くらいだと思う。個人でやっているときもそうなんだけど、僕が掛けた曲に対してのアプローチもパーティーに対してのアプローチも、だだ滑りしているところを見たことがない。DJとしてYOSAのほうが優れているって思ったから、僕はYOSAが気持ちよくDJできるようにすればいいんじゃないかなって意識し始めた。

YOSA:恥ずかしい。

TAAR:そうなってくると今度は僕の役割が見えてきて、「YOSAが絶対にヒットを打ってくれるんだったら僕は長打を打つんだ!」みたいな。

YOSA:それはめちゃくちゃ助かってる。俺は積み上げていってアンセムを入れるって自分で描いちゃってるけど、TAARはあまりお客さんが動いてないときに何かをぶっこんで盛り上げるみたいなことが意外と上手。自分で掛けられない曲を「ちょっとあれやって」って頼むことも最近は出てきて頼もしくなった。「Perfect Fire」は歌が始まるところが一番音数が少ないし、「Slave of Love」もループのしかたがよくわからないから俺は一度も掛けたことがないんだよね。

TAAR:確かにYOSA & TAARの曲はいつも僕が掛ける。いつもYOSAが塁にいてくれるから僕は二塁打でいいんですよ。ホームランを狙えるときは打ちにいくし。フロアメイクなら絶対にYOSAのほうがうまい。

YOSA:その役割分担が明確になったのはここ最近のこと。

TAAR:曲作りにも生かされてる。踊らせたいときにはYOSAのビートが必要。体に作用するビートを組むのがうまいから。 体担当と内面担当みたいなイメージ。

YOSA:ようやくですよ。アルバムが出てから現場に繋がるまでに時間がかかって、ちょっとドキドキしてた。いい曲ができたと思ったし、Spotifyで伸びた曲もあったけど、「別に俺たち何も変わってなくね?」みたいな時期が半年ぐらいあった。けどここに来てようやくね。

SHOGO:12月23日の大阪(『timeloop-X'mas Party-』)はすごいと思った。超豪華メンツ!

YOSA:前日は『80KIDZ XMAS』もあるしね。


■ いいパーティーを繋いでいく名古屋

YOSA::でも名古屋の『Touch & Go』は自分の音楽キャリアの中でも最高の一夜のひとつだったと思う。

SHOGO:友達から「東京でリリースパーティーをやってよ」っていう話が僕に来るんですよ。「名古屋のは僕のパーティーじゃなくてNEISHI君のパーティーです! 僕にそんな力はありません!」って毎回言ってます(笑)。

YOSA:あのメンツを揃えたNEISHI Bros. はすごい。金にものをいわせてとかじゃなく、ちゃんと関係性を築いてる。Taroは「あいつら超マイメン」とか言ってるし、SIRUPくんも向井(太一)くんも乗り気で出てくれて、呼んだアーティストを楽しませて。あそこまで「またあいつのイベントに出たい」と思わせてくれるオーガナイザーって見たことがない。

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TAAR:僕を三重に初めて呼んでくれたのがSHOGOの先輩だった。その先輩の影響でSHOGOはパーティーに行くようになって、そのあと『Pacific』で僕らを呼んでくれたじゃん。その『Pacific』をきっかけに自分たちでパーティーを始めたのがNEISHIなの。

YOSA:そのNEISHIが始めた『Touch & Go』の最初のゲストが俺とTOKYO HEALTH CLUB。完璧ですよ。

―さらにリリパでYOSA & TAARを呼んで、SHOGOさんもブッキングされていましたよね。それから次回の『MODERN DISCO』にNEISHI Bros. が呼ばれて、ストーリーが繋がっている。

SHOGO:『MODERN DISCO』に行っていたNEISHIくんたちが僕のパーティーを楽しかったって言ってくれて、今は飛ぶ鳥を落とす勢いで自分たちのパーティーをやっている。その中で『Pacific』と僕の名前を出してくれたのは本当に嬉しいし、自分が先輩にもらったバトンを次の人たちに託せてよかった。

YOSA:NEISHI Bros. と喋っていてもSHOGOへのリスペクトはだいぶあるからね。

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■ 『MODERN DISCO』ファンが作る『Touch & Go』

YOSA:びっくりしたのが『Touch & Go』初回のとき、23時くらいに現場に行ったら人がいすぎてドアが開かなかったの。TOKYO HEALTH CLUBを見に来ている人たちも他のDJで踊ってて、そのときにやっていたTAIHEIっていうローカルDJが超いいDJでフロアをしっかりロックしていて。そういうブッキングのうまさもある。NEISHIはフロアの一番後ろのほうで手を組んでちょっと俯瞰していて、あくまで自分は裏方でこのパーティを作っているっていうその視線を見て超かっこいいなと思った。

TAAR:僕らにとってどんなオーガナイザーに呼んでもらえるかは運でしかないから、こんなに素晴らしい、レガシーを感じる人たちに呼んでもらえて幸運ですよ。本当に『MODERN DISCO』は来てくれるお客さんが特別なんだと思う。

YOSA:本当にそう。お客さんのコミュニティができているというか。そこで内輪ノリになるんじゃなくて、来た人を中に入れてくれるのを俺たちが知らないところでやってくれている。

―私もそれで『MODERN DISCO』に行きやすくなったんです。一緒に行く友達がいなくてひとりで行って、そのときにSHOGOさんと友達になったらその場で友達が10人くらい増えた(笑)。

TAAR:「クラブに行きたいけどひとりは怖いな」って人にとって、『MODERN DISCO』は敷居が低いパーティーだと思う。

YOSA:変なパリピ感もないしさ。危ない目に遭うこともない。

―個人的にはみんなが輪に入れてくれるから、他のパーティーより安心して遊びに行けている気がします。


■ YOSA & TAAR/個人としてステップを上がる

―今後の活動やリリースについてはどう考えていますか?

TAAR:僕はPARKを大きくしたいっていうのがある。PARKってレーベルにはShin Sakiuraくんとかぷにぷに電機が入ってくれたりしたけど、もうちょっとアートコレクティブになっていくのが見えているから、そのために僕ができることを考えてる。個人的な作品に関してはとにかく好きなものを作るかな。YOSA & TAARってそれだけでコンセプチュアルなんだけど、コンセプチュアルなものを作ることに対する情熱と、個人的な作品を作るための情熱ってまったく別物だから、そういうところを1回やってみたい。

YOSA:俺もそう。もともとソロではDJしか掛けないような海外向けの曲を作ってきたけど、歌が入っている曲に対する憧れもあって、TAARとやることでがっつり歌モノに振り切ることもあった。そのうえでソロでは対極のことをやってみたいって気持ちも出てきたから、もしかしたら別名義かもしれないけど、海外のクラブシーンに寄り添ったものも改めてやってみたい。

TAAR:確かに海外向けにっていうのは僕もあるかも。YOSA & TAARは完全にドメスティックだから。でも僕は日本国内に向けて翻訳じゃなく変換してあげるのもすごく楽しくて。だから個人でやるときは各々プリミティブなものになると思う。

YOSA:YOSA & TAARのアルバムも、もう1枚は絶対に出したい。ここで個人のアルバムを挟んでYOSA & TAARの2枚目が3年後とかになったらわけわかんなくなっちゃうから、もう1枚出してステージを上げてから「それぞれこういう活動もしてるんです」っていうのを見せたほうがいい。そのためにシングルはもういくつか動いているものがある。

TAAR:僕らが本当にやりたいアーティストと。


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 前後編に及ぶインタビューで、名古屋のNEISHI Bros. とSHOGO、東京のYOSA & TAARにスポットを当てた。ここではクラブシーンのほんの一部を切り抜いただけだ。
 程度の差はあれど一夜限り、快楽主義的な側面がパーティーにはある。他のものに代えがたいクラブでの経験として楽しみたい。だが同じクラブという空間にこれだけの思いが集うこともある。メディアに登場しない人物による、語られていないストーリーが存在する。それらが何かしらの方法で記憶されたらいいと願い、今回は一番に叶ってほしい人のことを『クラブと生活』に残す。
 次回の『MODERN DISCO』は2019年12月7日、渋谷のSOUND MUSEUM VISIONにて開催。NEISHI Bros. のDJを東京で聴くことができる。アルバム制作とリリースパーティーを経て、さらなるステップアップを図るYOSA & TAARにとっての節目のパーティーにもなるだろう。


『MODERN DISCO』

2019年12月7日(土)OPEN 22:00
@渋谷 SOUND MUSEUM VISION

■ Line Up
Purple Disco Machine
YOSA & TAAR
NEISHI Bros.
has
U NGSM
and more...

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SHOGO
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TAAR
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写真:Shotaro Shiga
『Touch & Go "Modern Disco Tours" Release Party』より
企画・取材・編集:koharu


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